「ヨ」

①〔植〕節[ふし]。例えば、竹のヨ(高瀧)。松の節にも言う。松の木のヒトヨオーコの伝説がある(田戸)。 ②〔衣〕ヒトヨ。一重(ひとえ)、(着物など)。
ヨーカタ 〔時〕夕方(谷垣内)。
ヨーケ
(余計)
〔副〕沢山。
ヨーサ 〔時〕①夕方。夜。「ヨーサガタ」=夕方。 ②今晩の義にも用いる。コンヤ、コイサともいう(串崎・那知合)。アケノヨーサと言えば明晩のこと。
ヨーサガタ 〔時〕夕方。ヨーガタとも。
ヨーサリ 〔時〕晩(谷垣内)。
ヨーダチ 〔天〕夕立。
ヨーナベ 〔農〕よなべ。ヨナベとも。
ヨーヤケ 〔天〕夕焼け。
ヨアソビ
(夜遊び)
〔戯・婚〕若い衆のヨバイ(神下下葛川)。
ヨイイノコ
(宵亥の子)
〔農〕イノコにはヨーサリ(晩)祭る(谷垣内)。
ヨイロ 〔名〕世間の評判。対手の顔色を窺[うかが]うこと。様子。ヨイロミル。
ヨウカガエリ
(八日帰り)
〔禁〕旅など8日目に家に戻ること。極度に忌む。葬式の時、初七日を済ませて8日目に帰るからである(出谷)。ヨウカモドリともいう(田戸・玉置川)。
ヨウカバナ
(八日花)
〔信〕ウヅキヨウカの頃蝶々に似た花をつけるので、この日神仏に供える(竹筒)。
ヨウカモドリ
(八日戻り)
〔禁〕八日帰りに同じ(田戸・玉置川・上葛川)。
ヨウカヤクシ
(八日薬師)
〔信〕薬師さんの祭りは毎月8日。但し祭りは特にない(旭字迫)。
ヨウザン
(養蚕)
〔農〕→クワ
ヨウドル 〔自〕病んでいる。患っている(谷垣内)。
ヨガナヨッピテ 〔時〕一晩中。ヒガナイチニチの対語。
ヨガナヨッピトイ 〔時〕一晩中。ヨガナヨッピテ。
ヨキ 〔林〕斧の総称。
ヨギ 〔農〕上の田との間の石垣。畦。下の田との間の境はアゼという(今西)。
ヨキンビョー 〔動〕ヒタキ。寒い頃から来た灰色の鳥。ヒーカタカタと鳴く(松柱・西川)。
ヨクシンボウ 〔人〕欲な人。
ヨコ 〔林〕ダシ、カリカワの現場監督で、数人でショウヤを補佐する。
ヨコキャハン
(横脚絆)
〔衣〕足の太い人はヨコキャハンをはいた(谷垣内)。
ヨコザ
(横座)
〔住〕ユルリの家長の座(出谷・内原栗平・谷垣内・竹筒・玉置川・旭字迫)。オクザという所もある(出谷・谷垣内)。谷垣内ではウラザの右。
ヨコタ 〔筏〕テッポウセギの横材。隙間にコケ(苔)を詰め、赤土をのせる。
ヨコッタ 〔名〕ヨコッタニオウといえば、長いものを横にして負うことをいう(玉置川)。
ヨコテミチ
(横手道)
〔交〕山腹を縫う道(高津・上葛川)。
ヨコバナ 〔衣〕ゾウリのマエオに対して横緒。クツオとも(上葛川)。
ヨゴミ 〔植〕蓬(ヨモギ)。ユモギともいう(小坪瀬)。
ヨゴミモチ 〔食〕蓬餅[よもぎもち]。草餅。
ヨサ 〔時〕夜。時に。ヒトヨサ(一晩)、フタヨサ(二晩)と勘定する。
ヨザトイ 〔形〕目ざとい。メザトイ。イザトイ。
ヨサリ 〔時〕夜。ヨーサ、ヨーサリとも。
ヨシカワオドリ 〔芸〕盆踊りの一つ(上湯川)。
ヨシギ 〔植〕葭[よし]の茎(山天)。
ヨシコノ 〔芸〕
ヨジムル 〔他〕ひとところに寄せ集める。ヨジメル。
ヨジメル 〔他〕→ヨジムル
ヨセガリ
(寄せ苅り)
〔農・村〕友達などと一緒にクサ苅りをすること(小山手)。「草のかりくち今日しておいて、明日は殿御[とのご]とよせがりに」小山手の草苅唄。
ヨセジカ
(寄せ鹿)
〔狩〕鹿のタケリ(さかり)の頃、シカブエで鹿を誘き寄せて捕ること(小坪瀬)。 →フエシカ
ヨソイキノフタコネリ 〔衣〕他所行きに作った草履で、美しい2色の布で巻く。特に若い女向き(重里)。
ヨタンボ 〔体〕酔倒れ。「そんなにヨタンボになるまで飲まなくてもいいのに」。
ヨツエダ
(四つ枝)
〔狩〕猟獣の四肢。エダは肢。
ヨツギサマ
(世継ぎ様)
〔年〕大晦日の夕方、クドに突っ込んで正月3日まで保たす。(玉置川)。
ヨツギボタ
(世継ぎ榾)
〔年〕ゼニボタ、セツボタに同じ。旧年から新年まで火を保たせて子々孫々の継続に掛ける(上湯川・今西)。 →ゼニボタ  玉置川ではヨツギサマという。
