「モ」

モーズ 〔動〕百舌鳥(モズ)。鳴き声からキチキチモーズ(西中・小坪瀬)。 →モズ
モウネン 〔信〕妄念[もうねん]。怨念。
モエクサシ 〔名〕燃えさし。燃え残り。
モエクベ 〔住〕もえさし。
モオコソ 〔副〕二度と。
モギゴバン
(麦御飯)
〔食〕麦飯(旭)。
モグラ 〔動〕もぐら(土龍)(上野地・川津・小井・小原・大野・小川・小山手・山手谷・猿飼・那知合・西中・小坪瀬・迫西川・松柱・出谷殿井・上湯川・桑畑・七色)。
モグラモチ 〔動〕もぐら(土龍)(長殿・旭・川津・高津・大野・折立・山手谷・猿飼・下葛川・谷垣内・重里・山手・西中・松柱)。ウグラモチとも。
モグル 〔vi・動〕モグラが土を盛る(玉置川)。
モザク 〔他〕こわす。ばらばらにする。モダクともいう(旭)。
モジク 〔他〕手で揉んで小さくする。揉み砕く。「人形、モジカンようにせいよ」(平谷)。ミジクとも。
モジケル 〔自〕毀[こぼ]れる。砕ける。捻[ね]じれる(西川・上葛川)。
モジリ ①〔衣〕上衣の一つ。フジギモノで作った(内原)。 ②〔筏〕→モジ
モジル 〔他〕ねじる(上湯川)。
モズ 〔動〕百舌鳥。ホトトギスと結んだ説話がある。鳴き声はキチット(松柱)。キチキチキチ(重里)。モーズ、キチキチモーズ、モンズともいう。
モダク ①〔他〕いじる。いじめる。 ②〔他〕こわす。ばらばらにする。訛ってモザクとも。
モタセ 〔植〕枯朽ちた木に生える軸のない茸。
モタラコイ 〔形〕うっとおしい。窮屈な。食物が胃にもたれる。「肩にすがるなよ、いかにモタラコイぞよう」。 →ムタラコイ、モッタラコイ
モチ ①(持ち)〔交〕ニモチに同じ(田戸)。 ②(黐[もち])〔植〕
モチアケビ 〔植〕アケビより時期が少し遅く、皮は赤い。口が殆ど開かぬ(玉置川)。
モチガイ
(餅粥)
〔年・食〕餅を入れたシラカイ(白粥)。正月14日に炊き、これでナリサンボク(果樹)を祭る(内原・旭)。モチノカイともいう。
モチカタ
(持肩)
〔葬〕葬列の棺の担い役(上湯川・今西・重里・葛川)。死者の次、三男とか特に血の濃い者の役目。
モチカチウス 〔食〕餅搗き用の竪臼。材は杉か五葉松(玉置川)。
モチカケギネ 〔食〕餅搗き用の杵。材はサルタノキかカシなど固いもの(玉置川)。
モチキビ
(餅黍)
〔農・食〕キビの一種で粘りが強い。モチナンバともいう(五百瀬)
モチグイ
(餅杭)
〔年〕カドマツを括[くく]って立てる椎の木の杭(出谷・内原・平谷・谷垣内・竹筒・玉置川)。 →モチダイ この枕を残しておいて地貰い(建物を建てるために土地の神様から土地を貰う-地鎮祭)の時に立てる(谷垣内)。
モチダイ
(餅台)
〔年〕モチグイに同じ(折立)。 →モチグイ
モチツキ
(餅搗き)
〔食〕
モチツキオドリ
(餅搗き踊り)
〔芸〕十津川郷の代表的民謡の一つ。昔は御造営の時だけ踊った。武蔵その他で復活した。
モチナンバ 〔農・食〕モチキビに同じ(五百瀬)。 →モチキビ
モチノカイ
(餅の粥)
〔年・食〕モチガイに同じ(谷垣内・高瀧)。モチノオカイともいう(高瀧)。 →モチガイ
モチノレイ
(餅の礼)
