ターラ |
〔地〕たいら(平)の訛り。山中あるいは尾根上の平坦ないし緩傾斜地。〔例〕ヌタンダーラ(谷瀬)。イチモンダーラ(迫西川)。(松柱・小坪瀬にも)。 |
ダーラ |
〔地〕ターラと同義(上湯川)。 |
タイ |
〔住〕松明[たいまつ]。もちろん、「手火(たひ)」から。マツノタイ、マツダイともいう。コエマツノタイ。 |
ダイ |
〔信〕神さんの口寄せをする人(上葛川)。 |
ダイオウ
(大黄) |
〔植・療〕。 |
ダイギリ |
〔林〕鋸の一種(上葛川)。 |
ダイコ
(大根) |
〔農・食〕。 |
ダイコクサン
(大黒さん) |
〔信〕エベッサンと一緒に祀り、普通は「エベッサン」と総称しているが、迫西川などでは独立してダイコクサンと呼ぶ。ヘヤ、ソトベヤに祀る。 |
ダイコクバシラ
(大黒柱) |
〔住〕家の中心になる柱。 |
ダイコズリ |
〔食〕大根のおろしがね(玉置川)。 |
ダイコツキ
(大根突き) |
〔食〕 |
ダイコンナマス
(大根膾) |
〔食〕 |
ダイシサマ
(大師様) |
〔年〕旧3月21日、お大師さんの命日。餅、団子を作って、供える(折立)。 |
ダイジャ
(大蛇) |
〔動〕オオグチナワ。 |
ダイショウグン
(大将軍) |
〔信〕十津川郷で一番有名な大将軍は、上湯川寺垣内の氏神天満宮の境内に鎮座「金神大将軍」と称し、金神さんの親方で、この神様に頼めば方角の凶は構わぬとて、紀州からさえお参りがあった。 祭日は、12月14日。重里でもアキノカタの大将だという。ダイジョウゴ(小坪瀬・谷垣内)、ダイジョウゴン(松柱)ともいう。 →ダイショウグンノオハシ。 |
ダイショウグンノオハシ
(大将軍のお箸) |
〔信〕寺垣内の大将軍社から出すコザイ(幣串)を、この神のお箸と称し、地鎮祭などする人が山路[さんじ]や熊野からさえ戴きにくる。この箸で御飯を食べさせると左利きが癒るという(上湯川寺垣内)。 |
ダイジョウゴ |
①〔信〕大将軍。小坪瀬の橋詰では山の神と共に祀る。谷垣内「上垣」家でも山の神と共に祀り、猪害から守って下さるという。 ②〔人〕大酒呑みのこと。ダイジョウゴの祭には、すごく酒を呑み、部屋が一升瓶て一杯になるという(那知合)。 |
ダイジョウゴン |
〔信〕大将軍。松柱峯地では巨岩をこう呼んで信仰し、「ジャク」家が祭っている。小坪瀬の入口にも、こう呼ばれる松の大木があり、水の神という。迫西川では、則本本家が祭り、小山手では一族毎に先祖として祭る。共に崇りがきびしい。 |
タイショウダマ
(大正玉) |
〔筏〕メガによる結束(カラミ)法から、カンを打ち込んで、ネジの角端の固い部分をネジで止める法。3、4年して、ネリを用いずに、直接打ちつけるオオダマに変わった。 |
ダイズマメ
(大豆豆) |
〔農・食〕大豆。 |
ダイズメシ
(大豆飯) |
〔年・食〕オトコヅイタチ(12月1日)にオトゴ(末子)に炊いて食べさせた。それで「オトコヅイタチ、マメクテシー」という言葉がある(重里・宇宮原)。 |
タイドク
(胎毒) |
〔産〕 |
タイナ |
〔食〕葉菜[ようさい]の一つ。漬物によい(旭)。 |
ダイニチニョライ
(大日如来) |
〔農・住〕牛の守護神。 |
ダイドコ |
〔住〕(台所)(内原字栗平・旭)ダイドコロに同じ。 |
ダイハチ
(大八) |
〔交〕大八車。二つ車で馬に曳かせて来た。 |
タイマツ
(松明) |
〔住〕(小坪瀬・上湯川) |
