「カ」

カー 〔副〕「つい」とか「何気なしに」ぐらいの軽い意味で「どうして、そんなことしたのや」「おらあ、カーした」などと用いる。特に西川区で良く使うので、他区の人が西川区のことを「カー組」という。
カーグミ
(カー組)
〔村・言〕
カーシン 〔食〕お菓子(竹筒)。 →カシン
ガース 〔動〕かけす(懸巣)(松柱・西川区)。他にガイス、ガエス、ガヤスなどと呼ぶ。
カーダルイ 〔形〕→カイダルイ
カート
(垣内)
〔農・村〕出谷では、老人が畑のことをこう呼ぶ。屋敷から下へ順にネキガート、ナカカート、ウラカート。屋敷から上へ順にキシガイト、ウエ。他地区でも類例が多い。 →カイト③。
カーモウ 〔副〕つい、何やかやと
カイ
(擢)
〔林・筏〕舟、筏用のものは、長さが7尺、目方は1貫くらいあり、1マイ、1マイと勘定する。習熟が難しく「口8町、カイ1里」と言った(込之上)。
カイガ 〔農〕まぐわ(耙)(東中・玉置川・上葛川)。昔は、爪は樫で作つた。 →カイガン。
カイカイヒキ 〔動〕6、7月頃沢山出て、カイカイと鳴く蛙(ヒキ)の一種(上湯川・松柱・宇宮原のカワズ)。カジカ(河鹿)か。
カイガリ
(痒がり)
〔体〕体中痒くなる病。ゴモク湯が良い(谷垣内)。
カイガン 〔農〕樫材の横木の下に鉄の爪の出たもので、牛に曳かせてカク農具。アラの後にカキ、土を砕いてどろどろにする(竹筒)。東中ではカイガ。
カイキンサマ 〔信〕樫原で祀られている古墓で、村の開祖だという。開基様か。
カイサマ 〔形〕→カエサマ
カイジャクシ
(粥杓子)
〔食〕茶粥専用のツボジャクシ。 →ツボジャクシ
ガイス 〔動〕かけす(懸巣)(重里)。
カイズワル 〔家〕「カトクヲカウ」に同じ。「カイズ、ワッて来た」(玉置川)。
カイゾメ
(買初め)
〔年〕小山手では、5、60年前まで、元日にカドアケに行った家へ、翌2目にまた出掛けて、20銭なり30銭なり出して、大根とか茶など、ありあわせた物を貰って来たが、大抵、昆布、鰯など包んで呉れた。これをカイゾメと言って、お金の使い初めだった。小原でも正月2日、子供が塩5合ぐらい持って来て「カイゾメに買うて呉れ」と言い、祝儀をやれば、塩を猪口一杯ぐらい置いて行った。
カイダシ
(買い出し)
〔農〕仔牛を買って来て、育てて売ること(谷垣内・竹筒)。
カイダルイ 〔形〕体中が虚脱状態になったような感じの形容。「カイダヨて歩けん」(上葛川)。カーダルイともいう。単にダルイとも。転じて「カイダルイ話じゃのう」は、物足りないという意味がある。
カイト
(垣内)
①〔村〕普通には大字(ジゲ)内の小字を指すが、大字内原では、各々孤立した内原・奥里・栗平の3小字をカイトと呼び、その下にクミがあり、ここではジゲと言えば、垣内を指す。 →カキウチ。 ②〔村〕屋敷、田畑(ヤマを含めぬ)を一括して、ヒトカイト(一垣内)と称し、「ヒトカイト売って出る」と言えば、皆売り払って退転[たいてん]すること(竹筒・東中・玉置川)。 →カトク。 ③〔農・村〕家の近くの畑をカイトと呼ぶ例は、カートに同じ。上の出谷の例でもウラカイト、キシガイトが見られ、小原でも屋敷の上の畑をキシガイト、下の畑をネキガイトという。
カイトウチ
(垣内内)
〔村〕バン内(上湯川・出谷)。
カイトヤマ
(垣内山)
〔柑〕部落共有林。
ガイナ 〔形〕ひどい。
ガイニ 〔副〕非常に(七色)。甚だしく、ひどく。「ガイニ寒いのーら」。
カイバ
(飼葉)
〔農〕牛の飼葉。
カイフ 〔林〕ホウチョウ(山刀)のこと(竹筒・天川村山西)。
カイマガリ 〔地〕河流が急に曲がっている所。
カイヨー 〔動〕鹿の鳴き声。
ガイラゴ 〔動〕おたまじゃくし。
ガイルゴ 〔動〕おたまじゃくし。
カエサ 〔形〕カエサマ。
カエサマ 〔形〕さかさま。裏返し。「キリモノ(着物)カエサマに着る」。カイサマ、カエサ、カエシマ、カシマなど同義語が多い。
カエシマ 〔形〕カエサマ。
ガエス ①〔動〕懸巣(上葛川・玉置川)。ガヤスとも。 ②〔人〕口喧[やかま]しい人についた渾名[あだな]。懸巣からの連想。ブリキ缶とも言われた(玉置川)。
カエデ
(楓)
〔植〕そのヒヨで寵を作る(出谷)。
カエリ ①〔住〕屋敷の裏側の石垣。カエリイシガケともいう(田戸)。 ②〔農〕田の上ェ(山)側の畦畔(カエリノマブ)または石垣(旭)。
カエリイシガケ 〔住〕屋敷の裏側の石垣(小坪瀬・田戸)。カエリとも。
カガミイシ
(鏡石)
〔葬〕埋葬した上に川原から持って来て載せる白石(上湯川寺垣内)。
カカリ 〔名〕はじめ、手始め、「先日のカカリ」。
カガリ 〔住〕煤[すす]。煤煙[ばいえん]。河童はカガリに弱い。カガル=煤が出る
カカリゴ 〔族〕長男(将来頼るべき子)(内原栗平・旭)。
カガル ①〔筏〕(縢る)筏のトコ同士を繋ぎ合わす。 ②〔自〕煤(カガリ)が出る。「ガガッて困る」(小坪瀬)。
カキ 〔農〕
カキウチ
(垣内)
〔村〕ジゲウチに同じ。昔、ジゲ(大字、垣内)のめぐりにシシガキ(猪垣)をしたからだという(神納川)。
カキダシ
(掻き出し)
〔製〕焼いた木炭を窯から掻き出す道具。長柄の、生(なま)の木の鍬(2尺×7寸)。田戸ではエブリという。
カキノキマツリ
(柿の木祭り)
〔年〕正月15日の成木責めのこと。白粥を供える(谷瀬・宇宮原・旭字迫)。キマツリと区別すること。
カキバ 〔筏〕鉄砲堰用語。
カキマゼ
(掻き混ぜ)
〔食〕豆腐、椎茸、干瓢などを入れた五目飯(上湯川・小坪瀬・玉置川)。マゼメシ(混ぜ飯)とも。
カギマワシ
(鈎廻し)
〔地〕川が直角に曲がっている箇所。例えば、神下の大渡の橋の下。
カギリ
(限り)