〔年〕正月松の内に径1尺もあるオカガミを持ってオヤの家(嫁の親里)の家へレイ(挨拶)に行くこと。1、2晩泊まって帰る。レイガエシ(返礼)は、その半分。それを持って14日にまた行く(内原)。
モチバナ
(餅花)
〔年〕繭玉[まゆだま]。昔は正月に神棚に飾ったことが記憶されている(上湯川大桧噌)。モチバナノキという木の存在は曽[かつ]てのモチバナの習俗の普及を示すものであろう。
モチバナノキ 〔植・年〕正月に神棚に飾った(松柱)。 〔付〕紀州の南野上ではリョウブを指す。 →モチバナ
モチホリ
(餅抛り)
〔信〕→ゴクマキ(玉置川)。
モツ ①〔動〕川魚の名。(上湯川大井谷)。カワムツのことか。 ②(持つ)〔運・他〕「持つ、所有する」の義のほかに、物を「運ぶ」ことに用いる場合が多い。スシクサをモツ、タルマル、米をモツ。
モツキ 〔衣〕腰巻。オカ(女房)のモツキ。フンドシとも(串崎・那知合)。
モッコ
(畚)
〔運〕普通の藁縄で編んだモッコのほかに、棕梠縄の網に1間余の竹を2本通して担架風にして、掻き出したマヤゴエを2人で畑へ運ぶ道具もモッコといった(小原・武蔵・上葛川)。(春はフゴとも読む)。
モッコヤエン
(春野猿)
〔運〕モッコを使ったヤエン。ハコヤエンに対していう。
モッタイナイモイヤシイカラ 〔諺〕「勿体ない」も実のところは(神仏への慣れからよりは)物惜しみ(イヤシイ)から出ている(那知合)。
モッタラコイ 〔形〕→ムタラコイ
……モテ 〔助〕……しながら。「歩きもて本を読む」。
モト
(元)
〔林〕材木の根もと寄りの側。ホボ(ウレ、スエ)に対していう。ヨツギボタ(セチボタ)をモトから燻[くす]べると「モトヲクウ」とて忌む(今西)。
モトキ
(元木)
〔林〕材木を4分してモト寄りの部分。反対の端はスエキ。
モトギ 〔植〕木の名。玉垣内のトウヤ神事(正月2日)には、この木で弓を作り、アマダケで矢を作る。オビヤバシラに吊るす弓はこの木で作る(谷垣内)。
モトキリヨキ
(元切り斧)
〔林〕
モドス
(戻す)
①〔他〕返す。 ②〔信〕送り返す。正月15日は正月の神様をモドス日。盆の16日にはボンをモドス(谷垣内)。
モトダオシ
(元倒し)
〔林〕樹木を根もとから伐り倒すこと(宇宮原)。
モトハリ
(元張り)
〔林〕樹木の根もとの張り出した膨らみ。これを削ってキリハン(切判)を入れた。
モトミツ
(元蜜)
〔狩〕蜂の巣の所在を突き止めるため、棒の先に塗って誘き寄せる蜜(今西)。田戸ではウケミツという。
モトヨリ 〔副〕前以て(今西)。
モドリ 〔漁〕魚を捕るためのモドリ。捕る対象や素材により種類が多い。南東部ではモンドリという。
モノアタリ 〔体〕食中毒。ナンテンの葉がよく効く(上葛川)。
モノヒマチ
(物日待)
〔信〕オヒマチ、庚申マチ、伊勢講など忌諱[きい]を伴う行事の総称(旭)。
モノモウ
(物申す)
〔言・年〕昔は年頭に「モノモウ」と言って訪れ、内から「ドウレ」と応じた。「モノモー」「ドレー」。(田戸・玉置川)。
モミオロシ
(籾下ろし)
〔農〕
モミナ
(揉菜)
〔食〕チシャナを手揉みにして、ジャコなど入れて酢で和えたもの。サナブリの晩には、ボタモチ(おはぎ)とモミナが必ず出る。苗がアオム(青らむ)ようにとの気持ちからである(山天)。