ダイマル
(大丸) |
〔林〕大きさによる炭の分け方の一つ。 |
ダイモチ |
〔芸〕ダイモチヒキに同じ(小山手)。 →ダイモチヒキ。 |
ダイモチヒキ |
〔芸〕盆のオオオドリのあとにやる。見物や相手に応じていろいろ変える。歌は、「えー、ダイモチヒキひこかよ、ダイモチヒキ、ダイモチヒキさんというものは……」(小山手)。 |
タイラ
(平) |
①〔地〕平。 →ターラ。 ②〔村〕瀧川・竹筒では小字を指す。勿論地形による呼称。 ③〔住〕タイラニスル=胡座[あぐら]をかく(出谷殿井)。 |
タイラザケ |
〔食・禁〕暦のタイラ(平)(十二直の4番目の日)の日にドブロクを作ったら凶い。タイラザケは凶いという(旭)。 |
タウエ
(田植え) |
〔農〕①田植え。シツケという所が多い。 ②草を植える人、即ち早乙女のこと(竹筒)。 |
タウエイチゴ
(田植苺) |
〔植・食〕野生のイチゴのうちで一番早く、田植えの頃に実が熟する。松柱ではフクロイチゴともいうが、谷垣内ではフクロイチゴとは別で、少し早く実る。「タウエイチゴのサカエー(出来の良い)年は田のサカエー」(谷垣内)。 |
タウエウタ
(田植唄) |
〔農・芸〕 |
タウエヅナ
(田植綱) |
〔農〕田植えの規矩網。ツナに同じ(竹筒)。 →ツナ |
タオ |
〔地〕山中の窪地。タワとも。 |
タガ |
〔農〕担い桶(竹筒)。フロタガ=風呂桶。 |
タカ
(高) |
〔地〕空、上の方。天井裏を指すこともある(重里)。 |
タカイヤマ
(高い山) |
〔年・芸〕盆踊の一つ(竹筒)。 |
タガウ
(違う) |
〔自〕ちがう。相違する。「足の指がタガッて痛いよ」。 |
ダカエル |
〔他〕抱きかかえる。 |
タカガミ
(高神) |
〔信〕神棚。 |
タカキビ
(高黍) |
〔農・食〕高梁。昔作ったが、今は作らぬ(出谷・湯之平)。実を落としたカラ(穂)は箒になる。 |
タカジラス
(高白州) |
〔地〕余程の増水でないと水に漬からぬ磧(宇宮原)。 |
タカゼン
(高膳) |
〔食〕高脚膳。ベタゼン(平膳)に対していう。客用。 |
タカタカユビ |
〔体〕中指(那知合)。 |
タカトビ
(高飛び) |
〔動〕上空を群れをなして飛ぶ一種のトンボ(内原字栗平)。 |
タカナ |
〔農・食〕昔からの重要な野菜の一つ。オオナカラシナのこと。 |
タカナズシ |
〔食〕塩漬けのタカナで包んだ握り飯。田植え時の午に田で食べたりしたいわゆるメハリズシの原型(玉置川)。 |
タカハシ
(高橋) |
〔交〕葛川に架かる神下大橋のこと。架設当時は珍しくタカハシと呼ばれた。 |
タカバナ
(高鼻) |
〔狩〕猟犬がタカ(空)を向いて、ニオイヲトル(獲物をかぎつける)こと(小坪瀬・出谷)。 |
タカユビ
(高指) |
〔体〕中指(串崎)。 |
タカラグラ
(宝蔵) |
〔村〕大字の共有文書や什器[じゅうき]を収蔵する蔵。郷全体としては小原の宝蔵(ホウゾウ)が有名で、その所蔵文書は一括して県指定重要文化財となっているが、明治22年の大水害までは北の中心の川津にもあった。武蔵には、大字有の立派な二階建てのクラが今もタカラグラと呼ばれて文書を所蔵し、旧光明寺の諸佛像、什器、扁額[へんがく]もここに隠してあったが、今はその傍に一宇[いちう]を建立して安置している。旭のタカラグラは栂之本の氏神のほとりにある。 |
タキギノリ
(薪乗り) |