〔林〕(……カギリと使う)。ヤマ(山林)のサイメン(堺目)を示す、サコカギリ、オカカギリ、ミチカギリなどという。
カギン
(過銀)
〔村〕ソウダイブシン(総代普請)の折、タシバを所定の10貫目以上、総代の所へ持って行けば、超過分を金(カギン)でくれたので、みなキバッテて(頑張って)持って行った(谷瀬)。
カク ①(角)〔林〕角材。昔は筏材はすべてハツリヨキでカクにハツッて出した。 ②〔運〕特に数人で腰ぐらいの高さで水平に持って運ぶ(輿など)(上野地)。 ③筏をカク。編筏する(武蔵)。 ④〔他〕掻く。田をカク。シシが塒(カルモ=ねぐら)を作る。カルモカクという。 ⑤〔体〕食道癌、胃癌。
カクアンド
(角行燈)
〔住〕普通のアンド(行燈)。
カグサイ 〔形〕それぞれの獣肉に特有の臭気のあること。
カクシ 〔衣〕ポケット。
カクスベ
(蚊燻ベ)
〔住〕蚊遣[や]り。生(なま)の杉葉やコヌカをくすべた(谷垣内)。
カクゼン
(角膳)
〔食〕ベタゼンの一つ。胡桃[くるみ]の実のような脚が四つ付いている。(谷垣内)。
カグラ 〔住〕重い物を動かすために引綱を巻き付けて引き寄せる道具。
カグラマワシ
(神楽廻し)
〔芸〕獅子舞いの男。
カクラン
(霍乱)
〔体・病〕日射病。
カケ 〔名〕目方。
カケイ
(寛)
〔住・農〕掛樋。
カケイリ
〔芸〕盆踊りで、男と女が声のひっぱりあい、声のカケクラベをして楽しむこと(小原)。
ガケクラ 〔地〕断崖 →クラ。キリキリ。
カケズル 〔自〕かけまわる。
カゲゼン
(蔭膳)
〔年・信〕正月に神棚やホトケサン(祖先)やトコ(床の間)に飾る膳。祠掌が氏神さんへ参ってくれるから、家々でカゲゼンをするのだという(内原)。 〔注〕-食事時、遠隔地で働いている家族、或いは旅行中の家族があれば、その無事を祈って、あたかも本人がその場にいるように、食事が用意される。
カケダシ
(架出し)
〔住〕桟敷[さじき](小原・玉置川)。
カゲラ 〔地〕日蔭。
カケリ ①〔芸〕盆踊りの折のオオオドリ(大踊り)(松柱)。 ②〔住〕アマシダレ(雨垂落)から椽先までの間の軒下の一段高い土壇。
カゲラ 〔地〕日蔭。
カゲル 〔自〕月が山の端に沈むことにもいう(谷垣内)。
カコ 〔運〕舟夫(田戸)。
カゴ ①〔住・食・農・運〕篭。カンゴともいう。 ②〔狩〕(鹿仔)鹿の胎児。その皮でフエシカ(笛鹿)を作った(上葛川)。 ③〔運〕駕篭。特に怪我人や急病人を医者の居る場所へ運ぶ大字共有の駕篭。
カコイ 〔食〕例えば、ジャガイモなど貯蔵しておいたもの(上葛川)。 →カコウ
カコウ
(囲う)
〔他〕貯蔵する。保存する。芋などカコウておいたものはカコイ(ハコイとも)(上葛川)。
カゴム 〔自〕①意識的に体、腰をかがめる。かがむ。 ②年とって腰が曲がる。 ③寒気で指がかじかむ(武蔵)。
カサ 〔体〕梅毒。カサカキ(梅毒患者)。
カザ 〔名〕におい。「カザカグ」香で嗅ぎ分ける。
カサオドリ
(笠踊り)
〔芸〕盆踊りの一つ(松柱)。
カサス 〔体〕替える。「水をカカサんと」(水を替えずに)(小原)。
ガサツキ 〔人〕落ち着きのない人。ガサリとも。
カサネ 〔筏〕鉄砲堰用語。
カサネモチ
(重ね餅)
〔年〕正月の三重のオソナエ(鏡餅)(上湯川)。
カザリ
(飾り)
〔年〕注連飾り(上湯川)。
ガサリ 〔人〕落ち着きのない人。ガサツキ。vガサル。
カザリサマ
(飾り様)
①〔年〕正月に床の間やホトケサマ(先祖・仏壇)に飾るもの(竹筒)。 ②カドマツ用のサカキを山へ取りに行くことを「カザリサマ、ムカエニイク」と言った(玉置川)。
カザリナワ
(飾り縄)
〔年〕注連縄(内原)。
ガサル 〔人〕落ち着きがない。
カサワモチ 〔信〕氏神に供える大鏡餅(内原奥里)。
カシ
(樫)
①〔食〕その実。 ②〔食〕その材。
カジ ①〔職〕鍛冶。助人(三里山越)のカジ。田戸の中老人の話も参考。 ②(舵)木馬の舵木。 ③(舵)〔筏〕筏の舵。サキトコのシリにカンで取り付け、ニバントコに乗ったカジトリが操る。筏材よりも1尺ほど縮め(13尺5寸)、4寸丸太のスエクチの所を持ち良いように削って用いる。この棒をカジボウという。
カジカ
(河鹿)
〔動〕河鹿(今西)。
カシガモ 〔動〕鴛鴦。オシノトリ。オシともいう。
カシキ ①〔食〕家庭で炊事することもカシキスルという(谷垣内)。 ②〔林〕山小屋の炊事係。新入りの最年少者の役。但し、上葛川では年のいった男だった。 →シャクシマイ。
カジキ
(梶木)
〔林〕キンマ(木馬)の積材から1本だけ前へ突き出して、ウマヒキは、これにつかまって舵を取る。その先に竹の油壺を吊るす(田戸)。
カシゴ
(樫粉)
〔食〕カシの実を叩き割ってハタイて(粉にして)作った粉。熱湯でカイてオヤツにし、オカイサン(茶粥)に入れ、ナシやエベツ(サルトリイバラ)の葉に包んで焼き、またべた焼きにした。アワサずに(灰汁を抜かずに)茶粥に入れたりした。カシゴは何年置いても虫がタタぬから、コウゾクソガミのタテ(袋)に入れて、3斗も4斗も保存した(谷垣内)。
カシゴカク 蕎麦のように熱い湯でカイて食べる。
カシコイ 〔形〕ずるい。
カシズミ
(樫炭)
〔林〕ビンチュウ炭の一つで、カシの炭。
カシドリ
(樫鳥)
〔動〕カケス(上葛川、ガヤスとも)。
カジトリ
(舵取り)
〔筏〕筏のカジを取る役。ニバントコの先に乗る。河の状況の悪い箇所では、サキノリが代わることもある。
カシバト
(樫鳩)
〔動〕畑へは来ず、カシの実を好んで食うので、この名がある。カシの実の落ちる2月頃には、何百羽と飛来する(猿飼高森・松柱・小坪瀬・上葛川・高津)。羽色からアオバト、鳴き声からオアオという所もある。
カシボタ
(樫相)
〔住〕カシの榾。
