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都市より學者が山の動物調査に來る。然し、先生の想像どおり山には動物はいないだらう。逃げ去ること、隠るること、機によること、狩人に話を聞く。決して期待の答へは十分でないだらう。無理もない。村人にとっては経済的に動物は、肉、皮、膽嚢など第一であり、之を如何にして斃すかが重点である。勿論、勇壮な犬と友の狩猟談、猪のカルモのこと、習性の一部、耐力などは聞くであらう。然し、上手に聞くのでなければ大して聞き出せないだらう。
村人からは先生に聞きたいことはあまりないのである。氣をつけて聞くと、村人は「あの鹿は何處何處へおちる」,と云ひ、「鹿のハシリ」など彼らが猟をする道を驚く程の廣範囲の山の領域を知ってゐる。山の動物さへ道を生ず。
動物にも勢力争ひはあるらしい。然し蓄積と云ふことはあまりせぬ。食物を隠すものがいても大なる意味はない。他の動物に貪られるし、隠した方も忘れてしまふ。イタチの如きは、一所に食物を集めて置き、他の動物に奪はれないやうに悪臭あるガスを發射しておくものもある。それでもイタチ仲間からは完全保存はできない。 |
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