〔交〕(自家用の)薪(タキモノ)を運ぶために舟を使うこと(田戸)。 |
タキコ
(焚子) |
〔職〕ショウエン小屋で火焚き用に使われた10才~14、5才の子供のこと(上湯川)。 |
タキゴメ
(炊き米) |
〔食・信〕仏供としての飯をいう。稲を取り入れてハク(精白)にすれば、神様にはアライゴメ、ホトケサマ(仏壇)にはタキゴメを供える(旭)。 |
タキザイ
(炊き菜) |
〔食〕煮〆(玉置川)。 |
タキシバ
(焚き柴) |
〔住〕薪(殊に枝、葉)。 |
タキシバヤマ
(焚柴山) |
〔林・住〕薪材を樵るための山(樫原)。 |
タキゾメ
(炊き初め) |
〔年〕①正月3日(不浄日)に赤飯を炊いて神様に供えること(今西)。これが、その年の炊き初めである。小山手では白御飯を炊く。 ②正月4日に初めて煮炊きする(小坪瀬・谷垣内)。 ③焚きつけに2日のヤマハジメに伐った木(旭字迫)。 |
タギタマットル |
〔自・動〕蛇がとぐろをまいていることにいう(旭)。 |
タキノオカ
(滝の岡) |
〔地〕杉清の奥の滝。 |
タキマツリ
(瀧祭り) |
〔林〕堰出しの際、安全のために危険な瀧(西川のオンダキなど)の傍に洒などを供えて、仕事が無事終了することを願った。 |
タキモノ・タキモン
(焚物) |
〔住〕薪。 |
タキモンバコ
(焚物箱) |
〔住〕竃の脇に置いておいて焚物を取り分けて入れておく箱。火吹竹も一緒に入っていた(玉置川)。 |
タキモノツクリ
(焚物作り) |
〔林・住〕薪樵り。キコリともいう(竹筒)。 |
タグサ
(田草) |
〔農〕タシバに同じ(谷瀬・重里大津越)。 →タシバ |
タクラタ |
〔怪〕冬の山小屋などへ、突然入って来て、人に伍[ご]して暖をとった不思議な獣。熊に似て剛毛が密生していたという。アホウノタクラタともいう(田戸)。 〔注〕「お伽草子」では阿保のこと。 |
タクル |
〔他〕ひったくる。強く引っ張る。奪い取る。 |
タケ
(竹) |
〔林・植〕 |
タケイロビキ |
〔動〕蛙の一種。殿様蛙のことか(上湯川)。 |
タケカズ |
〔林〕材木の本数。タケカズヲ数エル(武蔵)。 |
タケガワ |
〔衣〕 |
タケナガ |
〔衣〕巾1~1.5cmの細長い紐をいろんな色に染めたもので、桃割髷[まげ]を結ったり、幼女のオチョボを括[くく]ってリボンのようにしたりした。行商の小間物屋が売りに来た(平谷・田戸)。 |
タケノコ
(筍) |
〔植〕 |
タケブキ |
〔住〕3尺5寸のカワ(杉桧皮)を5寸くらいずつ重ねて茸く葺き方。重ね目はササラ(オサエ)を載せて釘でとめる。5寸足で15年は保つ(小原)。 |
タケモドリ |
〔漁〕アメノウオを捕るための竹製のモドリ。流れに向けて伏せる(上葛川)。サカモドリともいう。 |
タケリ |
〔動・名〕獣、犬、猫の発情、さかり。動詞はタケル。 |
タケル |
〔自〕①獣や犬、猫がさかる。「タケッて歩く」。 ②野菜など成長しすぎること。 |
タゴ |
〔農〕コエタゴ=肥桶。タガとも。 |
タゴヤ
(田小屋) |
〔農〕田のコヤシのために、マブなどの草を苅って入れて置く小屋。これをタシバに混ぜて田に入れた(山天)。 |
タゴル |
〔自・体〕咳く。 |
ダシ
(出し) |
〔林〕伐採した材木をカリカワまたは編筏の基地まで出す作業。スラ(修羅)やキンマもその一部。また、その職人(ヒヨウ)。 |
ダシアワセ
(出し合わせ) |
〔林〕(お金の)出し合い(高瀧)。 |