カシマ
〔形〕さかしま。カエサマ。「着物をカシマに着る」。着物を裏返しに着る。
カジマクラ
(舵枕)
〔筏〕筏のサキトコのカジボウ(舵棒)を凭[もた]せるマクラ(田戸)。
カシモチ
(樫餅)
〔食〕カシコで作った餅。作り方はホウソウモチと同じ。 →ホウソウモチ。
カジモチ
(舵持ち)
〔運〕モヤイ船の場合、先の舟に乗って舵を持つ役。後の3人が綱で曳く。(ツナヒキ、ツナテ、ヒキコ)。マゼが吹く場合は後の舟の舳に立って、その舟全体を舵に使ったが、これには余程の熟練を要した(田戸)。
カシモリ
(樫森)
〔地・植〕カシの樹叢。食料源として重要視された(上湯川)。 →カシヤマ。
カシヤマ
(樫山)
〔地・植〕カシの林。食料源として伐らずに残した(竹筒)。 →カシモリ。
カシュツ
(課出)
〔村〕大字運営のための各戸への割当金(上葛川)。
カショウ 〔他〕①からかう。構う。「オノラ、女の子にカショわれんぞ」(平谷地区)。 ②いたずらする。
カシラ 〔体〕頭髪(平谷・上葛川)。
カシラガミ 〔体〕頭髪(西川)。
カシラヒゲ 〔体〕頭髪(西川)。
カジル 〔他〕鍬で土を起こす。耕す。
カシワギ 〔植〕アカメガシワ、ボンシバのこと(上葛川)。
カシワモチ
(拍餅)
〔農・年・食〕サンキライ(サルトリイバラ)の葉でオサソリを包んだもの。土用丑に田畑にマツル(上湯川寺垣内)。旭では、5月節句にも作る。
カシン 〔食〕菓子。カシンヤ(菓子屋)。
ガシン 〔名〕飢饉。コンキュウともいう。
ガシンドシ 〔名〕飢饉年。
ガシンマイ 〔食〕栃の実のこと。ガシン(飢饉)の年には米に代わるから(玉置川)。
ガスイト 〔衣〕綿糸の一種。
カズエル 〔他〕数える。
カズキ 〔衣〕被布。女の布のかぶりもの。カズク=かぶる。
カズク 〔他〕(頭巾・帽子などを)かぶる(内原)。
カスデ 〔体〕浅手。軽傷。フカデに対していう。
カズラ 〔植・筏〕フジ、クズ、シラクチ、アケビなどの蔓植物。または、その蔓のこと。編筏用のフジカズラを切りに行くことを「カズラタツ(断つ)」といった。西川では「カズラヒク」という。
カズラキリ 〔筏〕編筏用の藤蔓を切る作業。「カズラ タチニ ユク」という。
カズラシメ 〔林〕スラ(修羅)を組む場合、マキタテにウデギをカズラで括りつける際、弛みのないように締め付ける役をする杉、桧、雑木の小片(田戸)。
カズラタマ 〔筏〕→タマコ(田戸)。
カズラヒキ 〔林〕カズラ採取作業〔西川〕 →カズラタツ
カズラユキ 〔天〕フジカズラ(藤)の花盛りの頃に降る、時ならぬ大雪のこと(西中)。
カスル 〔他〕水など残り少なくなったのを汲み取ってしまう。「桶の水、カスッてしもうては困る」。
カセギト
(稼人)
〔村〕日傭人夫。ヒヨウ。
カゼノカミ
(風邪の神)
〔信・体〕庚申さんを祭れば風邪をひかぬ(竹筒)。
カタア 〔形〕実着な。信義を守る。
カタアテ
(肩当て)
〔運〕コエ(下肥え)などモツ(運ぶ)時に肩に当てる。
カタイッコウ 〔形〕頑固「そんなカタイッコウな真似するな」。
カタエ 〔名〕傍[かたへ](小坪瀬)。
カタカタ 〔動〕蝸牛[かたつむり](那知合)。
カタキ
(堅木)
(またはカタギ)
〔林・植〕カシ、バベ(ウバメガシ)などの堅い木。
カタギ
(担ぎ)
〔運〕→マタギ(叉木)(葛川筋)。
ガタギ 〔動〕直翅目の一種(田戸)。
カタグ
(担ぐ)
〔他・運〕肩に載せて運ぶ。かつぐ(内原)。
カタクマ 〔戯〕肩車(長殿・旭・谷瀬・上野地)。
カタゲル 〔他・運〕①肩にかつぐ。カタグ。 ②傾ける。
カタコウナア 〔形〕頑固な。
カタコウノユキフリ オオノノカゼフキ モリノヌクヌク〔林・天〕「片川の雪降り、大野の風吹き、森のぬくぬく」。大字大野の各小字の天候の違いを表現している。
カタスキガケ 〔運〕(ウチガイなどを)肩から脇へ斜めに掛けること(谷垣内・旭)。
カタタ 〔動〕蝸牛[かたつむり]。カタカタ。カタッターとも
カタチンバ
(片破)
〔名〕片方。片側。
カタッタ 〔動〕田螺[たにし](西川・那知合)那知合ではカタカタとも。
カタッター 〔動〕田螺[たにし]
カタツンムリ 〔動〕蝸牛[かたつむり](高津)。
カタツムリ 〔動〕蝸牛[かたつむり](旭)。串崎では殻ごと焼いて食べる。
カタデ 〔副〕「カタデない」。全然ないの意。「ケンライもない」ともいう(旭)。
カタハブキ 〔住〕山小屋など、片流れの建て方。ホンタテブキに対していう(西中)。
カタビキ
(肩曳き)
〔林〕キンマを人の肩で曳くこと。その際のキンマの長さは8尺5寸~9尺。ウシビキに対していう。
カタビラ
(帷子)
〔動〕蛇の脱け殻。財布に入れておけば金がたまる(旭)。
カタマエサガリ
(片前下がり)
〔衣〕着物の両前が不揃いのこと。「なんや恥ずかしい、カタマエサガリに着物着て」。
カタマル 〔自〕一箇所に集まる。他動詞はカタメル。
カタミ 〔村・労〕ユイ返し。テマガエシともいう(五百瀬)。
カタメル 〔他〕一箇所に集める。まとめる。
カタロ 〔怪〕河童。
カタンマ
(肩車)
〔戯〕肩車(三浦・下葛川)。
カチ 〔交〕徒歩。
カチカチ 〔形〕頑固な。真面目で意志が堅固な。カンカチとも。
カチニンボ 〔運〕専業のニモチ(担夫)(内原)。
カチワリアメ 〔食〕昔、玉置祭などに売りに来た飴。桶に入った飴をタカネでカチワッたもの(玉置川)。
カチンボ 〔運〕専業のニモチ(担夫)(竹筒・玉置川)。玉置川には専業はいなかった。
カツ 〔他〕(米麦・餅など)を搗く。強調してカチマワスという。
カツエド 〔言〕かつえた人。飢え人。「そがーな食べようして、まっことカツエドみたいな真似すんな」 →カツエル
