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むかし、木こりのじいさんがおった。
ある日、いつものように奥山に入って木をこっておった。
すると、高い梢[こずえ]のほうから、きれいな小鳥のうたが聞こえてくるのじゃ。
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
じいさん、木をこるのも忘れて、このふしぎなうたに耳をかたむけていた。そのうたはだんだん近づいて、とうとう、すぐそばの小枝に小鳥が下りてきた。黄色の羽、くるくるしたまっ黒な目、青いくちばし、それは、今まで見たこともないかわいい小鳥じゃった。
じいさん、ポカンと大きな口を開けて見とれていると、小鳥はなにを思ったか、ピョンとその口の中へ飛び込んできたもんだ。
じいさん、びっくりした拍子にひょいと小鳥を飲み込んでしもうた。
しばらくたって、じいさん、おならをすると、
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と、小鳥のうたそっくりに鳴るのじゃった。
おならのうたは、夕方、山を下りるときも、夜、布団の中に入ってからも、
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と、うたをうたうように、なんべんもなんべんも鳴るのじゃった。このうわさがやがてお殿様の耳にも届いた。
「なに、おならがうたをうたうと。ぜひ、きいてみたいものじゃのう。」
やがて、お殿様の前に呼び出されたじいさん。
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と、うつくしいおならのうたを鳴らしてみせたから、お殿様はたいへん喜んで、たくさんのごほうびをくださった。
この話を隣村の欲ばりじいさんが聞きつけた。その欲ばりじいさん、早速やってきて、
「どうすりゃ、そんなおならが鳴らせるんじゃ。」
と、たずねるから、
「大豆を一升(一・八リットル)ほど炊いて食べたんじゃ。」
と、でまかせをいうと、
「よし、わしは三升(五・四リットル)食べて、もっとどっさりごほうびをもらおう。」
と、ひとりごとを言い、早速、無理して三升の大豆を平らげると、勢いよく殿様の御前にやって来た。
「申しあげます。このわしは、もっともっとおもしろいおならをしてご覧入れまする。」
と、腹と尻にうんと力を込めて気張ったものじゃった。
すると、どうだろう。おならどころか、出たのはくさいくさいうんこの山じゃった。
殿様、まっ赤に怒って、尻を針で刺す刑を言いつけた。
やがて、お尻を血でまっ赤に染め、びっこを引き引き逃げ帰った欲ばりじいさんを見て、家の者たち、
「じいさん、赤い風呂敷にごほうびどっさり包んで帰ってきた。」
と、大喜びしたということじゃ。 |
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話者 |
小森 |
西田 ワサノ |
記録 |
湯之原 |
大野 寿男 |
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