十津川探検 ~十津川言葉~
(十一)助詞の十津川言葉
(3)接続助詞のつかい方と十津川言葉
(イ)「ば」のつかい方と十津川言葉
  読めわかる 順当な結果の起こる仮定条件を示す「ば」
一に一をたせ二になる ある条件が備われば、いつでもあることがらが起こる条件を示す「ば」
池もあれ林もある 同趣のことがらを並べあげるのに用いる「ば」
 「ば」は上の如くつかわれるが、十津川言葉では「ば」はおそらく用いない。
 「ば」は動詞、形容詞、助動詞の仮定形につく語で、既に述べた通り「ば」のつく語尾が変化してのばされる。
  例 読めば よみゃー
たせば たしゃー
あれば ありゃー
行けば 行きゃー
(ロ)「と」のつかい方と十津川言葉
   見るわかる 順当な結果の起こる仮定条件を示す「ば」に同じ「と」
一に一をたす二になる ある条件がそなわればいつでもある事が起こる場合の条件を表す「と」
家へ帰る日が暮れた あることがらの起こったその場合、その時を表す「ば」に同じ「と」
行こう行くまい勝手だ 「とも」の意味を表す「と」
 格助詞の「と」は体言または体言に準ずる語についていたが接続詞の「と」は用言または助動詞の終止形につく。
 十津川に於ては「とも」の意味を表す「と」はよくつかうが、それ以外の「と」はあまり用いないで「たら」「だら」をつかう。
  例 見るとわかる 見たらわかる
読むとわかる 読んだらわかる
一に一をたすと二になる 一に一をたしたら二になる
家へ帰ると日が暮れた 家へ帰ったら日が暮れた
(ハ)「ても」「でも」のつかい方と十津川言葉
  今日は行ってもいないでしょう 順当でない結果が起こる仮定条件を表す「ても」
いくら言ってもきかない 順当でない結果が起こる確定条件を表す「ても」
 「ても」「でも」は上の如くつかわれ、十津川に於ても正しくつかわれている。
(ニ)「けれど」「けれども」「けど」のつかい方と十津川言葉
  寒いけれど(も)辛抱します 順当でない結果が起こる確定条件を表す
文章も上手ですけど字も上手です 事実を対比的に並べあげるのに用いる「けど」は婦人語で男子はあまり用いない。
 「けれど」「けれども」「けど」は上の如くつかわれるが、十津川では「けんど」とつかう。
  寒いけれど辛抱します 寒いけんど辛抱する
不便な所ですけど遊びにいらっしゃい 不便な所ぢゃけんど遊びに来い
(ホ)「ので」「から」のつかい方と十津川言葉
  道が悪いので歩かれない  
雨が降るから遠足がなくなった 何れも動作作用の原因理由を表す
 「ので」「から」は上の如くつかわれ十津川に於ても普通につかってはいるが、これに相当する言葉に「よって」と「すかあ」というのがあって、それが多くつかわれる。
  例 道ん悪いよって歩かれん
雨ん降るすかあ遠足んのうなった
(ヘ)「し」のつかい方と十津川言葉
  雨は降る、風は吹く、困った 並列の意を表す。
朝は早い、夜は遅い逢う時がない 二つ以上重なった原因理由を示す
 「し」は上の如くつかい、十津川でも普通につかわれている。
(ト)「て」「で」のつかい方と十津川言葉
  花が咲い実がなる 前後を接続する順態
知っいても言わない 前後を接続する逆態
赤く美しい 前後を接続する並列
紐が長いの切った 動作作用の原因理由を表す
持っいる、調べない 動詞と補助用言とを接続する
 「て」「で」は上の如くつかい、十津川でも普通につかわれている。然し動詞と補助用言の接続する場合の「て」は用いないで「ている」が「とる」となることは既に述べた通りである。前後を接続する逆態の場合は動詞と補助用言のようにも見える。こんな時の「て」は用いないで次の如くにつかう。
  知っていても言わない 知っとっても言わん
本を読んでないと駄目です 本をよぅーどらにゃーあかん
(チ)「ながら」のつかい方と十津川言葉
  泣きながら勉強する 二つの動作が同時に行われる意味を表す(……つつの意)
知っていながら言わない 順当でない結果が起こることを表す(……にもかかわらずの意)
 「ながら」は上の如くにつかわれ、十津川でも普通につかっているが、然し二つの動作が同時に行われる意味を表す場合の「ながら」はあまり用いないで「もうて」をつかう。
  泣きもうて勉強する
仕事をしもうて歌をうたう
歩きもうて考えた
(リ)「たり」のつかい方と十津川方言
  人が出たり、入ったりしている 動作の並列を表す
ノートに落書したりしてはならぬ 同趣のいろいろな場合を含めて概活的に示す
 「たり」は上のようにつかわれ、十津川でも普通につかわれている。
(ヌ)「ものを」「ものの」のつかい方と十津川言葉
  もっと早く来ればよいものを
合格とは思っていたものの
 以上「ものを」「ものの」は接続助詞に準ずるもので、十津川に於ても普通につかわれている。
(ル)「ところ」「ところが」「ところで」のつかい方と十津川言葉
  いくら考えたところでよい考えはない
試みに受験したところ(が)パスした
 上の如くつかわれるが、十津川に於ては「とこ」といって「ろ」が省かれる。
  いくら考えたとこでよい考えはない
試みに受験したとこパスした
 

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