ダシガネ |
〔衣〕フシ(五倍子)の粉と、フルカネ(古鉄屑)やカナクソ(金屎)(鍛冶屋でもらう)などを一緒にツボに入れ、水を入れておけば黒い汁が出来る。これがダシガネで、これをカネツケバネにつけて歯を染めた。 |
ダシガネツボ |
〔衣〕ダシガネを作るための瀬戸物の壺。 |
タシナム |
〔他〕大事にする。貯まる。 |
タシナメル |
〔他〕訓戒する。苦しめる。いじめる。 |
タシバ
(田柴) |
〔農〕コヤシとして水田に入れる(踏み込む)クサ(草や木の若葉)(谷瀬・山天・重里大津越)。「タシバイレル」=カリオキを田に入れる。タシバノクチアケ(玉置川)。タシバとしてカヤ、クリシバ、ハギ、ホソシバなどが利用された(玉置川)。谷瀬ではタグサともいい、ホウソメ(柞の若葉)が一番よく効くという。施与量は一升マキ(15歩)に3ガ(30貫)とされていた。 →タシバカリ |
ダシバ
(出し場) |
〔製〕炭窯の前の、焼上がった炭を掻き出して拡げる場所。 |
タシバイチゴ
(田柴苺) |
〔植・食〕タシバを苅る頃に実る黄色いイチゴ(小原)。 |
タシバカリ
(田柴苅り) |
タシバを苅る作業。谷瀬を例にとれば、アサイ(朝飯)前に1カ(10貫)苅り、アサケンズイを食べて、また1カ苅り、ケンズイを食べて、また1カ苅ってヒルメシにした。3カとも畝のところに置いてから田の中へ踏み込み(クサフミ)、終われば日が高くても上がった(家に入った)。昔は、5~6月の作業で、6月を過ぎぬと田植えをしなかった。 |
ダスイ |
〔形〕ザスイ(粗雑な)の訛り。 →ザスイ |
タスキ
(襷) |
〔衣〕長袖でオナリ(台所仕事)をする時だけ掛けた。 |
タズキ
(田鋤き) |
〔農〕牛に田を鋤かすこと(宇宮原)。 |
タタキ |
〔住〕タタキブキに同じ。 |
タタキイシ
(叩き石) |
〔農〕藁叩き石。 |
タタキブキ
(叩き葺き) |
〔住〕カワ葺きの中で、一番余計にカワが要るが、体裁も保ちも一番良い。3尺5寸のカワを2つ切りにして、一寸置き、2寸置きに細かく葺き、口に銜んだ竹釘でトントン打ちつけた屋根で、職人でないと葺けぬ。この場合も2タケくらいのところで、ササラで抑える。 |
タダマイ
(只米) |
〔農・食〕うるち(粳)。ウルシネともいう。 |
タタミ
(畳) |
〔住〕 |
タタミヂョウチン
(畳み提灯) |
〔住〕提灯の一種。 |
タタム |
①〔他〕畳む。 ②〔葬〕ハカをタタム。死後7日目に埋葬した上に石を拾って来て並べる。 |
タタリヤマ
(崇り山) |
〔俗〕そこで仕事をすれば怪我をする(上湯川大井谷)。 |
タチアイ
(立会い) |
〔葬〕特に葬列を送る作法。 |
タチクラミ |
〔体〕めまい。 |
タチバ |
〔葬〕出棺時の振舞(谷瀬・上湯川)。 |
タチマリ
(立鞠) |
〔戯〕男も女も輪になって、マリを突きながら隣へ送り、つき損ねると尻を叩く遊び(谷垣内)。 |
タツ |
①〔自〕(棘が)刺さる。(矢が)中る。 ②〔他〕カズラヲタツ(断つ)筏をカラムための藤蔓(フジカズラ)を切りに行く。山の女たちのいい収入になった。 ③〔名・形〕竪。タテウス(竪臼)。 ④〔他・地〕土地の傾斜のきついことにいう。「迫西川みたいなタッたところは、コエタゴマクッたら桶屋を頼む方が早いくらいじゃ」(込之上)。 |
ダツ |
〔林・製〕炭俵。スミダツともいう。茅製。コモ、スゴともいう。 |
