(39) 輕業師の様に鳶口に全身を任せて千仭の崖にも逆さに吊り下がる。
上葛川の富之内の二男と云ふ人は、身輕くこんなこと朝飯前であり、或る時、栂の木から垂直に藤蔓が下がってゐた。それを下から伝い昇って6メートル位のところで腰鉈を抜いてその「蔓」を切って落ちたが、地面に輕々と立ってゐたと云ふ。