カツエル 〔自〕餓える。餓死する。「一週間も食わんとおったらカツエて死んでしまう」。カツエて死んだ人の霊は、ダル(ザル)になる。
カツギ 〔農〕大きなカラウスの石臼だと1斗も搗けるが、分解できるように上下2段にし、上の輪状の部分をカツギという。底の部分はツボ(旭)。
カツグ ①〔他・衣〕(笠、手拭いなどを)かぶる。 →カズク 手拭いの場合、頭に巻いて、前へ三角に垂らす(内原)。 ②〔他・動〕オーコ(天秤棒)でモツ(運ぶ)。イノウ、ニナウともいう(旭)。 ③他人の責任を負う。 ④〔vt・体〕シモカツグまたはヒリカツグと使う。この場合は、子供についても言うが、特に老衰して大小便を洩らすことを言う。
カッコ ①〔農〕畑仕事や下刈りの時に腰に付ける蚋[ぶと]くすべ(上湯川)。西川筋、那知合などでは、カビという。 ②〔植〕ホタルブクロ(高津)。
カッコドリ
(郭公鳥)
〔動〕郭公(上湯川)。
ガッソウ 〔衣〕髪を長く伸ばした頭。オガッソウ、ガッソウハルとも。
カッタリ 〔食〕欅[けやき]皮製の煙草入れ。ヤローッコ(谷瀬)。
ガッタリ ①〔食〕カッタリに同じ(谷垣内・那知合)。 ②〔筏〕鉄砲堰用語。
ガッチドリ 〔動〕セキレイ、キセキレイ(田戸)。
カッテ
(勝手)
〔住〕カッテノマともいう。母屋の入口の大きな部屋。ダイドコロの間。ユルリがある(重里・迫西川・谷瀬・宇宮原・上葛川・竹筒・七色)。谷瀬・宇宮原ではセイジともいう。
カッテノマ
(勝手の間)
〔住〕→カッテ
カッテバ
(勝手場)
〔住〕ダイドコロ(内原)。
カッテモト
(勝手元)
〔住〕ミズタナ、クドのある板間。ナカノマの隣(那知合)。
ガッテンセン
(合点せぬ)
〔言〕承知できぬ。「そんなことをしたらガッテンセンぞ」
ガッポウ 〔言〕いたずら小僧。
カツラ
(桂)
〔植〕「桂千年、株絶えず」というが、この谷では少ない(上湯川)。
カマラシタジ
(鬘下地)
〔衣〕昔の老女の髷[まげ]の一つ。
カテ ①〔名〕ふち(縁)「机のカテ」。 ②〔運〕ふなばた(舷)(竹筒)。 ③〔地〕山の急峻[きゅうしゅん]なる地(吉野郡)。
カテギ 〔筏〕筏用語。
カド ①〔住〕前庭。 ②塀の外一帯をさし、前庭はニワ(上葛川)。竹筒では、カンドという。
カドアケ
(門明け)
〔年〕元旦の行事(上湯川・重里・今西・迫西川・谷垣内・平谷・折立・田戸・上葛川・猿飼)。上葛川を例にとれば、夜の明けぬうちに本家・分家、オヤ・コの間柄にこだわらず、一番近い家同士の間で訪れ合った。羽織袴姿で、餅一重ね、柿、蜜柑などにコエマツのマツダイ(松明)(マツダイは末代に通ずる)を添えて持参した。行けば直ぐに礼に来、先後(さきあと)も決まっていなかった。モノモライ(乞食)が来ないうちに、早いほど吉いといった。カドワケと呼ぶ所も多い。 →カドワケ
カドイシ
(角石)
〔住〕燧[ひうち]石。六方石(水晶石)(田戸)。
カドイデ
(門出で)
①〔信〕伊勢講代参者の出発と見送り(旭)。 ②〔婚〕嫁入りの出立。ヨメツレに行った婿方の一行が嫁方へ着いて挨拶のあと、カドイデとして嫁方の祝いがあり、そのあと嫁方の一行を伴って帰る。
カトク
(家督)
〔村・族〕家屋敷、田畑を含めた総称で、樫原などでは採草地とタキシバや焚物の山が必ずついてくる。墓もついてくることが多い。「カトクヲカウ」と言えば、これらをそっくり買い取って入居することで、相続とは関係がない。玉置川では「カイズ ワッテ」。 →カイト②。
カドタ 〔農〕家のすぐ側の田。
カドマツ
(門松)
〔年〕正月前に山へムカエに行く。正月様迎えである。屋敷の入口に一対立てる。 →カドマツムカエ。但し、小原など、自家の山に松がなければカドマツを立てず、主にサカキを立てる。玉置川では、玄関前に高さ2mくらいのサカキを3m余隔てて2本立て、間にシメナワを張り、これをカドマツといい、これを山へ採りにゆくことを「カザリサマ迎えに行く」といった。
カドマツムカエ
(門松迎え)
〔年〕カドマツを採りに行く時は、「ムカエテクル」という所が多い。迎えて来る時は、決して藤(不治、不吉に通じる)で結わぬ(田戸など)。谷垣内などでは、これをショウガツムカエという。
カドマツオクリ
(門松送り)
〔年〕カドマツに餅や柿を添えてアキノホウへ持って行く(正月3日)。モチグイは15日に抜いて川へ流すか焼くかする(内原)。カドマツモドシとも。
カドワケ
(門明け)
〔年〕カドアケの訛り(西中・重里・小坪瀬・小山手・玉垣内・出谷・五百瀬・樫原・小原・猿飼高森・松柱・玉置川)。西中では、ミョウジオヤの所へも行った。
カナ 〔職〕飽。カナクズ(鉋屑)(玉置川)。
……ガナ 〔助〕……だけ。……ばかり。「それ10円ガナ売ってくれ」。野迫川村迫組でも用いる。
カナイ
(家内)
〔族〕家族(上湯川)。
カナギ ①〔林・植〕材木にすることの出来ない木。雑木。 ②細い木の枝。棒のようなもの。 ③質の堅い木。
カナギヤマ 〔地〕雑木山。 →カナギ①
カナゴキ
(鉄扱き)
〔農〕千歯稲扱機。(稲や麦をこきおとす機械)。
カナコギマツリ
(鉄扱祭り)
〔農〕籾をすり終えた後の祭り。各戸にニギリメシに小豆をマブッた(まぶした)ボタモチをカナコギにオマシた(供えた)。(字宮原・谷瀬)
カナジリ
(鉄尻)
〔筏〕イカダサオの尖につける金具。カネジリとも。
カナバ 〔職〕鉋屑(木を薄く削ったもの)。
カナビキ 〔衣〕芋束。ムネアゲの御幣[ごへい]につける(小山手)。
カナメ 〔職・鉱〕アンチモニー鉱山の鉱坑(高津)。
ガニ 〔動〕蟹。
カニババ 〔産〕胎便。
カネ 〔衣〕鉄漿[おはぐろ]。お歯黒。携帯用のカネつけ具一式をドウチュウガネ(道中ガネ)という。