タツウス |
〔食・農〕竪臼。タテウス。 |
タッツケ・タッツケバッチ |
〔衣〕もんぺ。 |
タツミゴチ
(巽東風) |
〔天〕東南からの雲。東南風(出谷)。 |
タテ |
〔食〕袋。コウゾクソガミの厚手のもので作る。茶(チャタテ)や椎茸(シイタケタテ)などの保存に使う。槽でタテを作ることをタテスルという(旭) →ロクマイダテ |
タテアミ
(竪網) |
〔漁〕特に鮎を捕るのに用いる網の一つ(重里)。 |
タテイシ
(立石) |
①〔信〕石碑(西中)。 ②山のサイメンの標石(杉清)。 |
タテウス
(竪臼) |
〔農・食〕米麦、餅搗き用の臼。古老は、タツウスという。 |
タテオモリ |
〔筏〕セギの部品。タテオモリヲヒク。 |
タテガシ
(立樫) |
〔植・食〕救荒用に切らずに残しておくカシの木。ハビロガシが多い(那知合)。 |
タテガミ |
〔衣〕袋やフスマ、カミコにする厚手の楮紙。 |
タテカベ
(立璧) |
〔地〕絶壁(小坪瀬・下葛川)。 |
タテガン
(竪棺) |
〔葬〕座棺に対していう。 |
タテコミ |
〔住・柑〕家を閉め切って出村してしまい、空家になっていること。
※タテコンドル-退転して空家になっている(谷垣内・那知合・武蔵・竹筒)。 |
タテジル |
〔食〕山仕事などの折に作る即席の味噌汁。メッパの蓋に熱湯を注ぎ、味噌を入れて掻き回し、トロロコブ、焼椎茸、サンショの芽などを入れたりする(旭・那知合・武蔵)。同じく旭の中谷では、イシジルという。 |
タテスル |
〔他〕コウゾでタテ(袋)を作る(旭)。 |
タテバイ |
〔食〕灰汁をとるために篩でふるうた灰(上湯川)。 |
タテマエ
(建前) |
〔住〕上棟式。ムネアゲともいう。 |
タテヤマ |
〔林〕杉や雑木の生えている山(上葛川)。 |
タチリコウジン
(立里荒神) |
〔農・信〕野迫川村立里に在る。 |
タドキ
(田時) |
〔農〕田の仕事の忙しい頃(五百瀬)。 |
タドノハマ
(田戸の浜) |
〔交〕瀞八丁の舟の発着場。 |
タナ
(棚) |
①〔住〕棚。 ②〔狩・動〕クマノタナ=熊の円座。タナカケル=熊が円座を掛ける(宇宮原)。葛川筋ではクマノヤグラという。 |
タナバタ
(七夕) |
〔年〕 |
タナバタアメ
(七夕雨) |
〔年〕この日四ツ(午前10時)までに3粒でも雨が降れば牽牛[けんぎゅう]、織女[しょくじょ]の2人は会えぬという(谷垣内)。 |
タナバタサマ
(七夕様) |
〔年・俗〕タナバタサマにキゾメ(着初め)して貰えば、着物にヤキアナ(焼穴)が出来ぬとて、盆前に作った着物は手を通さぬうちにみな、ホトケサマの前に吊るした。こうすることを「タナバタサマノキゾメ」という(谷垣内)。 |
タナモト |
①〔住〕ながし(出谷)。 ②〔食〕食事の後始末をすること。または流し場。タナモトとも。 |
タナモトスル |
〔食〕①食事のあとで食器の後始末をする(出谷)。 ②炊事の支度をする。 |
タニ
(谷) |
①〔地〕渓谷全体。または特に水の流れを伴う谷。サコに対していう。 ②〔住〕特に飲用水を引くために谷水を堰[せ]いだ取り入れ口(出谷・内原・谷垣内・内原)。
※ミナクチ(上湯川字寺垣内・小坪瀬・西中)、ミズモト(上湯川入谷)ともいう。正月にタニを祭り、西川筋や松柱ではここにスイジンキ(水神木)がある。 |
タニコンパ |
〔動〕小谷の岩穴にいて、春鳴く赤い小さい蛙。グーグーと小さい高い声で鳴き、クアンクアンと響く(上湯川寺垣内・那知合)。 |
