(111)虫おくり

 昔は、六月土用(旧暦)のころになると、どこの在所でも、虫おくりをしたものじゃ。
 闇夜の晩に、在所の衆は、わら人形を先頭に押し立て、めいめいあかあかとたいまつを明かし、
「実盛[さねもり]殿の御通り」
と叫び、チン、チン、チン、ドン、ドン、ドン、鉦[かね]を打ち太鼓を叩いて大川(十津川)へと行列を繰り出すのじゃ。やがて行列が川原に着くと、声をそろえて
  実盛殿の仰せで
    作りの虫を送るヨー
      あとは栄え候ヨー。
        (チン、チン、チン。ドン、ドン、ドン。)
 と、うたい、般若心経を誦[とな]えながら、わら人形とたいまつを一斉に流れに投げ入れる。そして、後ろを振り向かないで、暗闇の中をめいめい一目散に家に戻るのじゃ。いやいや、せっかく里の田畑から川へおびき出した虫どもが、ぐずぐずしていたら、また付いて戻ってはたいへんだからじゃよ。
 この呪[まじな]いは、たいていは、三晩ほども続けたものじゃ。
 昔、平家に斎藤別当実盛と[さいとうべっとうさねもり]いう老将がおった。実盛は、源氏との合戦で激しく切り結んでいたのじゃ。ところが、実盛は田んぼの刈り株に足をとられて、すってんどうと倒れてしまったところを、ばっさり切られてしもうたそうな。
 稲の刈り株のせいで切られた実盛の怨霊は、後にウンカとなって恨みの稲を喰い荒すのだという。
 人びとは、この実盛を哀れみ、実盛の無念や恨みを慰め、怒りを和らげることによって、虫のあばれるのをおさえようとしたものじゃ。
 虫おくりのわら人形はその実盛なのじゃ。

話者   湯之原   羽根 定男
再話   湯之原   大野 寿男

(112)赤谷の山女郎

 昔、小森の在[ざい]で、一番肝っ玉が太いといわれたのは、明円[みょうえん]の前迫[まえざこ]のじいさんじゃった。
 ちょうどその時分、十津川の川上にあたる赤谷の奥(大塔村宇井の奥)には、山女郎が棲んでいるということじゃった。
 このうわさを耳にしたじいさん、
「なになに、化けもんがいるちゅうか、そりゃあ、おもろい。わしもその山女郎ちゅうもんに会うてこよう。」
と、人の止めるのもきかんと、たった一人で赤谷の杣[そま]小屋に泊りこんで、木を伐ることにしたそうな。
 杣小屋に泊りこんだじいさん、夕飯をすませ、あれやこれやとあしたの用意をととのえ、さて、こんどは斧の手入れじゃと、ゴシゴシ斧を砥[と]ぎはじめた。その時分は、もう夜もけっこう更けておった。それでも、じいさん、なんべんもなんべんも刃の切れ具合を指先で確かめながら熱を入れて砥いでおった。
 すると、外で何やら声がしたようじゃった。じいさん、耳をすますと、上の山の暗やみからじゃろう。
「ヒッ、ヒッ、ヒー。」「ヒッ、ヒッ、ヒー。」
と、それはかん高い女子の笑い声がするのじゃ。もう、なにもかも深い眠りについて、物音一つせん山にひびくその笑い声は、なんともうす気味悪いものじゃった。
「おお、いよいよ化[ばけ]もん、おいでなすったか。」
と、じいさん。あわてて砥いだばっかりの斧を小屋の入口にぶら下げ、どんどん火を焚き、縞布団をすっぽりかぶって般若心経を誦えたのじゃった。
「マカハンニャハラミッタシンギョウ、カンジーザイボーサツギョウジン ハンニャーハーラーミッタ……」
「ヒッ、ヒッ、ヒー。」「ヒッ、ヒッ、ヒー。」
 気色の悪いその笑い声は、いよいよ小屋に近づいてきた。
 じいさん、これはいかんと、前よりもいっそう声を大きく心経を誦えたのじゃった。
「カンジーザイボーサツ、ギョウジンハンニャー ハーラーミッタ……」
 女の笑い声が、ついそばまできたと思われたとたん、入口に吊したむしろを押しあげて、じっと小屋の内をのぞく者がいる。布団の中からそっと戸口をみると、長い黒髪をきれいにときつけ、お歯黒をつけた女子じゃった。それはまっこと、この世のものとも思われんきりょうよしじゃった。そのおなごが、ニタッーとうす笑いしたときにゃあ、もう身の毛がよだつおもいじゃった。
 じいさん、ガタガタ震えながら、ただもう一心に祈りつづけるのじゃった。
「ハンニャハーラーミッタ、ジーショウケンゴウ ウンカイクウドー イッサイ……。」
 おなごはやがて、
「ヒッ、ヒッ、ヒー。」
「ヒッ、ヒッ、ヒー。」
と、うす気味悪い笑いを残しもうて深い奥山へ消えていったそうな。
 前迫のじいさん、その夜が明けきるのもよう待たんと、あたふた赤谷を下りて逃げ帰ったということじゃった。

