十津川探検 ~十津川郷の昔話~
はくらんさんはくらんさん(音声ガイド)
   昔、野広瀬[のびろせ]に小さな谷があっての。
 その谷には、丸木橋がかかっておった。
 村の人が川津へ用に出るには、どうしてもその谷を渡らなあ行けなんだのじゃ。
 ところが、この谷を子供を産んで日数の少ない女が通ると、必ず病気になるなど良くないことが起こったそうじゃ。
 そんなことがあまりにも続くので、困った村人達はうらなってもろうたんじゃと。
 そうしたら、
「わしは、親の谷に住んでいた白龍じゃ。みんなを驚かせるので姿は見せられないが、親の谷(大字小井)が荒れて住みにくくなり、住み良い所を探してここまで来たのじゃ。どうぞ、ここで祀[まつ]ってくれ、祀ってくれれば女を守る神になろう。」
と、言うたそうじゃ。
 そこで村の衆は、道のかたわらに川原石を立てて、白龍さんを祭り、通る人ごとに花や食べ物をお供えして拝んでおった。
 それ以来、野広瀬では、お産で死ぬ人もなく安産の神様と崇[あが]められたのじゃ。
 それを伝え聞いた遠くの村からも、お参りに来る人が絶えなかったということじゃ。
 白龍さんは、いつしか「はくらんさん」と呼ばれ、ダムで水没後は、川津に祀られているんじゃよ。
再話   風屋   前木 千鶴子

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