「ワ」

ワイダシ 〔体〕解熱[げねつ]。
ワカ 〔農〕田を起こしてゆく筋。畑を打ってゆく筋。一巾[はば](山天)。 →ハカ
ワカイシ ①〔村〕若い衆。若者。若者仲間。 ②〔動・忌〕猿の忌詞[いみことば]。ヤマノワカイシとも(田戸)。
ワカイシノアソビ
(若い衆の遊び)
ワガエ
(我が家)
〔代〕自宅(竹筒)。ワンガイ、ワガイとも。
ワカショウガツ
(若正月)
〔年〕正月15日、シラカイ(白粥)を炊くからだともいう。カキノキマツリをし、シメナワを焼く(谷瀬・旭)。
ワガト 〔代〕自分で、自ら。
ワカナノカイ
(若菜の粥)
〔年〕七草雑炊(上葛川)。
ワガノ 〔代〕自分の(上葛川)。ワンガノともいう(七色)。
ワカバ
(若葉)
〔植・年〕正月に飾るユズリハ。正月神を祭る時は葉柄[ようへい]の赤いワカバ、送る時(正月15日)は白いワカバ(イヌワカバ、シロワカバ)を用いる(西川区)。ショウガツシバと呼ぶ所も多い。 →ショウガツシバ
ワカビ
(若火)
〔年〕元日に初めてユルリにツケビ(点火)すること(上湯川)。
ワカミズ
(若水)
〔年〕元旦の若水。ハツミズ(初水)ともいう。若水を汲みにいくことをワカミズトリという。出谷北部の松柱日裏の場合、元旦の4時頃、5本くらい束ねたマツノタイ(たいまつ。「末代」に通ずる。一本マツはたかれんという)に新たに擦った火を点け、主人自らイド(水槽)へ赴き、米と塩を白紙に包んでヒネッたハナガラをイドにはめ、「新玉の年の初めに杓とりて、よろずの宝みな汲み取る」と、唱えて3杓汲んで持ち帰り、雑煮に入れる。マツノタイの燃え残りを残しておいて、ノヤキの時に、これで点火すれば火がアマラン(燃え広がらぬ)。
ワカミズトリ
(若水取り)
〔年〕若水迎え。
ワカヤマフミ
(若山踏み)
〔年〕正月4日の初山仕事。紙のキリサゲ(幣)と小餅1箇を半紙に包んでカンジョリ(観世縒)でひねったものを幾つも作って、自家の山に限らず、どこの山でも道の上に向けて木の枝に縛ってゆき、「今日はワカヤマふみました」と言う。帰りにシバを印だけ拾って来た。こうしておけば一年中山へ行っても災難がない(竹筒)。 →ヤマハジメ
ワガラト 〔副〕一人一人勝手に。「ワガラト拝む」。
ワガル 〔自〕曲がる。vtワゲル。
ワカレバチ
(別れ蜂)
〔動〕巣分かれした蜜蜂群。ワカレバチは刺してこない(旭)。
ワキ
(脇)
〔筏〕筏三ハバをモヤウ場合、左側のハバ(平谷・猿飼)。
ワキイカダ
(脇筏)
〔筏〕モヤイイカダにする際、ホンイカダの両脇にハナを下げてくっつける筏(字宮原)。 →ワキ
ワキゴ 〔体〕脇臭。→ワゴ
ワキザ
(脇座)
〔住〕ユルリのキシザの向かいの座。客人の座(上湯川)。
ワギタマル 〔自〕曲がる。俯[うつむ]く。ワギナルとも。
ワギナル 〔自〕曲がる。俯[うつむ]く。ワギタマル。
ワキミズ
(湧水)
〔地〕泉。フキミズともいう(字宮原)。
ワグラ 〔住〕ワグラクム=胡座[あぐら]をかく(迫西川)。
ワゲ 〔衣〕「曲げ」から、髷[まげ]。
ワゲハサミ 〔製〕ワゲモノ(曲物)を作製する際、ヘイだ桧などを水に浸けて煮き、この仕掛けに挟んで締めて望みのようにワゲ(曲げ)、2~3日おけば外しても、そのままの型になるから、これを桜の皮で綴じる。桧または樫材2本を使った単純な仕掛け。
ワゲモノ 〔製〕曲物。メッパ(ワッパ)、シャコ(柄杓)など。製法についてはワゲハサミ参照。
ワケル 〔他・狩〕シシやシカを腑分けする。先ず皮を剥ぎ、それを一旦かぶせて、細かく切ってゆく(出谷)。
ワゲル 〔他〕曲げる。ワゲは髷。ワゲモノは曲物。 〔自〕ワガル。
ワゴ 〔体〕脇臭。ワンゴ、ワキゴとも。
ワサ ①〔狩〕罠[わな](各地)。 ②〔農〕ツクリモノ(作物)が病気でだんだん枯れてくる現象。ワサクル(来る)。イラに同じ(上葛川)。バサともいう(上野地)。
ワザ 〔名〕崇り。「水神様がワザしている」。ノドヒカリはヒネルとワザをする(出谷)。
ワサウエ 〔農〕初田植え(上湯川寺垣内・迫西川)。寺垣内では、この日のヒルメシを炊くのに正月2日のヤマハジメに伐ってきた柴を焚く。山天ではウエゾメという。
ワザクレ 〔副〕つれづれなるままになすこと。戯れになすこと。いたずらなること。わざとらしく、わざわざの意。
ワサビ
(山葵)
