|
|
|
|
|
むかしあるところに、ばあさんがネコと住んでたんじゃ。
ばあさんは、ネコをえらいかわいがっとったんじゃと。
ある日のことじゃ、ひとりの旅人が、ばあさんの家へ来て、
「今夜ひと晩、とめてくだされ。」
って言うんで、ばあさんはとめることにしたんじゃと。
ほんで、旅人は、ばあさんの家へあがって、ばあさんがネコをかわいがってんのを見てたんじゃ。ほんで、その旅の人がの、
「ばあさんよ、かわいがっとるネコじゃが、そのネコかうなよ。」
って言うたんじゃと。ほいで、ばあさんが、
「なんであかんのじゃ。」
って言うたんじゃと。ほいたら旅の人はの、
「そのネコは、どうも気にくわん。」
って言うたんじゃと。ほいたらよー、ネコが旅の人の顔をじっとにらんでいたんじゃと。
旅の人は、ねるときに、
「どうも、あのネコ気にくわん。それに、わしが『どうも気にくわん。』言うたときに、わしをにらんどった。どうやら、わしがねこんだら、きっと、とびかかってくるんじゃろ。」
と思うてな、ふとんの中へ、さかさにねとったんじゃと。
ほいたら、あんのじょう、夜中にネコが旅の人の首のあたりめがけてとびかかってきたんじゃと。そやけど、さかさにねて、用心しとったよって助かったんじゃと。ほんで、旅の人は、ネコをたたき殺したんじゃと。
あくる日、ばあさんは、ネコの死がいをいけたんじゃと。
ほんでから、そのあくる年にな、また、その旅の人がやって来てとまったんじゃ、ばあさんはな、旅の人に畑でできたウリ出したんじゃと。
ほいたら、旅の人はの、そのウリ、手に持ってから、よう見とってな、
「ばあさんよ、このウリは、ネコをいけたところから、はえたウリとちがうか。」
って言うたんじゃと。
ほいで、そのウリの根ほってみたところが、そのウリは、ネコの目からはえとったんじゃと。ネコは、あだうちしようと思うとったんじゃが、旅の人が、気づいて食べなんだよってに命が助かったんじゃ。 |
|
|
話者 |
千葉 ふく |
採集者 |
林 宏 |
再話 |
中上 武ニ |
(日本標準社刊「奈良の伝説」から) |
|
|
|
|
|
|