話者   小森   西田 ワサノ
再話   湯之原   大野 寿男

(113)おおかみの恩返し

 ずっと、ずっと昔のことじゃった。
 小原に肝っ玉の太い男がおった。男はあるとき、玉置越えして、南紀州へ旅をした。男が滝峠を越えて、高滝を過ぎ、玉置山の横峰にさしかかったときじゃった。
 ひょいと見ると、行く手の切り株に大きなけものがうずくまって、じっと、こっちをにらんでいる。よくよく見ると、あの荒々しいおおかみが、二本の太い前脚を踏んばって牙をむき、今にも跳びかかろうとしている。男は、もう逃げだすこともならず、はらを決めると、腰の脇差に手をやって さっと身構えた。
 ところが、どうしたことか、おおかみはいっこうに襲ってくるふうもない。それどころか、おおかみはときどき「ウォーン」と小さく吠えるかと思えば、真っ赤な口を開けて「ヒヒン、ヒーン」と弱々しい声をあげるのじゃ。
 不思議に思った男が、そろそろ前に寄ってみて、またまたおどろいた。大きく開けた口をのぞき込むと、牙と牙との間に太いとげが突きたっている。そのとげが抜けないと、おおかみはもだえているのじゃ。
「は、はあん、とげを抜けというのか。」
 男は、思いきって おおかみのそばに寄り、脇差のさやを払うと、おおかみの口の中にねじこみ、大きなとげをえぐり出してやったのじゃ。
「さあ、もうだいじょうぶじゃ。」
と男がいうと、「ヒン、ヒン」と二声三声ないたおおかみは、そのまま茂みの中へ消えて行ったのじゃった。
 男は横峰を通って玉置山を越し、やがて紀州に着き、用をすませると、三日目に帰ることになった。男が九重の四滝から玉置山へと道をとり、また横峰にさしかかると、この間の切り株に、やっぱりあのおおかみがうずくまっている。
 男がにっこり笑って、
「やあ、おおかみどの、もう口の方はいいかい。」
と、声をかけ、その前を通りすぎた。おおかみは、トコ、トコ、トコと後ろを付いて来る。男が玉置山を下りそめても、やっぱり追って来る。とうとう、高滝の在所の近くまで下りて来たとき、
「ウォーン」と一声、天に向かって吠えたおおかみは、そのまま今来た道を戻っていくのじゃった。

 そんなことがあってからのことじゃが、村中のあっちこっちで、しきりに送りおおかみのうわさをするようになった。
「ひとりで、山越えしていたら、どこからともなくおおかみが現われて、道づれとなり、ちゃんと在所近くまで送ってくれる。」
と。