カネジリ
(鉄尻)
〔筏〕イカダサオの尖につける金具。単にサキとも(込之上)。 →カナジリ
カネツケ 〔衣〕カネをつけること。「男の印」(夫をもった印)だという。
カネツケバネ 〔衣〕鳥の羽で作った筆で、ちよっと温めたダシガネを、これにつけて歯を染めた。
カバフトマキ
(樺太巻き)
〔食〕昆布巻きすし(内原奥里)。
カビ 〔農〕蚋[ぶと]くすべ(西川筋・山天・谷垣内)。麦の穂を束ねて二つ折りにして間にボロ布を入れ、ワラシベ(ワラスベ)で4~5箇所きつく縛り、火をつけてクスベた。直に腰紐につけた。上湯川のカッコに同じ。
カビッチョ 〔体〕あばた面。ミッチャヅラ。ジャンコ。
カブ
(株)
①〔村・族〕士族の株。「カブヲ カウ」 ②〔村・族〕ホンコと同じ(上葛川・玉置川)。 ③〔農・食〕里芋のかしら。オヤともいう。(上湯川・五百瀬)。昔は、主食の足しに串に刺して焙って食べた。串に刺した芋をユルリの火にほどよく焼けるよう廻したことを、デコを廻すと言った。 →デコマワシ。 〔付〕子芋はコジ、コウジという。
ガブ 〔動〕川底を這う小魚の総称。北山川(田戸)では、クロコガブ、ノボリガブ、アイカケガブ、セーガブ、アブラガブ、シマガブ、イワスイガブなどの種類がある。
カブタ 〔林・名〕切り株。カブッタ、カブツともいう。
カブチャガサ 〔衣〕桧をヘイで編んだ径2尺5寸くらいの笠。マンジュウガサともいう(神下下葛川)。
カブツ 〔林・名〕切り株。カブタ。
カブッソウ ①〔動〕カジカ(鰍)。 頭が大きく醜い暗黒斑の川魚。 →チチカブ ②〔名〕①から転じて、頭の大きいことに言う。 〔注〕一般的には、カブ、カブッソの言い方が多い。ダムのために、遡上できず、種類も少なくなり、形も小さくなってしまった。
カブッタ 〔林・名〕切り株 →カブタ
カブヤマ
(株山)
〔村〕大字共有林を戸ごとに分けた山(玉垣内・玉置川・上葛川)。個人山に対していう。
カブラタ 〔動・怪〕山にいる大きな青色の蚯蚓[みみず]で、これをユルリにくべると、その匂で仲間が寄って来て、火を消してしまう(玉垣内・出谷・那知合・旭)。 →カンテラムシ、ヤマメメズ、キンタミミズ。鰻捕りの餌に最良とされる。 〔注〕-シーボルトミミズ。
カブラヂョウチン
(蕪青提灯)
〔住〕丸提灯。ブラクリヂョウチンともいう(小坪瀬)。
カブリ
(冠り)
〔衣〕かぶりものの総称。「人の家へ入るときゃーカブリとるものじゃ」。
カブル ①〔他〕冠る。(水を)かぶる。 ②〔自〕(岩など)蔽いかぶさる(小坪瀬)。 ③〔他〕かじる。カブリツク。 ④人の罪・責任を負う。
カヘイ 〔林・忌〕葬式で使う道具の名を山で口にしてはいけない。例えば、トングワ(唐鍬)でも墓穴掘りに使うから、山ではカヘイと呼ぶ。その意味は分からないが、忌詞[いみことば]である(内原)。
カボチャ 〔年・芸〕盆踊りの一つ(竹筒)。
ガマ ①〔地〕岩穴。岩のクボ。タンノクチノガマ(松柱)。沖縄でも同じである。また、小谷などで滝壺になった所(小壺瀬)。また、河流が絶壁に食い込んで小湾入を作っているところ(武蔵)。 ②〔住〕実はフトイのこと。 ③繭のこと。
カマ 〔地〕ガマ①に同じ(永井)。
カマイッタチ
(鎌鼬)
①〔怪〕各地の例に同じく、突然鎌で切ったような傷が出来ると、「カマイッタチの仕業だ」という。「カマイッタチにカマレル」。 ②〔天〕つむじかぜ(長殿・旭・山天・三浦・小井・小山手・松柱)。
カマエ 〔住〕構え=構造
カマカギ
(鎌鈎)
①〔林〕材木に引っ掛けて動かす道具の一つ。 ②〔農〕古い鎌で作った畑等の除草用の小鎌。訛ってカマガキとも。玉置川では、ホグセとも。
カマカツギ 〔動〕離れものの老シシ(猪)(杉清)。
カマス 〔農〕叺[かます]。雨除けにカマスをセタローて(背において)田植えしたことがある(玉置川)。
カマスミ
(釜墨)
〔住〕鍋墨(重里)。 →ナベズミ
ガマゾウリ
(蒲草履)
〔衣〕蒲の葉で作った草履で、内履き用(五百瀬)。
ガマダ
(蒲田)
〔農・住〕ガマミシロ用に水田の一画を区切ってガマを栽培する。2尺ほどに成長すれば、四方から囲んで倒伏[とうふく]を防ぎ、8月に刈り取って1ケ月ほど乾かせば黄色くなり機にかけられる。
カマヅケ 〔衣〕足袋のカマヅケ。ツヅクリ(内原)。(天川村三名郷でも同様)。
カマヅケル 〔衣・動〕ツヅクル(内原)。
ガマミシロ
(蒲莚)
〔住〕蒲の葉で編んだミシロ(莚)。高級な敷物に属する。そのために、わざわざ蒲を栽培して自家で織る家が多かった。専用のハタ(機)があった。1日に1枚織れば一人前。西川では、台所の上敷なども織った。ガマはガマダで栽培するが、十津川村でガマといえば、フトイのこと。
カマル 〔v〕さあ、これから仕事に掛かろうという時、用意することに使う。例えばシメナワを綯[な]うのに、水を汲んでカマッといて、手を湿してから綯う(上葛川)。
カマワン
(構わぬ)
〔言〕障りがない。
カミ
(上)
①〔地〕川の流れについて上流が上(カミ)。シモ(下)に対していう。 ②〔村〕別に「カミ」と言えば、普通、大阪・堺を指す。
カミイタ
(紙板)
〔製〕漉いた紙の繊維を拡げる板。長さ一間。
カミコ
(紙衣)
〔衣〕「カミコを用ふる事、上十津川に多し。下十津川に少なし」(『吉野郡名山囲誌』)より。
カミコト 〔名〕小言。皮肉。
カミザ
(上座)
〔住〕ユルリの座の一つ。横座。主人の座(谷瀬・旭の迫)。
カミサゲ
(神下げ)
〔信〕いわゆる稲荷下げ。「ミル人にミてもろうたら」という話が今も多い(上葛川)。
