(十三) 接尾語の十津川言葉

 

接尾語というのは単語の下について、その単語に或意味を添えるものである。

学者ぶる   恥かしがる   男らしい   なまめかしい   怒りっぽい

十津川言葉の中にもよくつかわれる接尾語がある。今その接尾語と、それのついている言葉をあげてみよう。

(1) くそ
きみくそ 人の順調でないことを快く思う心
へたくそ 下手なこと
(2) くさる 人を馬鹿にしてつかう場合と馬鹿にしながらも賞める時つかう場合あり
言いくさる よくも云ったなの意と、云ってくれてよかったと云う意とある
書きくさる 上手に書くの意と、人のことよくも書いたなの意とある
しくさる つまらないことをする
話しくさる 上手に話すの意と、よくも人のことを話したなの意とある
とびくさる よくとぶの意
走りくさる よく走るの意
やりくさる よくやるなの意
(3) さがす
云いさがす 言いふらす
ひきさがす ひきちらす
とびさがす とび散ること
しさがす 仕事がていねいでないこと
書きさがす 乱雑に書くこと
(4) たれ
うそたれ うそつき
しびたれ めそめそ泣いたり、泣き言をいう人
貧乏たれ 貧乏な人
へんげたれ うそつき
しぶたれ りんしょくな人
くそたれ つまらない人
(5) とばす
おしとばす おし落とす
言いとばす 言いまくる
切りとばす
きりまくる
きり落とす
かきとばす
書きまくる
掻きまくる
(6) ばーけ
あいかりばーけ ふざけた話
あほうばーけ 馬鹿話
(7) ぼうし
くそたれぼうし つまらない男
ごうらぼうし 河童
へんくつぼうし 頑固な人
(8) かす
あそばかす 遊ばせる
あまらかす 余らせる
あまやかす あまえさせる
いなかす 逃がす
ころばかす ころばす
とばかす とばす
ほとばかす 水に浸してふやす
まくらかす ころがす
(9) どうし
読みどうし 読みつづけるの意
書きどうし 書きつづける
仕事をしどうし 仕事をしつづける
夜どうし 夜すがら
(10) ぼけ
老いぼけ 年とってぼけている
ねぼけ ねむりからさめきらずぼけていること
うとぼけ ぼけて馬鹿になること
しごとぼけ 仕事でぼけていること
(11) そう
がっそう 頭髪がのびていること
びきっそう
ぼけっそう ぼけている人
(12) がる
かわいがる かわいくて大事にすること
めずらしがる めずらしく思う
ほしがる ほしく思う