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ずいぶん昔の話じゃよ。少しの田畑を耕しながら、じいさんとばあさんが暮らしておったと。
ある日のこと、この家にかわいい娘さんがやってきた。二人は、この娘さんを招き入れ、楽しいひとときをすごしたのじゃ。しばらくして、風呂に入ってから帰りたいといいだしたのじゃ。ばあさんの世話で風呂に入り、さっぱりしたといって帰っていった。
あくる日の晩になると、きのうと同じころ、また娘さんがやってきた。ひとしきりすぎて、また、風呂に入りたいからといって、風呂に入って帰っていったと。
その後、毎晩のように娘さんが遊びに来ては、風呂に入って帰るようになっていた。じいさん、ばあさんにとってはうれしいことであった。
ある晩のこと、ばあさんは、そろそろ寝支度をしようといろりの火に灰をかけていた。風呂から出てきた娘さんは、そのようすを見て、はっとしたように、
「おばあさん、風呂に灰水だけは入れんといてくれよ。」
といって、さっさと帰っていったんじゃと。
じいさんもばあさんも、この娘さんのことは、少々気にはなっていたのじゃ。それだけに今の言葉は耳に残ったのじゃ。みょうなことを言う娘さんじゃのう。二人は顔を見合わせた。
あくる日も、さして変わったようすもなく、娘さんはやってきた。そして、いつものようにすごしていた。ばあさんは、ちょっといたずらをしてみたくなったのじゃ。じいさんが風呂に入り、ばあさんも入ったあと、試しに灰水を入れておいたのじゃあと。
娘さんは、そんなことには気付かず、風呂に入ったんじゃあと。しかし、やはり気になってしかたがないばあさんは、そっと風呂の中をのぞいてみたのじゃと。そこには娘さんの姿が見えないのじゃ。そして、風呂の中を見ておどろいたのじゃ。風呂いっぱいに、こんにゃくができていたという話じゃよ。
昔から、こんにゃくいもも薹[とう]が立つようになると、人にばけるという話じゃ。 |
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話者 |
那知合 |
後木 たけ |
再話 |
那知合 |
後木 隼一 |
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