タニゴンパ |
〔動〕タニコンパに同じ(旭)。 |
タニシ
(田螺) |
〔食・動〕からごと焼いて食べる(串崎)。塩茹でする(那知合)。 |
タニジ |
〔地〕小谷の谷あい(小坪瀬)。 |
タニショウブ
(谷菖蒲) |
〔植〕菖蒲に似て葉はより細く、細花をつけて群生する(谷垣内・那知合)。 |
タニワタリ
(谷渡り) |
〔禁・産〕谷を越える(渡る)こと。産後50日間は水神に遠慮してタニワタリしない(上湯川大桧噌)。 |
タニワタリゾウリ
(谷渡り草履) |
〔衣〕普通の草履は4本のヒキソに編みつけるが、これは真ん中の2本のヒキソをとばして編み、引き返して4本全部に編みつけるやり方で、却って難しい。専ら内履き用。語源不明(上葛川)。 |
タニワタリフジ
(谷渡り藤) |
〔信〕藤蔓が橋を架けたように谷の対岸へ延びているもの。山の神さんの橋だといい、絶対に切らぬ。小坪瀬ではスイジンカズラ(水神蔓)ともいうo |
タニンゴウラ |
〔地〕特に深い谷をいう。 |
タヌキ
(狸) |
〔動〕 |
タヌキイチゴ
(狸苺) |
〔植・食〕10月末頃から実り初める。狸が食い過ぎて酔うて死んでいた(谷垣内・小原)。ダノキイチゴともいう。 |
タヌキボウシ |
〔体〕嘘つき(出谷)。 |
タヌキボシ |
〔動〕狸のこと。狐はキツネボシ(出谷・神下字田戸)。 |
タネアブラ
(種油) |
〔食・住〕 |
タネオロシ
(種下ろし) |
〔農〕播種[はしゅ]。 |
タネツケ
(種漬け) |
〔農〕浸種。 |
タネボウ |
〔農〕種牛(宇宮原)。 |
タネマキ
(種播き) |
〔農〕苗代の播種[はしゅ]。 |
タネモノイレ
(種物入れ) |
〔農〕種物の保存容器。ユーゴ(ユウガオ)で作った家もある。 |
タノカミオコシ
(田の神起こし) |
〔農・芸〕田植え唄の最初に決まって歌われた唄で3度繰り返す。「起きよ嫁御前、朝日がみかどへさいたぞよう」(上湯川寺垣内)。 |
タノキ |
〔動〕狸(西川筋)。 |
ダノキ |
〔動〕狸(西川筋)。 |
ダノキイチゴ |
〔植・食〕クサイチゴ(西川筋)。 |
タノクサカキ
(田の草掻き) |
〔農〕 |
タノシ |
〔動〕田螺[たにし](串崎・那知合)。 |
タノムシオクリ
(田の虫送り) |
〔農〕土用丑の日に松明行列をした。「虫もケラも御伴せー、実盛どんの御伴せー」(上湯川寺垣内)。 →ムシオクリ |
タノモシコウ
(頼母子講) |
〔村〕昔は、米、麦、タネ(種子)のタノモシコウなどもあった(今西・旭)。 |
タノモト |
〔住〕→タナモト・オナリ。 |
タバケル |
①〔自〕たわむれる。おどける。 ②〔他〕機嫌をとる。「子供をタバケル」=あやして泣き止ませる(串崎・那知合)。「この菓子やって一寸タバケヨー」。 |
タバコ
(煙草) |
①〔農・食〕煙草 ②〔食〕休憩、おやつ。 |
タバコシバ
(煙草柴) |
〔食〕シバマキを巻くシバ(柴)=椿、樫などの葉がよい。(竹筒)。 |
タバネソ |
〔農〕田植えのときに苗を括る縄(玉置川)。 |
タバリアイ |
〔児〕キャッチボール(平谷地区)。 |
タバル |
①〔他・信〕神仏の供物を下げ、またそれを戴く(食べる)。「供える」は、オマス。 ②〔児〕毬[まり]を受ける。「マリをタバル」。キャッチボールもタバリヤイ。「そんなボール、ようタバランのか」(平谷地区)。 |
