十津川探検 ~十津川郷の昔話~
悲しい目まじない悲しい目まじない(音声ガイド)
   昔、昔、あるところにたいそう意地悪な姑[しゅうとめ]がおりました。
 嫁が畑を耕しているところへ来て、
「目に見えるほどもはかどらん。」
といって、嫁の手を打ちました。
 嫁が水汲みをしているところへ来て、
「目に見えるほどもかめに水がたまっとらん。」
といって嫁の肩を打ちました。
 嫁が、ひきうすできな粉をひいているところへ来て、
「目に見えるほどもきな粉がたまっとらん。」
といって嫁の腰を打ちました。
 嫁がはたをおっているところへ来て、
「目に見えるほどもおっておらん。」
といって背中を打ちました。
 嫁は、いっそう身を入れて働きました。けれども、姑はいっそう嫁をいびりました。
 嫁はとうとう滝つぼに身を投げてしまいました。

 夏のころ、小さな小さな虫が飛んできて、追っても払ってもブンブン、ブンブン、しつっこく目の周りを飛び回る。あれは目まじないという虫で、昔、いびり殺された嫁の怨霊だそうな。
「これでも見えませぬか。」
「これでも見えませぬか。」
と、人の目の周りを悲しく飛び回るのだといいます。
話者   湯之原   羽根 定男
記録   湯之原   大野 寿男

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