カミサゲムシ 〔年・動〕センチムシ(蛆)の隠語か。卯月八日の朝早く、ホトケサンに供えたお茶の水で墨を摺り、「昔より、卯月八日は吉日よ、カミサゲ虫を成敗ぞする」(虫の字だけ逆さに書く)と書いた紙を便所に貼れば、オナガウジが出ぬという(谷垣内・竹筒)。
カミソ ①〔植〕楮。コーゾーともいう。 →ヤマソ。 ②〔製〕楮のアラカワの下の真っ白な皮。和紙の原料になる。
カミゾウリ
(神草履)
〔衣・信〕神様に参る時に穿[は]く草履。クツオ(横鼻緒)は、ワラをミコにして、それぞれ白紙で巻いてノイ(綯[な]い)、ハナオ(前緒)も白い紙で巻いた(谷垣内)。
カミタゴ 〔製〕カミソ(楮)の枝をコシキで蒸してアラカワを去り、このタゴ(桶)に受けて灰汁でアワス(灰汁抜きをする)(内原)。
カミナリ
(雷)
〔天〕
カミナリイワ
(雷岩)
〔地・信〕雷の落ちた所と伝え、その岩の上にあがると罰があたるという(神下神山)。
カミナリグサ
(雷草)
〔植〕カタバミ。熟した実に触れば、パチパチとはぜるから、この名がついたという(上葛川)。
カミナリグモ
(雷蜘蛛)
〔動〕女郎蜘蛛。
カミナリチョウチョ
(雪蝶々)
〔動〕揚羽蝶[あげはちょう]。
カミニ
(上荷)
〔交〕五條を経由して堺へ出した茶・椎茸・薬草など(西川区)。
カミノス
(紙の簀)
〔製〕紙漉き用の簀。巾1尺5寸、長さ2尺くらい。4枚で1帖くらいになる。
カミノトシ
(神の年)
〔年〕節分。「正月は人の年、節分は神の年」(今西)。
カミノトシコシ
(神の年越し)
〔年〕①節分(谷垣内・内原)。セツブンともいう。 ②正月20日、コヅキ(香煎)正月(谷垣内)。
カミノリ
(上乗り)
〔筏〕筏の流送で上野地から平谷までの区間(宇宮原)。
カミハネキノナラワセ 〔信〕神様は、その人の思うように祭ったらよい(谷垣内)。
カミハラ 〔住・地〕家から見て上手側。シモハラに対していう(谷瀬・谷垣内)。
カミヒゲ 〔体〕頭髪。カシラガミ、カシラヒゲとも。
カミブスマ
(紙衾)
〔衣〕コウゾクソガミで作ったフスマ(布団)。敷いたり着たりした。蚊帳[かや]まで紙で作った(ヒチョウ)。
カミユノカワキュウカシチケン
(上湯川旧家七軒)
〔村・伝〕
カミワラジ
(紙草鞋)
〔葬〕葬送の際、モチカタが穿[は]くワラジで緒を半折で巻いたもの(西川)。
カムトイチゴ 〔植・食〕フクロイチゴのことをこうとも言う〔上湯川〕。
カメ ①(亀)〔動〕亀。 ②〔動〕オオカメの異称。寧[むし]ろ忌詞[いみことば]としてカメと呼ぶ事が多かった(上葛川)。狼の食い残しをカメグイという。
カメグイ 〔動〕カメ(狼)の喰い残し(田戸・上葛川)。オオカメグイともいう。
カメツボ
(甕壺)
〔食〕甕(竹筒)。
カモ 〔筏〕キバナが乗る、6本くらい編んだサキトコほどの一トコの筏。ドタともいう。(宇宮原)。
カヤ
(茅)
〔植〕薄(すすき)。穂は、カヤノトウという。榧[かや]はガヤという。
ガヤ 〔植・食〕榧[かや](の実)。木はガヤノキ。
カヤク 〔食〕①香料として食物に添える薬味。 ②五目鮨などのグ(具)。カヤクメシ。
カヤクメシ 〔食〕五目飯。マゼメシともいう(小山手・玉置川) →カヤク②
カヤス 〔他〕①ひっくりかえす。倒す。「木をカヤス」 ②返す。本をカヤス。 ③孵化[ふか]する。(自動詞はカヤル)。
ガヤス 〔動〕懸巣(田戸・上葛川)。カシドリともいう。
ガヤノキ 〔植〕榧[かや](上湯川)。
カヤノトウ 〔植〕カヤ(すすき)の穂軸(谷垣内)。
カヤブキ
(茅葺き)
〔住〕十津川村では、今は一軒も見られないが、昔は竹筒にはあったという。
カヤホ
(茅穂)
〔植〕薄の穂。
カヤル 〔自〕ひっくり返る。方向を変える。裏切る(寝返る)。他動詞は、カヤス、カヤラカス。
カラ 〔体〕体格。
ガラ 〔名〕①体。体格。 ②(柄)様子。模様。人ガラ、着物のガラ。 ③〔植〕植物の茎
カラー
(辛い)
〔形〕辛いのほか、塩辛いことにも使う(串崎・那知合)。
カラアゲ 〔衣〕
カラウス
(唐臼)
〔農・食〕足踏み式の搗き臼。カラスともいう。昔は、これで餅も搗いた。一クボ4~5升。カラウスは北向きに置いては行けない(今西)。
カラカゼ
(空風)
〔天〕春先に吹く北風は乾燥して冷たく、作物や茶の芽を枯らす(上葛川)。
カラクリ 〔名〕工面。
カラクル 〔自〕工面する。
カラケシ 〔住〕消炭[けしずみ]。
ガラゴ 〔動〕おたまじゃくし(那知合)。
カラザケ
(辛酒)
〔食〕甘酒に対して、清酒をいう(内野)。
カラス ①〔農・食〕カラウス。 ②〔動〕烏 ③〔人〕よく物を忘れる人。
カラスオオギ 〔植〕シャガ(上湯川・那知合)。
カラスキ
(唐鋤)
〔農〕牛耕用の犁。
カラスキボシ
(唐鋤星)
〔天〕オリオン星座。
カラスグチナワ
(烏朽縄)
〔動物〕カラスヘビ(上湯川・上葛川・田戸・玉置川)。
カラスドマリ
(烏止まり)
〔植〕樹木の天辺。
カラスナキ
(烏啼き)
〔葬〕
カラスノゼニ
(烏の鎖)
〔植〕マメシダ(神下下葛川)。
カラスノツギキ
(烏の接ぎ木)
〔植〕松に着生するヤドリギ(田戸)。
カラスノモチ
(烏の餅)
〔年〕正月(小さい丸餅)と春の節句(菱餅を更に小さく菱形に切ったもの)に烏にやる餅(上葛川)。
カラスバ
(碓場)
〔住・農〕入口の板間。両端に相対してカラ(ウ)スとクドがある(五百瀬)。カラスバ→カラウスバ(唐臼場)。
カラスメ 〔体〕斜視。
カラソウケ 〔植〕シャガ。カラスオオギの訛か(三浦)。
カラタケ
(唐竹)
〔植〕竹の一種。これでハジキ鉄砲を作った(田戸)。
ガラボウ 〔怪〕河童。虹がヒイたら(立ったら)ガラボウのイキ(息)だという(竹筒)。
カリオキ
(苅り置き)
