十津川探検 ~十津川郷の昔話~
長池の川太郎長池の川太郎(音声ガイド)
   むかし、むかし、この湯之原と小井との間に長池というて、それはそれは長い大きな渕があったそうな。
 そして、この長池には川太郎が棲んでおったということじゃった。
 あるとき、この長池の上の道を通りかかったひとりのばあさんが、なにげなしにひょいと下の方を見やったら、渕の大岩にきれいな飯びつが一つ、ちょこんとのっている。
「これはおかしい。あんなところに飯びつが……。」
とひとりごとを言いながら眺めていたら、その飯びつ、ひとりでにもそもそ動き出し、やがてコロコロとまくれてドボンと青い渕に沈んでしまった。
「は、はあん、さては、あの飯びつ、川太郎じゃったわい。」
「川太郎の奴、きょうは天気もいいし、岩の上へ上がって甲ら干しをしくさっとったな。」
 このばあさん、舌打ちしてそこを立ち去ったと。
話者   湯之原   羽根 定男
再話   湯之原   大野 寿男

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