「セ」

セー
(瀬)
〔地〕流れの速い区間。
セーガブ 〔動〕川底に棲むガブの一種。脂がきつい(田戸)。
セーキョール 〔i〕よく咳が出る状態にいう(串崎)。
セイ 〔名〕威勢。張り合い。
セイオクリ 〔言〕順送り(に責任をもつこと)。「子が親に孝行するのはセイオクリだ。」
セイギリ 〔副〕精一杯。根かぎり。
セイコウ 〔名〕仕上げ。竣工。田をコナシ上げてもセイコウの祝いをする(今西)。シュッタイに同じ。
セイコウイワイ 〔名〕何事でも仕上げの祝い。シュッタイイワイ。
セイジ 〔住〕母屋の土間を上がった所の、ユルリのある12畳の部屋。昔は、その隅にクドがあり、その隣に板間の台所があった(谷瀬・宇宮原・旭字迫)。カッテという所もある。
セイタ 〔林〕丸太から板を取った挽[ひ]き残りの部分。
セイダァー 〔副〕精出して。大いに。盛大の訛り。「セイダァーせえなー、夕方までによう終わらんぞ」。
セイネンヤマ
(青年山)
〔社〕青年団がカブヤマの一部を借り植林、下刈りなど手入れをし、成木を売って、団の費用に充てた。玉置川では公民館(クラブ)を建てた。
セイボク
(成木)
〔林〕植林した木が成長して伐採可能になることをセイボクスルという(谷瀬)。
セイモン
(誓文)
〔名〕セイモンタテル=起誓文を書く。
セガイ 〔名〕ふさぐ。「グチナワが道をセガイスル」。 〔注〕セガウ-高知では差し支える。岩見・周防・大分・福岡の一部では、「いじめる」「さまたげる」の意味である。
セガエル 〔他〕堰止める。「流木が川をセガエて畑に水が入った」。 →セガイスル
セガタ
(瀬肩)
〔地〕セー(瀬)の肩。セーの始まる部分。
セキ ①〔地〕谷の一番奥の地域。「迫西川のセキまで」「神納川ゼキ」。 ②〔名〕セキガシレル=程が知れている。たいしたことはない。「えらそに言うてもセキ」。
セギ
(堰)
①〔筏〕テッポウセギ(鉄砲堰)の略。セギヲツク(築く)。 →セギダシ ②〔漁〕川漁のためのヤナの堰。
セキガキ
(席書き)
〔年〕書初め。谷瀬では、正月2日に限らず、ミソカ(大晦日)の日に何枚も書いて、良く出来たのをミソカに親戚などへ持って行けばトシダとて紙をくれた(旭も同様)。
セキカゼ
(咳風邪)
〔体〕風邪をひいてセク(咳く)状態(上葛川)。
セギシバ
(堰柴)
〔林〕
セギダシ
(堰出し)
〔林〕セギ①をツイで湛水し、トマエイタを抜いて水勢によって材木を押し流す作業。
セキト
(石塔)
〔葬〕墓石(谷瀬)。
セキヒ
(石碑)
〔葬〕墓石(谷垣内)。
セキユ
(石油)
〔住〕
セコ 〔狩〕勢子。特に犬を連れて獣を追い出す役(出谷・小坪瀬)。
セコメル 〔他〕責め伏せる。
セセナゲ 〔住〕台所の流し汁の溜壺(田戸)。下水溝。
セセル ①〔自〕愚図愚図言う。愚痴をいう。 ②〔自〕蚤[のみ]、蚊などが騒ぐ。「夕ベ蚤がセセッて寝られなんだ」。 ③〔他〕つつく。こせつく。非をあばく。 ④〔他〕責め立てる。「あそこのババはよく嫁をセセルとーよ」。 ⑤〔他〕いじりとる。「サイメンをセセル」=サイメンセセリ。
ゼゼル 〔自〕①舌がもつれる。「中風がゼゼッとる」。 ②風邪をひいて、喉がゼイゼイいう。
セタ 〔漁〕川底に木の杭を2尺置きくらいに打ち込んで割り竹を編付け、流れを断ち切り、一方を1間ほどあけて、モドリを漬ける。落鮎を狙う(宇宮原)。
セタグ 〔他〕①せかす。せきたてる。催促する。 ②いじめる。