モミハチキ 〔農〕脱穀機。
モモ
(桃)
①〔食〕木の実の総称。トチノモモ(栃の実)(竹筒)。 ②〔動〕モモンガ(上葛川)。
モモアシ 〔食〕足のない膳(谷垣内)。
モモタブラ 〔体〕太腿。マタグラとも。
モモノハナザケ
(桃の花酒)
〔年〕三月節句に神に供えた桃の花を酒に入れて飲めば「腹にジャー(蛇)の子が宿っとってもなくなる」という(内原)。
モヤイ ①〔村〕仲間持ち。モヤイの株山(玉垣内)。 ②〔運〕舟を数えるのに2隻を単位として幾モヤイという(田戸・葛川筋)。 →ヒトモヤイ ③〔筏〕→モヤイイカダ(宇宮原)。
モヤイイカダ 〔筏〕紀州の本宮近くになると熊野川の川巾も広く、水量も多くなるので三ハバの筏をモヤウ。ホンイカダ(サキハナ)を真ん中に、あとの二ハバはハナ(鼻)を少し下げて、両者のサキトコの巾を半分くらいに縮めてくっつけ(ワキイカダ)、外した分の材木はホンイカダの上に積む(ノセキ)(宇宮原)。
モヤイハバ 〔筏〕ノリハバより1トコ短いもの。ノリハバの反対側に付ける(田戸・込之上)。チガイハバともいう(田戸)。
モヤウ ①〔他・運〕2隻の舟が組んで行動する。二つのものをつなぐ。殊に上りの場合(田戸)。  →ヒトモヤイ ②〔筏〕数ハバの筏を連結する(字宮原・込之上)。 →モヤイイカダ
モヨウ 〔自〕モヤウと同原の語。モヨウて……する。仲間で組んで……する。「モヨウて祭りをつとめる」=何人かのトウヤが一緒に助け合って祭りを勤める(高瀧)。
モリ ①〔産〕(守り)子守娘(樫原)。 →コモリ ②〔地〕(森)特に山の天辺の、こんもり茂った所。南部では山頂を指すことが多く、例えば天上山は、その北でも南でも天上森と呼ぶ。神社を載せる例も少なくない。高みの家には「モリ」という家名(ヤミョウ)が多い(重里)。 →モリヤマ
モリコ
(守り子)
〔村〕子守り(娘)(松柱)。
モリマワス
(盛廻す)
〔他〕祭事の甘酒など椀に盛って、次々と手渡しする(谷垣内)。
モリヤマ
(森山)
〔地・信〕特に郷の南西部で、森に蔽われた顕著な小山を指すが、必ずしも霊域ではない(重里串崎など)。下北山村にもこの例がある。但し重里の氏神森山神社は椎平森に、永井の天一神社は森山に、小山手の天神社は天神森に、小坪瀬の国常立神社は庵平森に鎮座する。北部の谷瀬の氏神八幡神社、高津の稲荷神社も森山の上に鎮座する。
モル
(盛る?)
〔他〕①「飯をモル」などのほかに、「酒をモル」といえば、祝いなどで酒宴を張ること。 ②摘み取る「豆をモル」。
モロブタ 〔食〕搗いた餅など広げる浅い木箱。
モロベタ 〔食〕モロブタに同じ(神下下葛川)。
モン
(門)
〔住〕
モンゴン 〔信〕呪文[じゅもん]、唱え言。
モンズ 〔動〕百舌鳥(上葛川・田戸・旭・字宮原)。旭ではモズ、キチキチモンズとも。 →モズ
モンドリ 〔漁〕モドリ。ウナギモンドリなど(田戸)。 →モドリ
モンパ 〔衣〕綿ネルの下着?
モンペ 〔衣〕新潟の人が、砂防工事に来てから使い始めた。(40年余り前)。元は紐付き。袴のように襞[ひだ]をとっていた。足首まであったからキャハンは要らなかった(谷垣内)。