「ニ」

ニイタ
(荷板)
〔林〕キンマの前部。一番ヌキと二番ヌキとの間に張る板。つけぬ場合もある(田戸)。
ニイナメサイ
(新嘗祭)
〔年〕
ニエコム 〔自〕やわらかくてくぼむ。
ニエル 〔自〕①煮える。 ②凹む。くぼむ。「あまり押すよって、この柿ニエてしもうた」。 ③腹が立つ。「腹がニエくりかえる」 ④内出血などして皮膚が赤黒くなる。
ニガイチゴ
(苦苺)
〔植・食〕ドヨウグサを苅る頃に実るイチゴ(谷垣内)。
ニガエ
(荷がえ)
〔筏〕(カリカワの時、キヌシの手配で)宿から宿へと荷を運んだ専門の職人。カリカワ人夫の荷といえば、簑・笠などの雨具や予備の着替えくらいのものだった。
ニカガキ 〔住〕垣の一種(小坪瀬)。
ニガダケ
(苦竹)
〔植〕竹の一種。スズコダケ。
ニカダロウ 〔動〕熊蜂。オオニカともいう(松柱・宇宮原・旭)。旭ではタロバチともいう。この蜂を家の入口に吊るしてマオドシ(魔威し)にする(松柱)。 →ニカダロウバチ
ニカダロウバチ 〔動〕熊蜂(出谷南部・松柱・今西・田戸)。この蜂の大きなものの頭を釦[ぼたん]にしてつけておけば魔除けになる(田戸)。
ニギリコミズシ
(握り込み鮨)
〔食〕スガタズシ(小坪瀬)。
ニギリダンゴ
(握り団子)
〔食・年〕白飯のお握り。ショウガツモドシ(正月15日)に魚を付けて供える(樫原)。
ニク
(肉)
①〔食〕肉。 ②〔動〕羚羊[かもしか]。隠語はキャッキャ(小坪瀬)
ニクノクド 〔動〕→クド② ニクノタチツボともいう。
ニクノタチツボ 〔動〕ニク(羚羊)が犬に追われると決まって逃げ込んで立つ岩壁の出っ張りなど。ここへ入り込めば、ニクはすっかり安心してしまうから、ぼんやりしていることの形容に「ニクみたいな」という。 →ニクノクド
ニゲゴヤ
(遁げ小屋)
〔村〕痘瘡[とうそう]が流行った時に谷奥などに仮設した隔離小屋(谷垣内)。高瀧などではホウソウゴヤという。
ニゴ ①〔農〕みご。稲の穂軸。 ②〔住〕塵芥[じんかい](『全国方言辞典』)。
ニゴリコギ 〔漁〕出水後の濁り水のとき、魚がミト(流心)を嫌って、ヘリの緩い所で舞うているような所へタモを入れて掬[すく]う捕り方(高津)。
ニザイ
(煮菜)
〔食〕煮〆。手をかけた丁寧なおかず。(なかなかおいしかった)(上葛川)。
ニシ
(西)
〔天〕西風。西からの雲(出谷)。
ニジ
(虹)
〔天・怪〕「ニジンタッタ、ニジンデタ」=虹が出た(串崎・那知合-河童との関係を言わぬ)。虹が立つことを竹筒では「虹がヒク」、東中・上葛川では「虹がフク」と言い、虹がヒケば、ガラボウ(河童)のイキ(息)だという(竹筒)。
ニシキタ
(西北)
〔天〕西北風。西北からの雲。冬に多いが夏にこれが来ればヒデリの兆し(出谷)。
ニシキヘビ
(錦蛇)
〔動〕ヤマカガシのこと。ノドヒカリともいう。水の神さん、または水神さんのツカイモノ(お使い)と言い、ヘビと言えばこの蛇のことを指す(小坪瀬)。
ニジクル 〔他〕①なすりつける。塗りつける。「そんな仕事、俺にニジクルなよ」。ニジルとも。 ②踏みにじる。 ③縁談や問題の解決をつける。
ニシヒガシ
(西東)
〔動〕蛹[さなぎ](那知合)。ゲンジロウムシとも言う。
ニシミナミ
(西南)
〔天〕西南からの雲。長雨の兆し(出谷南部)。
ニジュウサンヤサマ
(二十三夜様)
〔年・信〕二十三夜待。 →ニジュウサンヤマチ
ニジュウサンヤマチ
(二十三夜待)
〔年・信〕この晩、月が出るまで坐っていれは、ウサギが悪さをせぬとて、ウサギの暴れる年はこの晩に月を拝んだ。(桑畑字果無)。
ニジル 〔他〕なすりつける(平谷)。ニジクル。
ニタ 〔他〕→ヌタ。
ニダシ
(煮出し)
〔食〕だしじゃこ(上葛川)。
ニチ 〔動〕蜂の一種。ツチネズミの巣穴に巣をかけ、蜜を作る(今西・田戸・旭)。
ニチゲツサマ
(日月様)
〔信〕カド(前庭)の見晴らしのよい所に1m前後の竹竿を立て、サカキを挿して日月を祭る。シモ(下)の病の時にオコシを洗って、「陽のあたる所に干さぬ」とリュウグァン(立願)すれば、効験[こうけん]がある(谷垣内・那知合)。
ニチリンサマ
(日輪様)