タビ |
①〔村〕(旅)旅行だけでなく、郷外に住んでいることにもいう。 ②〔衣〕足袋。 |
タヒキ |
〔農〕牛で田を犁くこと(竹筒)。 |
タビハキオオカミ
(足袋履き狼) |
〔動〕四足の先の白い狼で、神納川の総社大宮神社のお使いだという。 |
タブコ |
〔食〕「たばこ」の訛り。 |
タブシン
(田普請) |
〔農・村〕共同の水田開墾作業(谷瀬)。 |
タブラカス |
〔他〕狂わす。 |
タブル |
〔自〕狂う。水など平静でなく揺れる。 |
タマ(玉) |
〔筏〕編筏用のフジカズラ(藤蔓)の結び目。トコとトコを繋ぎ合わすのに用いる(風俗図絵)参照。 →タマコ。 |
ダマカス |
〔他〕だます。 |
タマキノボリ
(玉置登り) |
〔信・年〕十津川郷の総鎮守玉置神社に登拝すること。殊に歳旦の初詣には多数の賓客が登る。 |
タマコ |
〔筏〕カンにとおしてアバ(浮材)を繋ぐフジカズラの環。カズラタマともいう(田戸)。 |
タマトリ
(玉取り) |
〔村〕抽選。 |
タマノキ |
〔植〕タルノキ、イヌグス(神下字下葛川)。 |
タマボンボ |
〔植〕タマンボ。 |
タマヤ
(霊屋) |
〔信〕仏壇、廃仏棄釈後は、お先祖さん(ホトケサマ)をミタマと呼び、仏壇をタマヤ(ミタマヤ)と呼ぶのが正当なのに、今もって「ブツダン」と呼ぶのが一般的である。 |
タマヨバイ
(魂呼ばひ) |
〔葬〕当地での名称は不明ながら、北山川で溺れた子を川原に引き揚げて、マツカサ(笠の一種)で煽[あふ]いでいたのを見たことがある(竹筒)。 |
タマリ
(溜まり) |
〔食〕醤油の一種。醸成したものの中にショウユコシ(篭)を突っ込んで、その汁が濾されて溜まったもの。 →ショウユコシ |
タマンボ |
①〔植・食〕ヤマイモのムカゴ(零余子)。搗いてキンゴ(澱粉)を取る(谷垣内)。イカゴ(松柱)、イカイゴ(今西)ともいう。 ②〔植〕カラスウリ(西川筋)。タマボンボともタンボンボともいう。 |
ダメ |
〔名〕物を大切にしまっておくこと。「ダメヲセヨ」。 |
タメグチ
(溜め口) |
〔農〕田の水口のぬるめ(上湯川寺垣内)。 |
タメル |
〔自〕狙う。 |
タモ |
〔漁〕網の一種。二股の木の枝を両方から撓[いた]めて輪にし、袋網をとりつけ、3mくらいの柄をつけたもの。濁り水の時に鮎やウグイなどを掬[すく]い捕る(小原・武蔵・高津-この捕り方をニゴリコミ、ニゴリコキともいう)。 |
タモツ
(保つ) |
〔自〕永もちする。小正月の成木責めの唱え詞に「なるか、ならんかならにゃ切るぞ、なってもモタにゃ切るぞ」(上湯川)。 |
タラ |
〔植・食〕タラノキ。嫩芽[どんが]をあくぬきし、あるいは柚でいためて、煮て食べる。 |
ダラ |
〔植・食〕→タラ(上湯川・松柱)。 |
タラメ |
〔植・食〕タラの嫩芽[どんが](上葛川)。 |
ダラメ |
〔植・食〕→タラ(沼田原・武蔵・田戸・旭)。武蔵・旭辺では、山菜中最高という人もある。 |
タル
(足る) |
〔自〕「十分にタルする」。 |
ダル |
①〔農〕下肥。ダルゴエともいう。訛ってザルともいう。 ②〔怪〕ひだる神。「ダルがツク(憑く)。カツエた(餓死した)亡念が、トッツクのだという。 |
タルイレ
(樽納れ) |
〔婚〕結納。縁談がまとまれば仲人がツノダル(角樽=昔は一升瓶)を先方に持参する。 →タルモチ |
ダルゴエ |
