十津川探検 ~十津川言葉~
(五)副詞の十津川言葉
(1)副詞のつかい方と種類
 副詞というのは主として用言(動詞、形容詞、形容動詞)を修飾する単語で活用がない。
 例 犬がしきりに吠える 動詞の修飾
今朝はたいへん寒い 形容詞の修飾
この坂はずい分急だ 形容動詞の修飾
 上の下線を引いた言葉は副詞で、後の「吠える」「寒い」「急だ」という言葉を修飾している。
 然し副詞には用言だけでなく、副詞や体言(名詞、代名詞) を修飾する場合もある。
 例 もっとゆっくり歩け 副詞の修飾
ずっと前を見よ 体言の修飾
 上の「もっと」は「ゆっくり」と云う副詞を修飾しているし、「ずっと」は「前」という体言を修飾している。
 この副詞にはいろいろな種類がある。
(イ)情態の副詞
   犬がしきりに吠える
   花がひらひら散る
 このように、犬がどんなに吠えるか、花がどのように散るかなどその情態を詳しく定める副詞を情態の副詞という。これに属する言葉はたくさんある。
 例 あらかじめ いきなり いっさい
おおむね おのおの かく
かねて からりと ぐんぐん
さいさん さっと じきに
じっと しばし しばしば
しばらく すぐ すぐに
すっかり すでに すべて
せいぜい せかせかと そっと
そよそよと たがいに ただちに
たびたび たちまち たちまちに
たまさか たまさかに だんだん
だんだんに つい ついに
つらつら とうとう ときどき
どしどし 堂々 堂々と
どっかりと なかなか なかなかに
にっこり にっこりと のっと
はた ばたばた ばたばたと
はっきり はっきりと はるばる
はるばると はらはら はらはらと
ひたすら ひらり ひらりと
ひらひら ひらひらと ふたたび
ふと 平然と ほっと
ぽっかり ぽたり ぽたりと
ほのぼの ほのぼのと ますます
また まづ もっばら
やがて やはり 悠々と
ろくろく わざわざ  
 なお情態の副詞の中には助詞「の」を伴って体言を修飾するものがある。
 例 かなりの かねての かりそめの
しばしばの しばらくの 少しの
すべての ついの とかくの
またの もっぱらの わざとの
(ロ)程度の副詞
   今朝はたいへん寒い
   ここはずいぶん静かだ
 上のようにその状態の程度を定める言葉を程度の副詞という。
 例 いくぶん いささか いっそう
いと いとど かすかに
かなり きわめて ごく
ずいぶん すこし すこぶる
すっかり ずっと だいぶ
だいぶん たいへん ただ
ちょっと なお はなはだ
はるか ほのかに ほんのり
もう もっと もっとも
やや よほど わずか
(ハ)陳述の副詞
   決して言わない
   どうぞ許して下さい
 上の下線を引いた副詞は、これを受ける語に一定の言い方を要求している。
 「決して」は「ない」と云う打消の言葉を要求し、「どうぞ」は「下さい」という願望の言葉を要求している。
 このような副詞を陳述の副詞という。
 この副詞に属する主なものをその要求する言い方の相違によって分類すると次の如くである。
要求する語 副詞
打消の語
決して さらさら 必ずしも
断じて ちっとも とうてい
少しも
禁止の語
決して 断じて ゆめ
打消と推量
よもや まさか とても
願望の語
どうぞ どうか なにとぞ
ひとえに ぜひ
比況の語
まるで ちょうど あたかも
さながら さも
推量の語
たぶん さぞ さだめし
おそらく
仮定の語
  たら、ば、ても、とも
もし 万一 たとえ
よしや いや いやしくも
断定と肯定の語
つまり 必ず もちろん
きっと まさに じつに
疑問または反語
どうして なぜ いかでも
いづくんぞ
当然、適当、命令の語
よろしく まさに すべからく
 

十津川言葉へ