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谷瀬の山奥に、ダンジョウ平という所がある。
昔は、ここで鹿がよく遊んでいたそうだ。
そんな鹿を狙って大蛇が出て来て、とって食べたり、あらしまわるので、絶対一人で行ったらあかんと言われていた。ある日、一人の猟師が、
「みんな、あんなことを言うのは、一人でよう行かんから言うのだ。今日は俺一人で行って、大きな鹿をとって来たるわ。」
と言って犬を二匹連れて行ってしまった。
ダンジョウ平へ着いて、やぶの中を歩いてゆくと、犬が二匹共、ふるえながら猟師の足元へ寄って来て、尾をすぼめて動こうともしない。怒った猟師は犬を足元から追い出そうとした。それでも犬は座りこんで動こうともしない。
これはおかしいと思い、すぐそばの高い木によじ登って目指す方向を見ると、長さ七、八尺(二米[メートル]あまり)ほどのすずこ竹の上に、鎌首をたてた大蛇が赤い舌をペロリペロリと出して、こちらを見ているではないか。
びっくりした猟師は、木から落ちたそうだ。
しかし、落ちた音を聞いて大蛇は、やって来るに違いない。痛いのもこらえ鉄砲を持って、又、木へよじ登った。すると、今にもこちらへおそいかかろうとしている。すばやく実弾をこめて、その大蛇の口めがけてズドンと一発。もののみごと命中した。大蛇は、ものすごい地ひびきを立て、のたうちながら、赤谷の方へ落ちて行った。
現場をみたいものだと思い、赤谷へ下りて行った。大蛇はのたうち回り、谷の水は血に染まって真赤になっていた。猟師は、あまりの恐ろしさにそのまま家へとんで帰った。そして寝床に入るなり、ふるえ出し、高い熱を出して、うわごとに、これまでの話をして、七日七夜、苦しんで死んでしまった。
村の人達は一カ月程して、あまりにも不思議なことなので、総出で赤谷へ見に行った。なるほど猟師のうわ言で聞いたとおり、大蛇が死んで、くさっていたという。それからは、昔から一人で行ったらあかん、と言う所へは、絶対に一人で行かんようになったと…。 |
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