「ヘ」

ヘー 〔農・食〕稗。煎って臼で碾いて粉にして匙ですくって食べたり、茶碗に入れて塩味をつけて、練って食べたりした。またカラウスで搗いて炊いても食べ、お粥にもした。まずいが腹保ちが良い。保存が利くので備荒用に貯蔵した。ヘーを食べると、乳の出が良くなり、キビ(玉蜀黍)を食べると乳が澄む(薄くなる)。
ヘイハチ 〔動〕ゴキブリ(今西)。那知合では、単にアマメともいう。ヘイハチアマメともいう。
ヘイハチアマメ 〔動〕ゴキブリ(今西・那知合)。 →ヘイハチ
ヘイナイタキ
(平内滝)
〔伝〕
ヘエル 〔自〕入る(上湯川)。
ヘギ 〔信〕ヘギイタとも。四角い薄へぎ板。神供の皿として用いる。
ヘギイタ 〔信〕→ヘギ。
ヘギモチ 〔食〕①切るのを忌んで鏡餅を手で欠いたもの。 ②なまこ型の餅を薄く切って乾かして貯えたもの(カキモチ)。ヘゲモチとも。
ヘキリ 〔名〕仕切り。区切り。 →ヘキル。
ヘキル 〔他〕仕切る。区画をつける。仕切りはヘキリ。
ヘグ 〔他〕剥ぐ。
ヘクソ
(屁糞)
〔体〕屁(平谷地区)。ヘンタマとも。
ヘクソウロウ 〔言〕はい、それまで。終了の義。 →ソレベクソウロウ。
ヘクソカズラ
(屁糞蔓)
〔植〕手で揉むと特有の臭いがあり、この名がある。ヤイトバナともいう。
ヘゲ 〔名〕嘘。「あいつは、ヘゲたれとる」。ヘンゲとも。
ヘゲタレ 〔人〕うそつき。ヘンゲタレとも。
ヘゲモチ 〔食〕おかき。ヘギモチ。
ヘゲル 〔自〕剥離する。
ヘコイル 〔自〕①へこむ。くぼむ(西川・上葛川)。 ②弱り挫[くじ]ける。へこたれる。
ヘザカブ
(膝株)
〔体〕膝頭。膝小僧(樫原)。ヘザ、ヘザカブとも。
ヘシ 〔漁〕尖が数本に岐れた魚突き用の釵(やす)。刃は3本または4本。竹の柄をつける。
ヘシモチ
(菱餅)
〔年・食〕三月節句に白と蓬[よもぎ]のノシモチを菱形に切って供える。
ヘソクレ 〔経〕へそくり。ほまち(上湯川)。
ヘソノオ
(臍の緒)
〔産〕
ヘソブロ
(臍風呂)
〔住〕風呂の一種(内原栗平)。
ヘタ 〔地〕傍[はた]。ハタケノヘタ=畑の傍(上湯川)。
ベタイ 〔体〕額。ヘタイグチ。ヘタイバチとも。
ヘタイグチ 〔体〕額。
ベタイバチ 〔体〕額。
ヘタエ 〔体〕額[ひたい](西川)。ヘタイとも。
ヘダカブ 〔体〕膝頭。ヒザカブとも(串崎・那知合)。
ヘタグラ 〔住〕ヘタグラカク=胡座[あぐら]をかく(重里・那知合)。
ベタコイ 〔形〕平たい。粘り気がない。
ベタゼン 〔食〕脚のない平たい膳。マルボン、カクゼンの2種がある(谷垣内・小原・武蔵・上葛川)。タカゼンに対していう。
ヘタネ 〔体〕舌根。舌。シタネとも。
ヘタノハチ 〔体〕額[ひたい]。ヒタイバチ。ヘタエ。
ヘタル 〔自〕疲れ切る。弱る。へたばる。ヘタバルとも。
ヘダルイ 〔形〕ひだるい。腹がへって、ぐったりした感じ(上湯川)。ケダルイ、ケエダルイとも。
ヘチ 〔地〕海辺。岸辺などのように、はた、そば。
ヘチマ ①〔植〕へちま(糸瓜)。 ②〔製〕竹に巻いた綿。糸紡ぎのために新宮や五條から買った。
ヘチャ 〔体〕醜い女。
ベチャコイ 〔形〕平たい。
ヘックラショ 〔植〕常緑樹の一種(松柱)。
ヘッゴム 〔自〕くぼむ。ヒッコムとも。
ヘッツイクド 〔住〕かまど(田戸)。
ヘツル 〔他〕斧で削る。ハツル。
ベニサシユビ
(紅差指)
〔体〕薬指。
ベニモチ 〔食・信〕上湯川入谷のヒナミヤサンでは旧の三月節句に搗いて供える。
ヘノコ 〔体〕男根(杉清)。木でその模型を作って山の神に供えた。
ヘビ
(蛇)
〔動〕特にノドヒカリ(ヤマカガシ)を指す(小坪瀬)。
ヘベ 〔植・住〕イヌガヤ。旭では専らこの実を搾[しぼ]って油をとってアンドンをとぼしたが、実は食べぬ。小坪瀬では、油はとらず子供達が実を食べた。
ベベ 〔衣〕着物の幼児語。
ヘヤ
(部屋)
〔住〕米穀を蔵って置く屋内の一部。エベッサマ(ダイコクサマ)を祀る。イノコの供物もここでする(上湯川・今西・小山手・重里・上葛川)。ヒヤとも発音する(小坪瀬)。別棟の場合はソトベヤという(田戸)。
ヘラ 〔地〕側[がわ]。向こうベラ。
ベラサツ 〔交〕紙幣。
ヘリナエ
(縁苗)
〔農〕苗代のヘリ(縁)の苗。
ベル 〔自〕しゃべる。口数多く言う。
ベロ 〔体〕舌。
ヘンガイ
(変改)
〔t〕①変え改める。心変わりして破約すること。 ②交換する。「お前の土地と俺のとヘンガイせんか」。
ヘンギョウ 〔名〕嘘。ヘンギョウタレル=嘘をつく。ヘンゲともいう。 →ヘンゲ
ヘンゲ 〔名〕嘘。嘘つき(重里・平谷校区)。ヒンゲ、ヘゲとも。ヘンギョウとも。ヘンゲタレル=嘘をつく。ヘンゲタレ=嘘つき。ウソタレとも。
ヘンタマ 〔体〕屁の玉。屁。ヘクソとも(平谷)。
ベンテンコウ
(弁天講)
〔信〕小山手。
ベンテンサン
(弁天さん)
〔動〕首に輪の巻いた蛇の名。殺すことを忌む(小山手)。
ベントブクロ
(弁当袋)
〔食〕薪こり、下刈りなどの折り、メッパを入れ携行する袋。これは新しく、もとはカゴに入れセッタロウた(旭)。
ベンベン 〔形〕(会計など)ぎりぎりで余裕のないことにいう(込之上)。収支がとんとんの状態。
ヘンロ
(遍路)
〔交・信〕昔は乞食をしながらよく廻って来た。