(十二) 接頭語の十津川言葉

 

接頭語というのは単語の上について、その単語に或意味を添えるものである。

まっ白   うち見る   うすら寒い   弱い   昼   まよう

十津川言葉の中にもよくつかわれる接頭語がある。今その接頭語とそれのついている言葉をあげてみよう。

(1) いき
いきはじをかく みにくい恥をかく
いきばちをかぶる ひどく罰を蒙る
(2) うそ
うそぎたなあ ひどくきたない
(3) かた
かたいじをはる 強く意地をはること
かたいっこうな 頑固である
(4) くそ
くそあほうな 大馬鹿である
くそきちがい ひどく気が狂っている人
くそげろうな
ひどくHである
ひどくいやしい
くそまじめな まじめな人をののしる言葉
(5) しに
しにあほう 馬鹿な人をののしる言葉
しにげろう Hな人、やくざな人をののしる言葉
しによく 慾の深いこと
(6) しん
しんなまみだあ 弱虫を嘲[あざけ]る言葉
しんどうらくな 情け者をののしる言葉
(7) しら
しらしんけんに 一生懸命に
しらてんごする つまらないいたづらをする
しらぼたえする つまらないたわむれをしてさわぐこと
(8) すっころ
すっころ坊主 丸坊主
すっころかん 何もかもなくなること
(9) すり
すりまぶれる しつこくくっつくこと
すりつく しつこくよりつくこと
(10) てち
てちころす 打ちころす
てちこむ
打ちこむこと
投資などにもつかう
てちとばす
ひどくはねとばすこと
無理に人をおし落とす
てちなぐる ひどくなぐる
てちのらす なぐり倒すこと
てちくらわす ひどくなぐる
てちまわす 平手で強くうつこと
(11)
どぎもをぬく きもをつぶすこと
どこんじょう 強い根性
どえらい すごく大きい
どてこい すごく大きい
どぎつい すごくきびしいこと
(12) どん
どんくさい 不器用な、利口でない
どん腹 腹のまん中
どんぶくろ
袋の中心
山の中心になる所
(13) はち
はちきる 払い切る
はちとばす はねとばす
はちまくる はねころがす
(14) ぶち
ぶちころす なぐりころす
ぶちなぐる ひどくなぐる
ぶちまかす 打ち負かす
ぶちこわす 打ちこわす
ぶちまくる 打ちころがす
(15) へし
へしおる おし折る
へしまげる おしまげる
へしたおす おしたおす
(16) へち
へち切る うち切ること
へちまぶる
ひどく塗ること
人に罪をきせること
へちまぶれる 女などに有頂点になってよりつくこと
(17) へん
へんどろこい 弱虫をののしる言葉
へんどろくさい 弱虫をののしる言葉
(18) ひち
ひちこうへいな 生意気な
ひちめんどうな
手のやけるじゃまな事
人に恥かしいこと
ひちむつかしい 大変むつかしい
(19) なま
なまおとこ 元気盛りの男
なまおとろしい 大変恐ろしい
なま若い 大変若い
なまはづかしい ひじょうに恥かしい
なまやさしい すごくた易いこと
(20) はり
はりまわす 平手でなぐる
はりたおす 平手でなぐり倒す
はりとばす 平手でなぐり倒す
(21) のし
のしあがる
階級などひどく上がる事
出世する
のしきる やりとげる
(22) ひき
ひききる 強くひっぱって切る
ひきたおす 強く引っぱって倒す
ひきたくる 無理に引きとること
ひきはぐ
無理にはぎとる
人の秘密をあばくこと
ひきもぐ 無理に引っぱってもぎとること
ひき連れる 大勢の人を引率する
ひき入れる 諺いこむ
(23) ふき
ふきこむ 人に知恵を入れること
ふきとばす 自慢をいうこと