話者   湯之原   羽根 定男
再話   湯之原   大野 寿男

(114)送り狼

 わたしら子供の時分は、病人がでると、医者を頼みに小原から小森へ登り、山越えして山崎まで走ったものじゃ。
 あるとき、となりの人が腹痛を起こして苦しみだした。わたしの父が医者を連れに行くことになった。父は、昼過ぎから家を出て医者を連れて戻り、病人を診てもらったら医者を送り届け、薬を貰って帰ってくるということで、半日で小原と山崎の間、片道三里ほど(約十二キロ)を二往復もしたものじゃ。
 父は、さびしいことなど全く知らん人じゃったから、たった一人で山崎の医者の家を発って、夜更け山路を急ぐのじゃった。ちょうちんの小さな灯りを頼りに、池穴向こうを過ぎ、広尾谷を渡り、成尾坂へと差しかかったのじゃった。
 さっきから、だれかだまって後ろからついてくる気配がする。父は足を休めないで、じっと後ろの方をうかがった。
「ふん、狼じゃな。送り狼がついて来るわい。」
と、つぶやきながら、一息に成尾坂を登りつめたのじゃった。峠に出て桃ノ木だわで一服しながら様子をうかがうと、狼もまた一服してじっとすわりこむのじゃった。やがて小森の新茶屋向こうまでやってくると、後ろを振り向いて、
「狼さん、おおきにご苦労さん。ここで結構じゃ。」
と、礼を言うと、狼は、だまって今来た道をゆっくり戻っていく気配がしたということじゃ。
「狼に送ってもらったときには、はいていたぞうりを片方やるもんだ、と聞かされていたが、この夜はまだ小原まで遠いので、やらずに別れたがなんともなかった。」
と、帰ってきた父は話しておった。

話者   武蔵   中谷 久恵
再話   湯之原   大野 寿男

(115)朝の蜘蛛はなぜ福なのか

 昔、吉備の国の大臣が、中国へ渡ったときのことである。おおぜいの前で、何やらむずかしい書きものを読まなければならなくなった。もともと、中国は漢字漢文の国なので、これはえらいことになったと、たいへん心配したのであった。
 いよいよ、その朝がきた。大臣は中国の偉い人の前に出て、仕方なく書きものを広げたのだった。
 すると、天井から一匹の蜘蛛が、スーッと降りて来て、文字の上を這うのだった。大臣はその蜘蛛の這うように文字を追って読んだら、きちんと読むことができたのであった。
 蜘蛛は、絶体絶命の大臣を見事に救ったのだというのである。この故事から朝の蜘蛛は吉・福をもたらすもので、決して殺してはならぬというのであると。

話者   武蔵   中谷 久恵
記録   大野 寿男

(116)一本だたら

 あるとき、一人の猟師が玉置神社にお参りして、横峯を歩いておった。
 突然、大きな音がしたかと思うと、山の上から何ものかがおりて来て、道をふさいでしもうた。見ると、なんとそれは身の丈一丈(三メートル)はあろうか、足は一本、目は一つの怪物なのである。さては、うわさの一本だたらが出よったわい、このやろう……と、猟師は肝をすえた。
 ひとときにらみあっていた。が、やがて一本だたらが口を切った。
「ただではこの道は通さぬぞ。さあ、何でもよい。一つ勝負をしようじゃないか。おれに勝てば通してやろう。どうだ。」
 突然のこと、良い考えも浮かばぬ。猟師がだまっていると、
「それじゃあ喚[おめ]き合いではどうじゃ。初めにおれが喚くことにしよう。」
ということで、一本だたらが先に喚くことになった。大きく息を吸い込むと、一本だたらが、猟師に向かって「ウォー」と喚いた。その声の大きいこと。まわりの木々の小枝や木の葉がビリビリと震え、猟師の耳の痛いこと、痛いこと。こまくが破れるかと思われた。
 そこで猟師は考えた。まともにやってはとても勝ち目はない。そうだ、こいつでいこう。
「ようわかった。今度はおれの番だ。すまぬが目をつぶって、もちょっと、こっちへ寄って来てくれ。」
と、近くへ一本だたらをよび、もうしばらく目をつぶっていてくれよと、ひとりごとをいいながら、火なわに火をつけ、火なわ銃を一本だたらの耳に近づけると、ズドンと一発やった。
 これには一本だたらもおどろいて、すっかり肝を冷やし、
「これはかなわん、まいった、まいった。」
と、わめいて、すっとんでいった、と。

