十津川探検 ~十津川言葉~
(九)助動詞の十津川言葉
(9)断定の助動詞の十津川言葉
(イ)断定の助動詞の正しいつかい方
   今日は日曜日
   正直は一生の宝
 上の「だ」は断定の助動詞で、断定の意を表す。この助動詞は次のように活用する。
  月は死の世界だろ 未然形
咋日は雨だっ 連用形
今日は雨ある 連用形
今日は雨 終止形
今日は雪降りのに暖かだ 連体形
なら休もう 仮定形
動詞 助動詞 未然 連用 終止 連体 仮定
ろう、に続く た、ある、に続く 言いきる のに、ので、に続く ば、に続く
だっ
なら
君だけ だっ
なら
行く なら
書かせる なら
歩かぬ
歩かん
なら
歩きます なら
 仮定形は「ば」に連なるのがたてまえであるが断定の助動詞では「ば」を省略する慣習になっている。例えば「雨ならば休もう」という言葉を「雨なら休もう」としてもよい。
(ロ)断定の助動詞の十津川言葉
  「だ」という言葉は室町時代に「である」という言葉ができ、それが後に「だ」及び「ぢゃ」と変化した。「だ」は江戸時代に閑東方面に多く用いられ今日標準語となっている。一方「ぢゃ」は江戸時代に関西方面に盛んにつかわれたが後に「や」と変化し「ぢゃ」は用いられなくなった。然し十津川では「だ」も「や」もつかわず、方言として残っている「ぢゃ」を用いている。
動詞 助動詞 未然 連用 終止 連体 仮定
ろう、に連なる た、に連なる 言いきる のに、に連なる ば、は省略する
ぢゃ ぢゃ ぢゃっt ぢゃー ぢゃーな ぢゃったら
なら
君だけ ぢゃ ぢゃ ぢゃっ ぢゃー ぢゃーな ぢゃったら
なら
行く ぢゃ ぢゃ ぢゃったら
なら
書かせる ぢゃ ぢゃ ぢゃったら
なら
歩かぬ(ん) ぢゃ ぢゃ ぢゃったら
なら
 「行く」「書かせる」という言葉は連用形、終止形、連体形には活用がないのがたてまえである。然し十津川に於ては「ん」を入れて「た」や「のに」に連続させたり、或は終止形で云いきる場合がある。
 例 行くんぢゃった 行くのだった
行くんぢゃー 行くのだ
行くんぢゃーのに 行くのであるのに
(ハ)「です」と十津川言葉
 丁寧な断定の助動詞に「です」という言葉がある。然し十津川に於てはこうした丁寧な言葉は普通あまりつかわなかった。
 

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