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むかしむかし、平内という坊主がおりました。この坊主は、坊さんのくせに、鹿をとるのがとてもすきでした。大井谷という川の上流の山奥一帯に、たくさんの犬をはなって鹿を追い出させます。鹿は川辺がすきですから、だんだん川の方へ出てきます。
平内坊主は、ホーイホーイと籠を振って、川下の方へ鹿を追いおとして行きます。川下には両岸の山がせまって、昼でも暗いような滝があって、その下に渕がうずまいています。その渕尻[ふちじり]に柵をしておいて、渕へとびこんだ鹿をとっていたのです。
あるとき、いつものようにたくさんの犬に追い出させた鹿を、坊主は籠を振って、ホーイ、ホーイと川を下り、とうとう渕へ追いこんだのです。ところが、この鹿は、今までよりとても大きく強い鹿で、太い棒でなぐってもびくともしません。さすがの平内坊主もよわりました。その時、急に渕の水がクタ、クタ、クタ、わきかえるようにねばって、まるであめのようになりました。平内坊主は、どうもがいても渕から出ることが出来ません。とうとうおぼれてしまったということです。
上湯川の平内滝は、今でも暗くてさみしい所です。 |
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