〔農〕草を苅って来て、堆にして小屋に乾かしておいて、肥料にすること(小山手・出谷・重里大津越)。小山手の草苅唄に、「草の苅り置き娘の病気 どこのどなたが貰うやら」とある。
カリオキシバ
(苅り置き柴)
〔農〕ハタ(畑)が広いと、8月盆踊り前から苅って、コエボシ(苅草堆)に積んで貯えるシバ(草・葉)(竹筒)。
カリカワ
(狩川)
〔筏〕一本流し、管流し。材木をバラで流送すること。この作業の総指揮者はカリカワノショウヤ。その人足は、カリカワニンプ(宇宮原・旭)。平谷辺では、バラガリという。旭では、旭川筋の間はイッポンナガシ、大川へ出ればカリカワだという。
カリカワニンプ
(狩川人夫)
〔筏〕カリカワの人足。キバナ、ノベ、キジリの3種がある。指揮者はショウヤ。
カリカワノショウヤ
(狩川の庄屋)
〔筏〕カリカワ作業の総指揮者。
カリクチ
(苅り口)
〔農〕クサの苅りかけ(苅り初め)をすること。小山手の草苅唄に、「草のカリクチ今日しておいて、明日は殿御[とのご]とよせがりに」とある。
カリバ
(苅場)
〔農〕採草地。田畑のめぐりは全部カリバだった。竹筒では、特に個人持ちの採草地を指し、大字有のそれは、ノーまたはノーカリバという。谷瀬では、個人持ちはトオノという。
カリブキ
(仮葺き)
〔住〕タテマエのあと、杉皮の仮屋根を葺くこと(内原)。
カリボシ
(苅干し)
〔農〕苅草堆-ススコエボシ、ススボシ(竹筒)。
カリワケ
(苅分け)
〔農・村〕収穫を地主と小作人が折半すること。
カリモ 〔動〕シシの夏分のネヤ(塀)(上葛川)。一般にはカルモという。
カル 〔他〕①苅る。 ②(狩る)材木を一本ずつバラで流送する。-カリカワ ③借りる。
カルコ 〔林〕杉桧の皮剥ぎのために木に登る縄梯子のょうな仕掛け。コロともいう。東吉野村では、カエリコ、カイルコという。
カルサ 〔衣〕軽杉。かるさん。仕事袴の一種。70年ほど前に入って来た。脛[すね]の上部くらいまでで、下はキャハンを着けた(谷垣内・重里)。
カルモ 〔動〕シシの塒[ねぐら](出谷・田戸)。シシがカルモを作って渡ることをカルモカク、カルモカイトルなどという。
カルモン 〔動〕シシやクマの塒[ねぐら](小坪瀬)。
カロウ 〔他・運〕荷をじかに背に負う。かるう。セタロウともいう(小原)。
カワ
(皮)
①〔植〕シュウロの毛。以前は大きな収入源であった。 ②〔住〕杉桧の皮。巾1尺5寸、長さ3尺5寸のカワを6枚ずつ腹合わせに計12枚を両端で縄なりクズカズラ(葛の蔓)なりで括った単位を1ケンとする。四六間(けん)の家だったら、カワは何ゲン要ると見積もる。昔は、主にカワブキだったが、中古からソギ(枌)に変わり、近年になってトタン葺きに変わった。それでも一応カワ茸きにして、その上にトタンを被せる。カワは月夜やツチの日に剥げば、虫がつき易い。ツユ時も良くない。5月までに剥いだハルカワ(春皮)もよくない。8月からあとの、アキカワ(秋皮)が最上である。
カワイゲーナ 〔形〕愛らしい。
カワエベス
(川蛭子)
〔信〕田戸の山彦橋の袂の水神祠。
カワオソ
(川獺)
〔動〕カワウソ(内原奥里)。
カワガラス
(川烏)
〔動・兆〕カワガラス。この鳥がテギ(支稜の端の丘)越しすれば荒天の兆(上湯川)。カワガラスの黒焼きは、腹痛の薬になる(田戸)。 →カワラガエス。
カワケズリガマ
(皮削り鎌)
〔林〕カワを必要としない場合、木を伐倒したあとで、その皮を削り取る鎌。ひっついて取れなくなった皮を削って取る。但し、桧は剥がぬ。剥げば、材にヒビが入って値が下がる。
カワサク
(川作)
〔筏〕筏の流送を容易にするために、あらかじめ邪魔になる岩石を割ったり、ミト(水路)を掘ったりする作業。
カワシキ
(川敷)
〔地〕河川敷。
……ガワシニ 〔助〕「ヒトヨサガワシニ(毎晩所を変えて)踊りに行った」(谷垣内)。
カワス 〔他〕移す。人が死ねば飼猫を隣家へカワス(今西)。
カワズ 〔動〕蛙の一種。カイカイカイと鳴く。河鹿か(松柱・字宮原・旭)。上湯川では、その鳴き声からカイカイヒキという。上葛川では、カジカという。
カワセミ 〔動〕魚狗。
カワタケ
(川丈)
〔地・村〕上限ははっきりしないが、大塔村あたりから十津川郷を含めて、新宮までの十津川・熊野川筋をカワタケと称して、特別な親近感を持ち、他郷で互いにカワタケノシュウ(衆)と判れば懐かしいという。大体、筏の通った区間だろうというが、特に十津川村と本宮町が近しく、県境を越えて体育大会などが行われている。
カワタロウ
(河太郎)
〔怪〕河童(内原・田戸・旭)。
カワド 〔交〕渡し場の義か。旧街道の川津の渡場はカワドだった。
カワナガレ
(川流れ)
〔名〕土左衛門。
カワネズミ
(川鼡)
〔動〕カワネズミ。水に棲むモグラに似た小動物。
カワバカマ
(皮袋)
〔衣〕
カワハギ
(皮剥ぎ)
〔林〕桧の枝の赤ミの余計あるものを選んで、一端を箆[へら]状に削ったもの。杉桧皮を剥ぐのに用いる。
カワハギボウチョウ
(皮剥ぎ包丁)
〔林〕杉桧の皮に一定間隔で切れ目を入れ、ちょっと起こしておいて、後はカワハギを突っ込んで丁寧に剥ぐ(小原・武蔵)。
カワバンチャ 〔衣〕皮製のハンチャ。金のある人だけが誂えて、雨の時など着用した。下は、カワバカマを着けた。
カワビラキ
(川開き)
〔漁〕滝の岡の滝の下手の渕には、アメノウオが溜まってウヨウヨしていたが、小松家の主人が行ってカワビラキするまで、誰も釣りに行かなかった(五百瀬)。
カワブキ
(皮葺き)
〔住〕杉桧の皮茸き。さまざまの葺き方がある。例えば、田戸では、オサエブキ、ヒキブキ、トジブキ、タタキブキなど。 →カワ②。
カワブセ
(川伏)
