十津川探検 ~わたしたちの村 十津川~
五 わたしたちの村のくらしのうつりかわり
1 昔をつたえるもの
(1)昔使ったもの
 みどりさんの家では,「きかいでついたもちよりきねでついた方がおいしい。」ということで,今年の正月は,古いうすを出してきて,もちつきをしました。ペったんペったんというきねの音を聞くと,おじいさんやおばあさんは,「ああ,もうすぐお正月だなあ。」と思うそうです。みどりさんは,ほかにも,昔使っていたものがないか,おじいさんにさがしてもらいました。

くらしの道具
めっぱ
めっぱ
 おじいさんは,黒っぽいまるいかたちの入れ物を出してきて,「これは,『めっぱ』という,昔のべんとうばこだよ。」と,教えてくれました。
 うすい板をまるくまげて作っています。ベんとうばこまで手作りだったとは,びっくりしました。
ひのし
ひのし
 やすお君は,ひしゃくのようなものを持ってきました。持つと重くて,鉄でできているようでした。おばあさんが,子どものころ使っていたものです。「火のし」といって,炭を入れて,アイロンのように使っていたそうです。
 さとみさんの家には,えんとつのついたアイロンがあるといったので,おどろいてしまいました。
ランプ ひろし君は,「ランプ」を持ってきました。
 おばあさんは,子どものころ,いつも夕方になると,ランプのほやみがきをしたそうです。小さな子どもの手は,ほやの中に入るので,ほやみがきは,どこの家でも子どもの仕事だったそうです。
 あかりにも,まだいろいろなものがあったようです。それに,はこぜんやふんごなど,大きくて持ってこられないものもありました。
はこぜん
○はこぜん
自分のちゃわんやはしを入れておくもの
ふんご
○ふんご
おひつに入れたごはんがさめないように,入れておくもの
ほや
○ほや
アイロン
○アイロン
農家の道具
 みどりさんの家のなやのおくには,いろいろな昔の農具がおいてあります。おばあさんに聞いてみると,「とうみ」や「足ふみだっこくき」だと教えてくれました。でも,何をする道具かわかりません。
 そこで,おばあさんに,使い方を聞いてみました。
 おばあさんの話
おばあさん
足ふみだっこくき
○足ふみだっこくき
とうみ
○とうみ
 これは,いねのほをとる道具だよ。これを買ったときはうれしかった。それまでは,「せんばこき」という道具でしていたから,力がいるので,1日もするとうでが上がらなくなった。歯車がまわって実をとってくれるから,楽になった。




「とうみ」は,米や豆などを,実と皮とにわける道具だよ。持ち手をまわすだけで,きれいにわけてくれるから,助かった。それまでは,いたみを使って,長い時間をかけてしていたよ。
せんばこき み いたみ
○せんばこき ○み ○いたみ
米や麦のほをとる道具 米や豆なとの実と皮をわける道具
昔のしろかきのようす
○昔のしろかきのようす

 ひろし君の家には,右のような写真がありました。何をしているところか,おじいさんに聞いてみました。
 おじいさんの話
おじいさん これは,田植えの日に,牛を使ってしろかきをしているところだな。このあと,いねのなえを植えるんだ。田の仕事は,「てま」といって,むらのみんなで手つだい合ってしていたよ。
 どの家でも,牛をかっていて,米作りを助けてくれる牛を,家族と同じように大切にしていたよ。
 そのあと,おじいさんは,次のような道具を見せてくれました.
すき くら
○すき ○くら
山仕事の道具
のこぎり やすお君の家には,ひいじいさんが,昔使っていた,大きなのこぎりがあります。ひいじいさんは,「こびき」といって,この大きなのこぎりを使って,木を板にひいていたそうです。
 今,せい材所をしているおじいさんは,わかいころ,木を切る仕事をしていました。
 やすお君のおじいさんの話
やすお君のおじいさん わたしは,「そまし」といって,木を切る仕事をしていた。のこぎりやよきを使って,大きな杉やひのきを切りたおすのだ。「とまり木」といって山おくに小屋をたて,何日も,そこではたらいていた。
 切った木は,「ひようし」といって,材木を運ぶ人たちが,しゅら・やえん・かりかわなどで,川や木馬道まで運び出したんだ。 道のついているところは,「木馬ひき」とよばれる人たちが,木馬の上に材木をのせて,牛や馬に引っぱらせて運んでいた。
 しゅら… 山のしゃ面を利用して材木をすべらせていく方法
 かりかわ… 大雨で谷の水がふえるのを待ち,材木を広い川まで流し出す方法。
 さとみさんのおじいさんは,いかだに乗って川をくだり,材木を新宮まで運んでいたそうです。
 さとみさんのおじいさんの話
さとみさんのおじいさん 30年あまり前は,今のような道路がなかったので,材木を町へ売りに行くには,川を使うしかなかった。
 川にてっぽうせぎをつくり,材木をいかだに組んで,てっぽうせぎの水といっしよに流し,新宮まで運んでいったんだ。いかだに乗る人を「いかだし」といって,たいへんな仕事だった。とくにてっぽうせぎから流れ出るときは,こわかったよ。水がひざまでもくるので,落ちないようバランスをとるのがむずかしかったね。それに,材木を岩に当ててきずつけないようにかじをとるのがたいへんだった。たったふたりで,トラック1台ぶんほどの材木を,さおかいだけで,流していくんだからね。
すき いかださお てっぽうせぎ
○すき ○いかださお ○てっぽうせぎ

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