十津川探検 ~瀞洞夜話~
神社御神体盗難のこと
   我々乳児の頃より已にあったらしく、神山の宮の狐の像が二木島あたりより戻ったと云はれ、昭和2年頃、東雲神社において盗難ありと云はれ、この時大杉の「玉だすき」と神山の「神鏡」、そして東中の美しき木像(何たるかは知らず)、その他槍の穂などなくなってゐたと云ふ。
 大杉の玉だすきも古いものであり、祭のたびごとに容器に神一枚づつをそのまま添へ置きしと云ふ。神山の神鏡も玉だすきと共に大塔の宮より下されしものを、土俗は大切に祀ってゐたらしい。歴史、傳説を無視し、神道も人道も弁へぬものは、(盗むことは)朝飯前のことである。然し、盗み出しても他所にては大した価値もなく、元の地にありてのみ意味あるものを、盗み去る心は何としても埒外の人間のすることと思ふ。
注- 前出の「玉だすきのこと」「大塔の宮より賜ひし鏡のこと」参照。

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