十津川探検 ~十津川言葉~
(九)助動詞の十津川言葉
(2)使役の助動詞の十津川言葉
(イ)使役の助動詞の正しいつかい方
   字を書かせる
   木を植えさせる
 上の下線を引いた助動詞は動詞の未然形「書か」「植え」について他の人に動作させる意味を表わしている。こんな助動詞が使役の助動詞で次のように活用する。
動詞 助動詞 未然 連用 終止 連体 仮定 命令
よう、ない、に続く ます、た、に続く 言いきる 時、こと、に続く ば、に続く 命令の意味で言いきる
書か せる せる せる せれ せよ
せろ
植え させる させ させ させる させる させれ させよ
させろ
(ロ)使役の助動詞の未然形の十津川言葉
 未然形が「よう」に連らなる時の十津川言葉は「せ」が「し」に変化する。
 例 書かよう 書かしよう
植えさせよう 植えさしヨう
 然し「し」に変化させない時は「よう」を用いないで「ろう」を用いる。
 例 書かろう
植えさせろう
 未然形が「ない」に連なる時十津川では「ない」を用いず「ん」を用いる。
 例 書かせない 書かせん
植えさせない 植えさせん
 時々「せ」を「さ」に変化させる人もある。
 例 書かさん
植えささん
(ハ)使役の助動詞の連用形の十津川言葉
 未然形が「ます」「た」に連なる時、十津川に於ては、未然形が「よう」に連なる時と同様「せ」が「し」に変化する。
 例

書かせます
書かせた
書かします
書かした
植えさせます
植えさせた
植えさします
植えさした
(ニ)終止形及び連体形の場合の十津川言葉
 終止形及び連体形の場合十津川に於ては「せる」を「す」、「させる」を「さす」とする。
 例 書かせる 書かす
植えさせる 植えさす
(ホ)仮定形の場合の十津川言葉
 仮定形が「ば」に連なる時、十津川に於ては「ば」を用いず、次の如くつかう。
 例 書かせれば 書かせりゃー
書かすりゃー
書かしゃー
植えさせれば 植えさせりゃー
植えさすりゃー
植えさしゃー
(ヘ)命令形の場合の十津川言葉
 命令形の場合に十津川に於ては「せよ」とか「せろ」とつかわずに「せー」と語尾をのばしたり、「せーよ」と語尾をのばしてから「よ」をつける。
 以上の十津川言葉を表にしてみると

動詞 助動詞 未然 連用 終止 連体 仮定 命令
よう、ない、に続く ます、た、に続く 言いきる 時、こと、に続く りゃー、しゃー、に続く 命令の意味で言いきる
書か せる

 

 

 
さす

 
さす


せー
 
せーよ
 
植え
 
 
させる
 
さし
させ
ささ
 
さし
 
 
さす
 
 
さす
 
させ
さす
さし
せー
 
せーよ
 使役の助動詞は十津川に於てはサ行変格活用の動詞の活用形によく似ている。
 

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