セタロウ 〔他・運〕直接、背に負うて運ぶ。セッタロウ。セッタラオウともいう。単にオウともいう。小原などでは、カロウという。
セチガレル 〔受〕叱られる(田戸)。「悪さしょったら、セチガレルゾ」。
セチギ
(節木)
〔年〕セチボタのほかに、年の暮れ近くに良い木(カシ・バベなどのカタギ)を選んで、キナヤ(木納屋)にとっておいて、セチボタとともにユルリやクドで焚く榾木(上葛川)。
セチゴウ 〔他〕①手を出す。相手になる。「犬がグチナワ(蛇)にセチゴウ」(上葛川)。 ②あてがう。「アイドリ(囮鳥)一つセチガシてみようか」(上葛川)。 ③せがむ。せっつく。 ④叱る。怒る。 受身形はセチガレル。
セチボタ
(節榾)
〔年〕ゼニボタに同じ(谷垣内・玉置川・上葛川)。 →ゼニボタ
セチン 〔住〕雪隠。大便所(字宮原)。センチと呼ぶ所が多い。
セツ
(節)
〔農・暦〕暦の節。「セツを見て種播きする」。
セッキ
(節季)
〔年〕
セツギ
(背接ぎ)
〔住〕踏み台。フミツギ。
セックモチ
(節句餅)
〔年〕三月上巳の蓬[よもぎ]入りの菱餅(上葛川・松柱)。
セツジ 〔年・職〕セツズイに同じ。
セッショウニン
(殺生人)
〔狩〕猟師。
セツズイ 〔年・職〕「節搗き」の訛り。正月前に米は勿論、雑穀類を精白し、また粉に碾[ひ]く(コハタキ)作業(松柱・今西・内原・谷垣内)。セツズイスル。セツジ、セツヅキともいう。
セツダ
(節田)
〔農〕セツに田植えするとサカ(出来)がよい。これをセツダという(山天)。
セッタラオウ 〔他・運〕→セタロウ
セッタロウ 〔運・動〕直に背に負う。セッタロウて行く。セッタライ(負い)(旭・上葛川)。負わすはセッタラワス →セタロウ
セツヅキ
(節搗き)
〔年・食〕セツズイに同じ(今西・竹筒)。 →セツズイ
セツブン 〔年〕上湯川大桧噌では、柊と魚の頭を入口に挿し、豆を炒って食べ、また撒いて鬼を追った。昔は、この晩、鉄砲をうち、竹をハシラカシた。オニノフングリツキと焼いたイワシの頭を杉・桧の箸に挾んで、各棟の戸袋や入口に挿す。暮方[くれがた]、炒豆を一升枡に、小石を五合枡に入れて、雨戸を閉め切って撒く。豆を炒るとき、柊の葉をユルリにくべて各月の天気を占い、またフシンする人は、この月に縄張りをする。この日は、何をしても崇りがない。(上湯川寺垣内)。 →トシコシ
セト 〔地〕谷間の狭まった所。
セド
(背戸)
〔住〕家の裏手。ウラ(裏)ともいう(竹筒)。竹筒ではキシの語はない。
セドノハタケ
(背戸の畑)
〔住・農〕家の裏手、即ち直ぐ上の畑(竹筒)。
セナカアテ
(背中当て)
〔運〕物をオウときに背中に当てるもの(谷垣内)。 →サンダワラ
セナカオビ
(背中帯)
〔衣〕帯のお太鼓。
セナカミノ
(背中蓑)
〔衣〕シュウロやスゲで作った背巾より、やや広めの蓑。下苅りなどの作業に便利だった(五百瀬)。
ゼニカズラ
(銭蔓)
〔植〕マメシダ →ゼニボタ
ゼニグサ
(銭草)
〔植〕マメシダ(谷垣内・玉置川)。
ゼエゴケ
(銭苔)
〔植〕マメシダ。上湯川・上葛川では、ゼニゴケを正月中はむしらない。
ゼニツタ
(銭蔓)
〔植〕マメシダ。
ゼニボタ
(銭榾)
〔年〕マメシダ(ゼニカズラなど異名が多いが、すべて「ゼニ」の語がつき、銭に見立てて縁起を祝う)のなるべく沢山ついたカシ榾(ゼニボタ)を山から丁寧に持ち帰って、大晦日の晩から正月中ユルリで燃やし続ける(出谷・迫西川・小坪瀬・小山手・西中)。旭では、この風なし。 →ホタマツリ
