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昔、昔、上湯川[かみゆのかわ]の梅垣内[うめがいと]の谷奥に三本杉があった。その近くに蛇の窪[じゃのくぼ]という、今にも何かが出てきそうな古い大きな気味の悪い池があったそうな。
ある日、子供を連れた女子[おなご]が、その池の傍で子どもを遊ばせて置いて、
「今日もわらびの根掘ってわらび餅でも作って食べようか。」
と、わらびの根を一生けんめいに掘って、かごの中へ入れていた。
しばらくしていると急にあたりがうす暗くなり、ザザッというものすごい音がするので、その方へ振り向くと、おどろいたことに池の中から見たこともない大蛇が出てきて、鎌首[かまくび]を上げたかと思うと、いきなり無心に遊んでいる子供をいっきにのんでしまったのである。
女子は気が狂ったようになって子供の名を呼び続け、池の中へ持っていた鍬[くわ]をいきなり投げ込んだ。
すると大蛇は鉄がきらいだったのか、その池からおそろしい勢いで西川の小坪瀬[こつぼせ]の方へ山を崩しながら逃げて行ったそうな。
その崩した所は、今でも残っている蛇崩[じゃぐえ]という大ぐえであるという。 |
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