ヨツヂ
(四つ乳)
〔衣〕四つ乳の草鞋。特に道中用(谷垣内)。筏師は二つ乳の草鞋をはいた。
ヨッピトイ 〔副・時〕よっぴて。一晩中。ヨガナヨッピトイ。
ヨッピテ 〔時〕一晩中(松柱)。
ヨツメ
(四つ目)
〔農〕四つ刃の備中鍬。用途はミツメ①と同様(玉置川)。
ヨテ 〔体〕得手。好み。ヨテヨテ。好き好き。
ヨド 〔住〕ユルリに火を焚き付ける時に火口(ほくち)にする細かい柴。ヨドロともいう(内原字栗平)。 →ヨロ①
ヨトギ
(夜伽)
〔葬〕お通夜。 →トギ 死者に猫を近づけないためにするのだという(谷瀬)。
ヨトリ
(夜鳥)
〔動〕夜鷹(ヨタカ)。クワタタともいう(小坪瀬)。 →クワタタ
ヨドロ 〔住〕焚きつけの細かい柴。ヨド、ヨロともいう(内原栗平)。上湯川ではヨンドロ。
ヨナオリイケンクドキ
(世直り意見口説き)
〔芸〕
ヨナカノハットキ 〔時〕夜の夜中。深更[しんこう]。「こんなヨナカノハットキに何しとるのか」
ヨナキ
(夜泣き)
〔産〕
ヨナベ 〔労〕夕食後、就寝前までにする仕事。縄綯[な]い、草鞋づくり、繕い、茶揉み、ゼンマイ揉み、藁たたき。ヨナベで月明かりを頼りにハタウチをした者もいた。その他に鋸の目立て、山道具研ぎなどもあった。
ヨノシ ①(余の衆)〔代〕ほかの人(内原)。 ②〔代〕ヨノシラ、われわれ。「そんなことヨノシラ知らんぞ」。
ヨノナカ 〔芸〕
ヨノノ 〔代〕ほかのもの。別のもの。他所のもの。
ヨバイ 〔婚〕よばい。サヨバイともいう。ヨバイド=ヨバイシ=夜這いにゆく者。
ヨバイド 〔婚〕よばいする人。
ヨボシ 〔衣〕烏帽子(竹筒)。
ヨマス 〔他・食〕麦を炊く前に浸す(ヨマシムギ)。
ヨメイリ
(嫁入り)
〔婚〕
ヨメカツギ 〔楯〕娘の親が承知しない時は、若者の仲間がしめしあわせて娘を盗みに行った。娘が同意の場合が多かった。そのあと然るべき人を間に立てて話を決めた(上湯川寺垣内)。
ヨメザムライ
(嫁侍)
〔婚〕嫁入りの時、嫁方の仲人役として連れていく男の人(今西・神納川)。 →ヨメザモライ
ヨメザモライ
(嫁侍)
〔婚〕嫁方からついて来て、式の進行役を勤める人。嫁方の親戚の男の人が勤める(松柱)。
ヨメシ
(夜飯)
〔食〕夕飯(上葛川)。(昔はヒズと言った-谷瀬)。
ヨメジョウロ
(嫁上臈)
〔婚〕嫁入りについて来る女の子(嫁女の妹とか姪など、学校あがりくらいの子一人)(松柱)。
ヨメツレ
(嫁連れ)
〔婚〕結婚式当日、先ず聟[むこ]が仲人・タルモチと共に嫁方に赴いて挨拶すること。カドイデの祝いの後、嫁一行を伴って来る(上葛川)。
ヨメナ 〔植・食〕ズイナ(落葉潅木)。芽は食えるという(谷垣内)。(『吉野郡名山図誌』)。旭ではイメナという。
ヨメヌスミ
(嫁盗み)
〔婚〕→ヨメカツギ
ヨモギ
(蓬)
〔植・食〕
ヨラ 〔時〕夜。
ヨラグ ①〔自〕揺らぐ。揺れる。 ②〔他〕揺する。「そんなにヨラグなよ、らくさげない(うるさい)」。
ヨラゲル 〔他・食〕麦を湿して一旦搗いたあと、干してまた搗き直すことにいう(内原字栗平)。
ヨリセ 〔産〕座産の際に凭りかかった藁・米俵・蒲団など。足を伸ばしたら悪いと言って10日も12日もこうして眠った(内原)。
ヨリヨウ
(寄り合う)
〔自〕寄り集まる(谷垣内)。
ヨロ ①〔住〕柴にしてくべるハネ(葉)付きの小枝(松柱・杉清・重里)。上葛川・内原字栗平ではヨドまたはヨドロ、上湯川ではヨンドロ。 〔注〕焚物としての「シバ」という用法は新しい。 ②〔農〕豆など蔓物の手として立てる細い竹木。
ヨロコビ
(慶び)
〔社・婚〕①慶事[けいじ]。お目出度。ウレイ(憂い)に対していう(谷垣内)。 ②お祝い。出産のお祝いとして金品を贈ることなど。
ヨワクタイ 〔形〕意気地のない。弱い。
ヨンドロ 〔住〕焚付けの細い柴(上湯川)。
ヨンバリ 〔体〕(夜いばり)。寝小便(田戸・込之上)。
ヨンベ 〔時〕昨晩。ゆうべ。エンベとも。