※ヨツギボタ(上湯川・今西)、セツボタ(谷垣内)、ショウガツボタ(松柱)などともいう。
ゼニボタン 〔植〕マメシダ(松柱)。
セバァ 〔形〕狭い。
セビ
(憚)
〔動〕セミ(田戸・竹筒)。セビをとれば、オコリ(瘧)がうつる(田戸)
セメウタ 〔芸〕
セメギリ
(責切り)
〔名〕ずたずたに切りさいなむこと(上葛川)。
セリ 〔地〕谷を詰めた稜線部。分水界(宇宮原)。
セリウオ 〔動〕繁殖期に入って変色したアメノウオ(玉置川)。
セリカス 〔動〕産卵を終えた雌のアメノウオ(玉置川)。
セル 〔自・動〕ツイた(繁殖期に入った)ウグイがひとところに寄り集まって、舞戯れる現象を「ウグイがセル」という。こんな時に、ヒッカケで釣り上げる(今西・武蔵・旭・玉置川)。
セワニン
(世話人)
〔婚〕仲人。ハシワタシともいう(神納川筋)。
セワヤキ
(世話焼き)
〔村〕各タイラ(小字)の小使い役。廻り持ち、または選出。今は商議員と呼ぶ。総会の招集を必要としない程度のことは、セワヤキが寄って決めた(竹筒)。
セン
(線)
〔林・交〕出材。運搬用の架線。
ゼンキ
(前鬼)
〔信〕下北山村大字前鬼。釈迦岳の東南に開けた古い山伏村。
センキュウ 〔植・療〕薬草の一つ。
ゼングミ
(膳組)
〔社・食〕配膳(那知合)。
セングリ 〔副〕順次。
センゴ 〔住〕マツノセンゴ。松のじん。脂松(杉清)。
ゼンコウジ
(善光寺)
〔葬・信〕ミタマサマは盆の間、信濃の善光寺へ行っている(竹筒)。
センズリ 〔体〕自慰。
ゼンセ
(全盛)
〔形〕「ゼンセにしとる」=盛大にやっている(旭)。
センゾサイ
(先祖祭)
〔葬〕
センチ 〔住〕雪隠。大便所(谷瀬・谷垣内・猿飼)。セチンともいう。
センチツボ 〔住〕センチ(大便所)の溜壺(狭飼)。
センチノカミサン 〔信〕厠[かわや]神(上湯川大井谷)。男女は言わず、盲の神様だから必ず声を出して入る。口を開けて受け止めて下さるから、唾を吐けば口が腐る。便所を綺麗にしておけば、綺麗な子が出来る。注連縄のさがりは、四・五・三(上葛川)。
センド
(先度)
〔時〕①先頃。せんだって。 ②たびたび。 ③長い間。
セントリ
(線捕り)
〔狩〕針金(セン)を輪にして、獣道(ノーテ)に仕掛け、首を締めて捕る法。
センニチバキ
(千日履き)
〔衣〕真の固い丈夫な草履。戦後流行して晴雨にかかわらず穿いた(田戸)。
センニョ
(千重)
〔植〕(桜など)八重(やえ)。
センネンガシ
(千年樫)
〔植〕カシの老木(上湯川)。
センバ 〔農〕
ゼンバコ
(膳箱)
〔食〕箱膳(旭)。
センバコキ 〔農〕
センバシ 〔林〕船場師?。材木師(『全国方言辞典』)。
センバスゴキ 〔農〕千歯稲こき。
センバリ 〔農・食〕からし菜。たかな。込之上は、昔一番よく作った。トウナとも。
センボンノボリ
(千本幟)
〔年・信〕トシトクダナに白紙を田楽のように刺したコザグシを12本(閏年には13本)立てる。これをセンボンノボリという(小坪瀬)。
ゼンマイ 〔食・植〕ワラビと並ぶ春の野草の一つ。
センミツ
(千三つ)
〔人〕嘘つき。
センモチ 〔林・交〕架線のケーブル運搬。
センヨ
(千重)
〔名〕八重咲き。センヨの桜。
センリコウ
(千里香)
〔植〕金木犀[きんもくせい]。竹筒の葛山平の中ほどにその大木があって、花期には遠くまで芳香を送り、また夏は村人に木陰を提供している。
センリバナ 〔農・食〕タカナ。トウナともいう。