〔農・食〕
ワシダカ
(鷲鷹)
〔動〕鷹[たか]の一種(松柱)。
ワタ
(棉)
①〔農・衣〕棉。 ②ハラワタ。臓腑[ぞうふ]。
ワダ 〔地〕①川筋の大きく淀んだ所(竹筒)。 ②窪地。
ワタイレバンチャ 〔衣〕冬向きの綿入れのハンチャ。
ワダコ 〔運〕同種の荷を2段に重ねて負う。「ワダコにする」。ウワヅケに同じ(池)。
ワタナ 〔植・食〕「谷桑、出谷方言。ふさ桜なり。この新芽をゆがき(湯をかけ)食用にす。また茶の如く乾かして用う。この葉またゆびく時、手を入れれば苦しという」(『吉野郡名山図誌』)。
ワタマイムシ
(綿繭虫)
〔動〕天蛾(那知合)。
ワタリト
(渡処)
〔運〕川の渡渉点(上葛川)。
ワッパ 〔食〕弁当用の曲物。メッパに同じ、北山川筋ではこう呼ぶことが多い。神下宇田戸の場合、大きいオオワッパ(主食用)と小さいサイコ(サイコワッパ)(お菜用)とあり、ウチガイに入れて肩からカタスキ(はすかい)に負う。蓋をオヤ、みをコという。共に同じくらいの探さ。仕事の激しい時や大食漢はオヤの方へも八分目ほど主食を詰め、コと合わせてもった。これをヒキウスツギ(小原ではヒキウスベントウ)と言った。
ワニル 〔自〕ワニワニ歩く(歩みざまの通常ならざること)。鰐足[わにあし]。びっこを引く。
ワビゴト 〔信〕神さんにお願いして叶えばお礼を言上すること。ワビゴトスル(上葛川)。
ワヤ 〔形〕目茶苦茶。
ワヤクチャ 〔形〕→ワヤ
ワラグツ
(藁沓)
〔衣〕雪道ではいた。足首まである藁製の沓(上湯川寺垣内)。「庚申の晩はワラサバキするな」。
ワラジ
(草鞋)
〔衣〕筏師は専らワラジをはく。草履は流れ易いからである。
ワラスクダ 〔農〕藁のはかまをスグッたもの。フスマ(紙衾)に入れたりした。
ワラスベ 〔農〕わらしべ(竹筒)。
ワラタタキイシ
(藁叩き石)
〔製〕土間の一隅に埋めて、ワラ仕事のためのワラを打った。
ワラタタキヅチ
(藁叩き槌)
〔製〕横槌。友引の日の葬式には、この槌を紐で結わえて二人でナカドッて(二人で担いで)、棺と同様に葬る(上湯川)。家に死者が二度続けば、三度目を避けるために墓にこれを埋める(西川)。風が強くなると、この槌を軒から吊り下げて、「空を通れ、空を通れ」と唱えた(上湯川)。
ワラビ
(蕨)
〔植・食・呪〕春先、早蕨を摘んで食べ、また特にコンキュウ(飢餓)の時には、その根(ワラビネ)を掘ってキゴ(キンゴ)(澱粉)をとった。蕨の黒い筋で綯[な]った縄をスジラナワという(上湯川)。蝮蛇(マムシ)と関連した説話がある。
ワラビナ
(蕨菜)
〔植・食〕食物としてのワラビ(谷垣内)。
ワラビネ
(蕨根)
〔植・食〕ワラビの根。昔は飢餓の時に女たちが一日がかりで、随分遠方まで掘りに行って担い戻り、搗き砕いてキゴ(澱粉)をとった。
ワラミシロ
(藁筵)
〔住〕
ワラミノ
(藁蓑)
〔衣〕藁製の簑。みな自家で作った。腐りが早く、保ちが悪い。
ワリ
(割)
〔林・経〕大きさによる木炭の分け方の一つ。 →コマル(小山手)。
ワリキ
(割り木)
〔住〕細く割った薪。ワレキ。ワルキ。
ワリコミ 〔筏〕筏用語。
ワリナ
(割菜)
〔食〕里芋のズイキを割って(薄皮はとる)、幾本も束ねて藁で葉の部分を括[くく]ってハデバなどに掛けて乾した。男たちも作り、昔は随分買いに来たので、これを正月酒に替えて飲んだ。短い竹筒(たけづつ)の一方の切り口に麻糸を張って、これにズイキを押し込んで細く割った。
ワリナメシ
(割り莱飯)
〔食〕ワリナを炊き込んだ飯。勿論、節米のため(玉置川)。
ワリナワリ
(割り菜割り)
〔食〕
ワルイキ
(悪行き)
〔名〕物事が悪い方へ向いてゆくこと。
ワルキ 〔住〕割木。薪。ワリキ、ワレキとも。
ワルサ
(悪さ)
〔名〕①いたずら。悪い事。 ②腕白。悪戯[いたずら]っ子。
ワルッポ 〔人〕いたずら(那知合)。
ワルボタエ 〔名〕悪ふざけ。
ワレイチガケ 〔副〕我れ先に。われがちに。
ワレキ
(割木)
〔住〕細く割った薪。ワリキとも。
ワロ 〔代〕人を親しみ、また罵って、奴、野郎。
ワロウ 〔族〕男。
ワンガイ 〔代〕我が家。「ワンガイのシ(衆)ら、どこへ行ったい?」。ワガエとも(竹筒)。
ワンガノ 〔代〕自分の。ワンガノウチ=我が家(七色)。一般にはワガノ。
ワンゴ 〔体〕脇臭。→ワゴ