(二) 動詞の十津川言葉
(4)動詞の仮定形の十津川言葉
(イ)一般に動詞の仮定形の場合
十津川に於ては動詞の仮定形が「ば」に連なる時「ば」を用いない。
例えば「手紙を書けばよい」というのを十津川では「てがみゅーかきゃーいい」という。ローマ字で書くと kakeba は kakya となる。つまり eb が y になって a がのばされる。
例)
泣けば 泣きゃー 五段
栄えれば 栄えりゃー 下一
煮れば にりゃー 上一
来れば くりゃー カ変
すれば すりゃー サ変
(ロ)下一段、上一段の仮定形の場合
下一段の動詞及び上一段の動詞に於ては外に「棄てればよい」「起きればよい」というのを「すちゃーいい」「おきゃーいい」とつかう場合もある。ローマ字で書くと sutereba 及び okireba が sutya okya となる。つまり ereb が y に変化する。
例)
述べれば のびゃー 下一
栄えれば さかゃー 下一
着れば きゃー 上一
煮れば にゃー 上一
(ハ)カ行サ変の仮定形の場合
カ変の動詞とサ変の動詞に於ては「くれば」「すれば」が「きゃー」「しゃー」と語幹までを変化させてつかわれる。ローマ字で書いてみると kureba 及び sureba が kiya siya となり、ureb が iy に変化する。