話者   猿飼   森 貞夫
再話   那知合   後木 隼一

(117)源治渕

 もう百年余りも昔、この近くのむらに源治という働き者の若者がいた。そして、その隣のむらには、ヨシノというきりょうよしの娘がいた。
 二人は、ある年の盆踊りの晩に知り合い、いつしか想い想われる仲となり、やがて夫婦[めおと]になろうと固く契り合うほどになった。ところが、どうしたわけか、どちらの親もがんとして二人の仲を許そうとはしなかった。
 おもいあまった二人は、とうとう、死んであの世で添いとげようと誓い合うのじゃった。
 ことしもまた夏が来て、こよいのむらは盆踊りでたいそうにぎわっていた。二人は、ひそかにしめし合わせて、そっと踊りの輪を抜け出し、手を取り合って川下の渕の上に下りたった。
 ただ、だまってしっかり抱き合っていた源治とヨシノ、やがて踊りのたすきで互いの体を一つに結び、黒ぐろと渦巻く渕めがけて身をおどらせた。
 朝になって、源治がおらん、ヨシノもおらんと二つのむらは大さわぎとなった。むらの衆が総出で探していたら、一里(約四キロ)も川下の渕の岩に、男と女のぞうりがそろえてあるのがみつかった。
 それから、また何日かたったある日、筏下しの男たちが、その渕の底に、白く石のように沈んでいる源治とヨシノを見つけたのじゃった。
 むらの衆は、二人をあわれみ、ねんごろに葬ったということじゃ。
 こんなことがあってから、この渕を源治渕と呼ぶようになったそうな。
 この源治渕も、今じゃ二津野ダムの底に沈んで、もう二度と見ることはないが、ちょうど、あの果無[はてなし]トンネルの真下あたりにあったのじゃ。

話者   桑畑
  岡 伊三男
再話   湯之原   大野 寿男

(118)北屋のおばばと川太郎と

 北屋のおばばが六月の暑い日、岸の畑で麦引きをしておった。
 だれか知らんが、おばばの後ろへ回って股ぐらへそっと手を入れてくる奴がおる。
「これ、なにをする。気色の悪い。」
と、おばばがその手を払いのけるが、しばらくすると、またもそろそろ手を突っ込んでくる。
「きょうとい奴じゃ。するなというに。」
と、怒って後ろを振り向いたがだれもおらん。
「ふふん。こりゃ、きっと裏の渕の川太郎の仕業[しわざ]に違いない。」
「あの川太郎め、このおばばをからかいに来よったわ。」
 おばばは、ひとりごとを言ったかと思うと、畑の畦[あぜ]に転がっておった手ごろな石ころを一つ拾うと、やにわに股ぐらにはさみ、何くわぬ顔して、また麦引きを始めた。
 しばらくすると、またまた後ろから股ぐらへ手を入れてくる。そこで、おばばは、
「これこれ、おばばの股ぐらは硬いぞえ。」
と、入れてきた手を取って股ぐらの石に当てがってやった。その手は、しきりと股ぐらの石をなでまわしておったが、
「まっこと、硬い股ぐらじゃ、こんな股ぐら初めてじゃ。」
と、後ろの方で声がして、その手を引っ込めてしもうた。
 おばばは、してやったりとうれしくなって、
「こんどは、わしの番じゃ。ちょっくらからかってやろうか。」
と、にやにや。
「おうい、おい。裏の渕の川太郎よ。もうそろそろけんずいじゃ。お前さんも上がってきて、このおばばといっしょにこづきをはねらんかの(ハッタイ粉を食べらんかの)。」
 おばばは、いそいで家にとって帰り、こづきにそっとすすを混ぜ、椀に盛ってへらを添えて出してやった。川太郎の奴、喜んで上がってくると、おばばに見習って椀のこづきをパック、パック、パックと、あっというまに口の中へほうり込んでしもうた。これを見ておったおばばは、
「こづきばっかりじゃ、さぞのどが渇いたじゃろ。」
と、こんどは番茶を湯呑に汲んで出してやった。川太郎の奴、これも一息にグッと飲み干した。
「どうじゃ、おばばの作ったこづきも番茶もうまかろうが……。」
 ところが川太郎の奴、
「ゲッ、ゲッ、ゲッ。」「ゲ・ゲ・ゲ。」「ゲボ、ゲボ。」
目を白黒させて、のどを押さえ、裏の渕へドボーンと転げ落ちていった。
 ほんまに、すすみずは川太郎に毒らしい。