〔農〕下肥。ダルともいう。 |
タルハチ
(樽鉢) |
〔食〕鮨を入れる桶(竹筒)。 |
タルマル
(樽丸) |
〔製〕桶・樽用の榑[くれ]。イタミ、マルともいう。 →イタミ①昔は、重要な林産物の一つであったが、専門の職人(タルマルトリ、マルツクリ)は、他所者が多かった。製品の搬出(モチ)は、村人の収入の助けになった。 |
タルマルトリ
(樽丸取り) |
〔製〕樽丸師。タルマル作りの専門職人。田戸・竹筒方面では、マルツクリという。 →タルマル |
タルモチ
(樽持ち) |
〔婚〕①嫁入りの時、ナコウドと共に呼ばれる女の人(小姑など)(今西)。 ②婚礼に仲人夫婦と共に祝いの角樽を持って行く人(竹筒)。 ③「ヨメツレ」の時、聟方から仲人と共に聟について嫁方へ迎えにゆく若い女(妹でも親類の娘でも)。こうして嫁を連れて戻る。 efカドイデ(上葛川) |
タロウ
(太郎) |
〔族〕長男。三人称はアニ、アニコ(字宮原)。 |
タロバチ
(太郎蜂) |
〔動〕一番大きな蜂。ニガダロウともいう(旭)。 |
タワ |
〔地〕峠(上葛川ほか)。山の中の窪地。タオとも。 |
タワラ
(俵) |
①〔農〕米俵などの俵。但し、炭俵はダツ、コモ、スゴなどという。 ②カドマツについた松毯を特にこう呼び、多いほど喜ぶ。 ③〔産〕タワラヲフンドル(俵を踏んでいる)。生児の足の第二指に米俵の括り目のように三筋のシワがあれば、一生食うに困らぬという(宇宮原・内原)。 ④〔植〕まつかさ(内原・西中)。マツダワラ、マツノタワラ、マツンタワラとも。 |
タンゴ |
〔農・交〕担い桶。 |
ダンゴ
(団子) |
〔名〕ぼたもち |
ダンジ |
〔動〕産卵期に入って薄汚く変色したアメノウオ(旭)。 |
タンジョウ
(誕生) |
〔産〕初誕生(の祝い)。タンジョウモチを搗いて、ヨロコビ(お祝いの金品)を貰った家へ命名のナフダと一緒に配る(竹筒・玉置川)。 |
タンジョウイワイ
(誕生祝い) |
〔産〕初誕生祝い。ムカワリともいう(内原)。 |
タンジョウニチ
(誕生日) |
〔産〕初誕生。ハツタンジョともいう(今西)。 |
タンジョウニチモチ
(誕生日餅) |
〔産〕初誕生の祝いに搗いて配る餅。子供に負わせて宮へ参ることもある。負わせてもヨロケぬような子は、わざと押し倒す(今西)。タンジョモチ。 |
タンジョモチ
(誕生餅) |
〔産〕初誕生の祝い餅(竹筒・上葛川)。 |
タンゼダイクニウンガラヒヨ |
(谷瀬大工に宇宮原日傭)〔村〕北部の中野村区では、昔から谷瀬には大工、宇宮原には日傭(カリカワ人夫)が多かった。これに対して高津には教師になる人が多かったから「タコウツキョウイン」という言葉もある。 |
ダンダン |
〔副〕いつもいつも。「ダンダンオオキニヨ~」。 |
ダンナシ
(旦那衆) |
〔村〕村の有力者層。 |
タンバ |
〔筏〕タンバイル、カリカワで流材がつかえて渋滞することをタンバイッタといい、此の現象がキヅマリ(木詰まり)で、これを外すのがノベの役である(西中)。ツマリともいう。 |
ダンベ |
〔運〕団平船[だんべいぶね]。昔はこれが唯一の輸送機関であった。ヒラダ(テンマ)の5~6杯分の荷が積める。上りには米・日曜雑貨、下りには木炭・タルマル・板(バン)などを運んだ。2人乗り(田戸・七色・竹筒・平谷)。 |
ダンボ |
〔地〕小さな水溜まり(内原・武蔵)。ユタンボ。 |
タンボンボ |
〔植〕タマンボとも。 |