|
|
|
|
|
あるとき、一人の猟師が玉置神社にお参りして、横峯を歩いておった。
突然、大きな音がしたかと思うと、山の上から何ものかがおりて来て、道をふさいでしもうた。見ると、なんとそれは身の丈一丈(三メートル)はあろうか、足は一本、目は一つの怪物なのである。さては、うわさの一本だたらが出よったわい、このやろう……と、猟師は肝をすえた。
ひとときにらみあっていた。が、やがて一本だたらが口を切った。
「ただではこの道は通さぬぞ。さあ、何でもよい。一つ勝負をしようじゃないか。おれに勝てば通してやろう。どうだ。」
突然のこと、良い考えも浮かばぬ。猟師がだまっていると、
「それじゃあ喚[おめ]き合いではどうじゃ。初めにおれが喚くことにしよう。」
ということで、一本だたらが先に喚くことになった。大きく息を吸い込むと、一本だたらが、猟師に向かって「ウォー」と喚いた。その声の大きいこと。まわりの木々の小枝や木の葉がビリビリと震え、猟師の耳の痛いこと、痛いこと。こまくが破れるかと思われた。
そこで猟師は考えた。まともにやってはとても勝ち目はない。そうだ、こいつでいこう。
「ようわかった。今度はおれの番だ。すまぬが目をつぶって、もちょっと、こっちへ寄って来てくれ。」
と、近くへ一本だたらをよび、もうしばらく目をつぶっていてくれよと、ひとりごとをいいながら、火なわに火をつけ、火なわ銃を一本だたらの耳に近づけると、ズドンと一発やった。
これには一本だたらもおどろいて、すっかり肝を冷やし、
「これはかなわん、まいった、まいった。」
と、わめいて、すっとんでいった、と。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|