十津川探検 ~十津川言葉~
(十一)助詞の十津川言葉
(4)副助詞のつかい方と十津川言葉
(イ)「は」のつかい方と十津川言葉
  知りません
 他の人は知っているかも知れないが、私は知らないという意味で、他と区別して取り出していうのに用いる。
 十津川ではおそらくこの「は」をつかわないで「は」のついている語の語尾をのばすか或は語尾を変化して「やー」をつける。
  例 あの山は高い あのやまーたかー
これは何ですか こりゃーなんない
私は知りません おりゃー知らん
この海は青い このうみゃー青い
(ロ)「も」「こそ」「さえ」「しか」「ほか」のつかい方と十津川言葉
   私に下さい 同種の事実のうち一つをあげている時つかう
手も足出ない 並列の意味を表す
雪が一メートル積った 意味を強める時につかう
こそ失礼しました 意味を強める時につかう
小学校の児童さえわかる 一事をあげて他を類推させる
それさえあれば結構です それと限って他を顧りみない意を表す
道が悪いのに雨さえ降り出した 添加の意味を表す
五時間しか寝ない  
寝るよりほか仕方がない 「しか」も「ほか」も限定を表す。
 「も」「こそ」「しか」「ほか」は以上のようにつかわれ、十津川に於ても普通につかっている。
(ハ)「でも」「だって」「まで」のつかい方と十津川言葉
  子供でも知っている  
子供だって知っている 左の「でも」と「だって」は軽い事物をあげて他の重い事物を類推させる
お茶でも飲もうか 軽い気持で動作をすることを表す
どこまで行くのか  
まで起きていよう  
わかるまで話そう 以上三つは所、時、事、の終点を表す
八分目まで入った  
念のためにきいてみたまで 程度限定を表す
子供にまで笑われる 重いものをあげて軽いものを類推させる
 「でも」「だって」「まで」は上の如くつかわれ十津川にも普通につかわれている。
 然し「だって」は殆んどつかわないし、「まで」という言葉は「まーで」とのばす人が多い。
(ニ)「なりと」「なり」のつかい方と十津川言葉
  どこへなりと行け 多くの事物の中から軽いものとして一つを選ぶ意を表す
私になり話してほしかった 「でも」と云う意味を表す
行くなり、止めるなり、早く決めよ 事物の並列選択を表す
 「なりと」「なり」は上のようにつかわれるが十津川では両方とも「なぁーと」とつかう
  どこへなぁーと行け
私になぁーと話してほしかった
行くなぁーと、止めるなぁーと決めー
(ホ)「ばかり」「だけ」「ほど」「くらい」「ぐらい」「きり」「ぎり」のつかい方と十津川言葉
  一時間ばかりかかった  
できるだけ手をつくした  
思ったほどでもない  
ぎり水につかった  
仮名ぐらいは書ける 以上下線をひいた言葉は程度を表す
自分のことばかりしている  
自分のことだけしか考えない 以上下線をひいた言葉は限定を表す
 以上は十津川に於ても皆普通につかわれているが、「ばかり」は「ばっかし」とか「ばっかり」といい、「だけ」は「だっけ」とつかう。
(ヘ)「など」のつかい方と十津川言葉
  など書いて遊んだ  
太郎なども学校へ行った 例示の想を表す
 「など」は上のようにつかうが複数ではない。「なんか」とか「なんぞ」と云う言葉と同じ意味を表す助詞である。
 この言葉は十津川ではあまりつかわれないが、これに似た言葉で「ら」を用いる。「ら」も複数ではない。
  太郎も学校へいた
おれも旅行したぁーよ
書ぁーてあそーだ
映画みとーなぁー
(ト)「やら」「や」「か」「かしら」のつかい方と十津川言葉
  だれにやら渡した  
いつ行きます  
いつかしらお逢いした 以上の「やら」「か」「かしら」は不確実な意を表す
菓子やら果物やらいろいろ買った  
菓子果物いろいろ買った 以上の「やら」「や」は事物の並列の意を表す
参ります 並列選択の意を表す
 「やら」「や」「か」「かしら」は上の如くつかわれ十津川に於ても普通につかわれている。
 然し不確実な意を表す「やら」という言葉はあまり用いず「ぢゃったか」を用いる
  だれにぢゃったか渡した
 「かしら」は十津川では「かしらん」とつかう
  いつぢゃったかしらん逢うた
どこでぢゃったかしらん見た
 

十津川言葉へ