(十五) 総合した十津川方言

敬語は美しい言葉で人を敬い人に好意を与えるものである。
然し幾度も述べた如く十津川に於ては日常生活に恐らく敬語を用いなかった。
改まって挨拶したり、或は特に地位の高い人と話す時は幾らか用いられた。
次に十津川に於いて用いられる敬語についてあげてみよう。

あいかりばーきよう言うなら ふざけたことを言うな
あさっての方へ向いとる 方向違いである
あげっさらい向いとる 仰向けになっている
あっちゃこっちゃいかれた あべこべにやられた
あぶらばっかりうりくさる かげひなたばかりしている
あんすうくうた 当がはずれた
いっかなこたあなあせちがれた いきなり叱られた
いかいことあったぜのうら 沢山あったなあ
石車い乗ってとらかった 小石を踏んでころんだ
いんがごしゃうあげて戻ってきた あきらめて帰ってきた
うっとしゅうござる 雨降りの日の挨拶(うっとうしいです)
おいしらがーしようる 追いあいをしている
おうがっそうを剃ったろうぞ ひどくのびた頭髪を剃ってあげよう
おおひまんあくぜ 大変なことになるよ
きりきりまいした 忙しくて大騒ぎをした
くそくらえ(けつうくらえ) 知ったことはない(関係ない)
ごうたれんわぁーてきた 腹がたってきた
こうやくうりよった 草道をしていた
こうやまいりに行った 便所え行った
しようしゃあなあ  証紙(証書)がないの意
自分には関係がないと言うこと
しよくすぎる 身分不相応である
しってかじるかい 知るものか
しにはごーむきよった  死に瀕していたの意
ひどいめにあったと言うこと
しらてんごうのかわするすかあぢゃあ  経験もないのにいいかげんなことをするからだ
いたづらをするからだ
冗談をするからだ
ちょこざいなことーぬかすな 生意気なことを言うな
しんどうらくばっかししくさる なまけて遊ぶことばかりしている
だいじござらんわよ 結構ですよ
よろしいですよ
てんてこまいする 忙しくて大騒ぎする
でこーまわす 里芋の煮たものを食べること
てっぽううちぢゃ  うそつきだ
いいかげんなことを言ったり、大げさなことを言う人の意
にんわきよっつら 愚痴をこぼしていた
のけぞりかえる 威張ってそりかえる
のりきっとる 調子にのって威張っている
ひようつりゅうたれる 小言をいうこと
ふづくりつけられた 無理におしつけられた
へんぎょうたれる うそをつく
ほめそやしよっつら ほめはやしていたわ
むねくそんわるい 腹がたつ
まっさらそがあなひとんぢゃなかろう よもやそんな人ではないでしょう
やったかみたかぢゃ のるかそるかである
よばりようらい ごちそうになリましょう
よののーやろうぞよう ほかのをあげよう
よのしゃーしったこたぁーなぁー ほかの人(自分をさす)は関係しません
らっしやーなあ だらしがない
らっしもかっしもなあ だらしなくてめちゃくちゃだ
らくさげんのおーて 気が楽でなくて
ろくにさっしゃい(ろくにせーよ) ひざをくづしなさい
ねっからわからん 全くわからない
とったかみたかやろうらい のるかそるかやりましょう
よなかのはっときまあではたらーた 真夜中まで働いた
とりにしよーらい 終りにしましょう