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真夏に、全く雨が降らない時がある。そういう時には、畑の作物がヨロヨロになるばかりか、田の稲も駄目になる。駄目になるのは作物だけでなく、人間も駄目になる。
そうすると在所の代表者が、前鬼[ぜんき](シャカの近くか)に火をもらいに行く。竹の荒皮をはいで、それを縄にない、火縄をつけて火をもらってくるのである。
(途中で他の在所の人にも火を分ける。)もらって来た火は神社へ持ちより、火をお祭りする。そのあと松明[たいまつ]に火を移しとり、
あめあめ たもれよ あめあめ たもれよ
あめあめ たもれよ 雲の上の 陣五郎よ
と、みんなで歌いつつ川までおり、松明ごと川に流した。それでも雨が降らなければ幾日も続ける。さて、この火を送った翌日には必ず、誰もいるはずのないあちこちの山に、いくつもの火がともる。
「あめあめ たもれよ。」の歌を、大人だけで歌うのは馬鹿くさいしえらいので子供にもさせたものだ。
雨乞いが、天に通じて雨が降れば、その日は雨休みといって、すべての仕事を休んだものだった。 |
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