〔信〕①お日様。 ②ウヅキヨウカ(卯月八日)の花(ウツギが最上)は日輪様に上げる(宇宮原)。
ニチリンソウ
(日輪草)
〔植〕マツバボタン(那知合)。
ニツク 〔自〕(着物などが)似合う。
ニッテンサマ
(日天様)
〔信〕ニチリンサマ②に同じ。ハデグイに花立を取りつけ、サカキを立てて祀る(玉置川)。
ニドイモ
(二度芋)
〔農・食〕馬鈴薯(五百瀬・旭・上葛川)。チョウセンイモともいう。
※ニドイモ補-松山義雄(狩りの語り部)によれば、ニドイモは年2回収穫できるからではなく、馬鈴薯で一作あげたあと、もう一作ほかの作物-蕎麦でも大根でも収穫出来るという、二毛作の意から出た語だから、ニドイモは正確には早生種の馬鈴薯のことである。これに対し「秋イモ」と呼ばれるのは秋に収穫する晩生種の馬鈴薯の俗名である(伊那谷)。
ニドラ 〔住・農〕溶れ物の名(谷垣内)。
ニナイ
(担い)
〔農・運〕担い桶(竹筒)。特に飲用水を天秤棒で運ぶ桶。 →タンゴ
ニナイオーコ
(担い杠)
〔運〕天秤棒(谷瀬)。
ニナイオケ
(担い桶)
〔農・交〕→ニナイ。スギオケ、マサオケともいう(内原)。
ニナイガケ
(担い掛け)
〔農〕コエタゴ(肥桶)をニナイながらダル(下肥)を掛ける作業。傾斜地のことだから大変な作業であるが、これが出来ぬと一人前にならぬ(山天)。
ニナウ
(担う)
〔他・運〕オーコ(ニナイオーコ)(天秤棒)で担ぐ。
ニノジ 〔体〕頭のつむじが二つある場合にいう。こんな人は意志が強く、我を通す(那知合)。
ニノトリ
(二の鳥)
〔動・兆〕ヒーフーヒーフーと鳴き、この鳥が啼[な]けば人が死ぬという。繁殖期の木兎(ミミヅク)の声らしい(田戸)。
ニノマタ
(二の叉)
〔動〕角が二叉に岐れた鹿。
ニバンイノコ
(二番亥の子)
〔農〕旧10月の二の亥の日。上湯川・杉清では百姓の亥の子、今西ではアキンドの亥の子という。
ニバンウシ
(二番丑)
〔農〕土用に入って2度目の丑の日。田やナンバ、サツマなどのシツケをし、ナツモノもこの日までに片付けて、この日にムシオクリをした(上葛川)。
ニバングサ
(二番草)
〔農〕2度目の田の草取り。
ニバングチ
(二番口)
〔農・食〕コメより下で、スエ(屑米)より上の米。ハク(精白)にすれば、コゴメより上等になる(旭)。
ニバンゴエ
(二番肥)
〔農〕2月頃、ダル(下肥)をウッて(やって)、もう一度ナカウチする。
ニバントコ
(二番床)
〔筏〕筏の2番目(サキトコの次)のトコ。カジトリは、このトコに乗る。
ニバンヒッコミ
(二番引っ込み)
〔筏〕シモノリのモヤイイカダのうちの一ハバ。オヤヒッコミより3トコ下げて、これに吊る(田戸)。
ニバンヨ 〔林〕材木を四つに区切って、モトギ(株に近い端)に隣る部分。
ニブグチヤマ
(二歩口山)
〔村〕ムラヤマ(大字有林)の地上権を借りて植林し、伐採するとき、収益の二歩(20%)を大字に納める山(竹筒・高滝・上葛川)。
ニボシ
(煮干し)
〔食〕里芋、馬鈴薯、栗などを塩だけで煮詰めたもの(旭)。
ニホンヤマ
(二本山)
〔筏〕筏用語。
ニモチ
(荷持)
〔運〕チン(賃銀)をとって荷をモツ(運ぶ)運搬専業人夫。 →モチ
ニモツ 〔筏〕筏乗り用語。
ニヤウ 〔自〕①うなる。呻吟[しんぎん]する(古、によふ)。「風邪引きくらいであまりニヤウなよ」。 ②似合う。
ニヤス 〔他〕①煮る。 →ネヤス①。 ②痛めつける。どやす。「生意気言うとニヤスぞ」。強調してドニヤスともいう。 ③果物など傷ついて軟らかくなる状態。
ニヨウ 〔自〕→ニヤウ②
ニヨロット 〔副〕のっと。
ニラ
(韮)
〔植・療〕
ニレ
(楡)
〔植〕ノリノキともいう(出谷)。
ニワカズシ
(俄鮓)
〔食〕ナレズシに対して即製の鮨(小山手)。
ニワトリ 〔動〕鶏。鶏が病気になると、すぐ庚申さんに参る(足許に鶏を一つがい彫ってあるからである)(谷垣内)。牝鶏の背に雛が上ると雨の兆(松柱)。
ニンガツ 〔暦〕2月(竹筒)。
ニンク 〔村〕フシン(公役)のニンソクの出動費(小森)。
エンドウカズラ
(忍冬葛)
〔植〕スイカズラ。その根をゴモクユに入れる(谷垣内)。
ニンニク
(大韮)
〔植・療〕
ニンフ
(人夫)
〔林〕作業のヒヨウのこと。