〔信・年〕神下の田戸バンで行う水難除けの祈祷。子供たちの水泳ぎの始まる頃までに、選ばれた青年の一人が小さな団子くらいの白い川原石を10個ばかり持って玉置山へ参り、神官から水難除けの御祈祷をして貰い御礼をいただいて帰る。次いで、老幼男女を問わず、5、6パイの舟に分乗して、人のよく溺れる場所へ行って、御礼を納めた小さな祠を川端の岩の上などに安置し、御神酒[おみき]を供え、それから凶い場所(渕など)へ、この白石を一つずつ沈めて廻る。あとで磧[かわら]で御神酒をよばれる。石を沈める場所には、ゴラゴ(河童)がいるという。この行事は、毎年行うとはかぎらない。
カワブネ
(川舟)
〔交〕
カワミ
(川見)
〔筏〕筏を出す前日に川筋を検分しに行くこと(重里)。
カワムギ
(皮麦)
〔食〕十分精白してない、カワをカズイた(被った)ままの大麦(内原)。
カワラガエス
(川原懸巣)
〔動〕カワガラス。滝のようなところに巣を作る。黒焼きは牛の薬になる(上葛川)。
カワラギ
(磧木)
〔林〕川原に流れ着いた木。漂流木(内原栗平・武蔵)。下北山村のコーラギも同様。
カワラコジキ
(川原乞食)
〔村〕山窩。ウナギなど川魚を捕り、また篭など作って、谷筋を移動した。
カワラヤナギ
(川原楊)
〔植〕ネコヤナギ。
カン 〔筏〕(かねへんに丸)の字を当てる。メガに代わって結索を通すために用いられた∩状の金具。筏のトコを繋ぎ合わすために打ち込んだ。
ガン 〔葬〕ガンバコ(棺桶)。
カンオクリ
(神送り)
〔年〕カンモドシ(神戻し)ともいう。正月15日。またこの日の正月様送りのこと。14目に外してエドコ(床の間)にヤスマせておいた一切のカザリに、シロワカバ(葉柄の青いユズリハ)の葉に包んだ赤飯のベントウや数々のおかずを添えて、15目早朝浄地へオクル(モドス)。ベントウはあとで子供がタバル(小坪瀬)。
カンカゼ
(寒風)
〔天〕ホシカイモはカンカゼにあてて干す。寒中の風(上葛川)。
カンカチ 〔形〕カチカチ。固い。きつい。
カンカラ 〔名〕空罐。
カンカラボウシ 〔衣〕麦藁帽子。
ガンギ
(雁木)
〔住〕①切妻の破風(玉置川)。縦に板を張り詰めることをガンギツメルという。 ②軒尭のウチオロシ(上葛川)。
カンキョ 〔族〕インキョ。閑居か。
カンギン 〔交〕イリヨウを差し引いた純益金(上葛川)。
ガングラ 〔地〕高く聳[そび]えた岩石。断崖 →クラ
ガンケ 〔地〕崖(神下下葛川)。
カンコ ①寒粉〔食〕寒に入ってから米を碾いてトリコを作れば虫がつかぬ。これを寒粉[かんこ]という。 ②寒子〔林〕10月頃出る椎茸。
カンゴ 〔住・食〕篭(谷垣内)。
カンゴロ 〔植〕ヤマイモの腋芽[えきが](ムカゴ)。食べぬ(上葛川)。
カンザラシコ
(寒晒し粉)
〔食〕とうきびの粉。
カンジョリ 〔信〕観世縒[よ]り(竹筒)。
カンス
(鑵子)
〔食〕クドやユルリに掛ける湯沸かし。
カンゾウ
(甘草)
〔植・療〕
カンタロウ 〔動〕①蚊(那知合)。 ②〔注〕-カンタロウミミズ(カブラタ)のこと。
ガンチ 〔体〕めっかち。メカチン、メカンチ、カンチメ。
カンチメ 〔体〕めっかち(田戸)。
カンチメシ 〔食〕炊きそこねの飯。
カンテキ ①七輪。こんろ。 転じて②〔人〕起こりっぼい短気者。
カンテラ 〔住〕石油を使う角灯。
カンテラムシ 〔動・怪〕ヤマメメズのこと(田戸・玉垣内・出谷)那知合では、カブラタという。 →カブラタ、ヤマミミズ。
カンド 〔住〕前庭(竹筒)。
カントウベイ
(関東ベイ)
〔村・住〕オウシュウ(奥州)ベイのこと。
カンナヅキ
(神無月)
〔年〕
カンナオシ 〔林〕流送中、筏のカンを打ち直したりする作業で、ノリテの分担である(串崎)。
カンナメサイ
(神嘗祭)
〔年〕
カンヌキ
(閂)
〔住・農〕マヤ(牛舎)の棟木のうち、一番上の取り外しの利かぬもの。下の1、2本を外して牛を出し入れする(オロ)(猿飼)。マセ、マセボウ、マセンボウ。
カンノムシ
(疳の虫)
〔産〕→ムシ
カンノンサマ
(観音様)
〔動〕虱[しらみ]の異名。
ガンバコ
(棺箱)
〔葬〕棺桶。寝棺が多かった。昔は六角形、坐棺。ヒオイと一緒に村の大工が作る。但し、1人で作るべからず。必ず誰かが手伝う(上葛川)。
ガンピ
(雁皮)
〔植・製〕雁皮。多くはないが、昔からよく採って来て売った。晩秋から3月頃までに剥げば良く、アラカワを除いて出せば値が高かった(樫原)。
カンビキ
(寒蛙)
〔動〕冬、コロコロ鳴いて産卵する蛙(ヒキ)(猿飼高森)。
カンピョウ
(干瓢)
〔食〕甘芋の切干。カンピョウイモ(西川・上葛川・玉置川)。
カンピョ(ウ)イモ
(干瓢藷)
〔食〕干甘藷(猿飼高森・重里大津越・小原)。単にカンピョウとも言い、ホシカイモともいう。
カンボウカゼ
(感冒風)
〔体〕流行性感冒。特に第一次大戦後にはやった西斑牙風を指す。
ガンボドキ
(願解き)
〔葬〕死者が生前願カケ(立願)していたような場合、ヤギシ(背戸)から棟越しに石を投げて願をほどいておく(今西)。
カンマ 〔農〕鎌。
カンマン 〔言〕「構わん」の詰まった語。「そんなことせんでもカンマンよ」。
カンミズ
(寒水)
〔年〕寒中の水。特効が信ぜられ、この水で餅を搗けば黴[かび]が生えぬという。何年でもそのままだという(各地)。夏の腹下り(下痢)に効く。ツクリモノ(作物)のイラに効く(上葛川)。
カンモドシ
(神戻し)
〔年〕カンオクリともいう(小坪瀬)。
カンヤ 〔住〕ヒウチの火口に使った。綿みたいなものに黒い粉(火薬)がマブッて(まぶして)あった(西中・神下下葛川)。 →ホクチ
カンヨキ 〔筏〕筏乗り用語。
ガンリキ 〔衣〕かんじきの訛。鉄製二つ爪。凍った山路を歩くとき、草鞋の裏に装着した(小原・武蔵)。