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天誅組が五條代官所を襲って、何日かたったある日、谷瀬在所の若衆たちは、五條へ買いものに行くことになった。泉谷龍平[いずたにりゅうへい]は、在所の娘ら(祖母も十七才で、その中にいた。)を連れ、朝早く谷瀬をたった。
龍平たちは、おおかた一日かかって五條に着き、買いものをすませると、代官所あとへ行ってみた。すると、代官鈴木源内[すずきげんない]とその家来たちが、けさがけに切られ、張りつけになっていた。
さすがの龍平も、ぶるぶる震えが止まらなかった、ということじゃった。
その頃、天辻には天誅組の陣屋があって、通行人は、ほおかぶりはならん、というきついおたっしがあった。
けれども、龍平は、買いものを一荷[いっか]天びん棒でかつぎ、女どもを後に続かせて、ほおかぶりを取らずに平気な顔して陣屋を通ったそうな。その後に続いていた女たちは、おとがめがあったらと、ひやひやしどおしで通してもらったという。
龍平というのは、なかなかの度胸者じゃったらしい。 |
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