話者   湯之原   羽根 定男
再話   湯之原   大野 寿男

(119)長池の川太郎

 むかし、むかし、この湯之原と小井との間に長池というて、それはそれは長い大きな渕があったそうな。
 そして、この長池には川太郎が棲んでおったということじゃった。
 あるとき、この長池の上の道を通りかかったひとりのばあさんが、なにげなしにひょいと下の方を見やったら、渕の大岩にきれいな飯びつが一つ、ちょこんとのっている。
「これはおかしい。あんなところに飯びつが……。」
とひとりごとを言いながら眺めていたら、その飯びつ、ひとりでにもそもそ動き出し、やがてコロコロとまくれてドボンと青い渕に沈んでしまった。
「は、はあん、さては、あの飯びつ、川太郎じゃったわい。」
「川太郎の奴、きょうは天気もいいし、岩の上へ上がって甲ら干しをしくさっとったな。」
 このばあさん、舌打ちしてそこを立ち去ったと。

話者   湯之原   羽根 定男
再話   湯之原   大野 寿男

(120)河童と唾

 頃は明治の中頃、所は大字旭。
 初夏のある日のできごとです。
 村の桝屋[ますや]のおじさんは、いつものように牛を連れて草を食べさせに、下の川原へやって来ました。
 お日さまがさんさんと照る川原には、青々と草が茂り、まるで緑色のじゅうたんを敷きつめたようです。
 おじさんは牛の手綱を放ち、草の上に「どっこいしょっ」と腰をおろして休みました。
 四方の山々は若葉が輝き、とんびの「ヒュルルルルー」というのどかな鳴き声も聞こえます。
 時おり川面を跳ねる魚を見やりながら、腰につけたきざみたばこに火をつけて、大きくひと息吸いました。
 そのとき、草をたっぷりたべて、水際で水を飲んでいた牛が、突然おかしなかっこうをはじめたではありませんか。あとずさりにどじばって(力を入れてふんばる)いるのです。よくよく見ると、川の中から河童が、腕を伸ばして牛の前足をつかみ、じりじりと川の中へ引き込もうとしているのです。
「これは、えらいこっちゃ」と辺りを見回しましたが、石もなければ棒もない。助けを求める人もいない。
「このままでは、牛は河童にやられてしまう。」と思ったおじさんは、いきなり川の中へ飛び込んで河童の腕にかみつきました。
 すると、河童の腕はみるみるうちに真白になり、力がぬけたらしく、牛から手を離しました。そのすきに、おじさんは牛を岸に引き上げました。
 河童は、
「水三合あれば人間五十人分の力はあるが、人間さまの唾には、とてもかなわん。参った。参った。」
と、ひとり言を言いながら水の中へ消えて行ったということです。

話者   坪井 一正
記録   岸尾 富定
再話   前木 千鶴子