十津川探検 ~瀞洞夜話~
高瀧の宮の御使者を借りしこと
   今は昔、狐憑が流行(今の精神分裂症で一週間位で治る)したとき、玉置神社の三柱神の御使者狐100尾の内2尾、犬に害されて98匹とも云はれた。又、伏見の稲荷はその分派と云ふ。三柱神(ウガノミタマの命)は時折、字松平辺の作物も荒らすことあり。又、雪の日には足跡があったと云ひ、祭典のとき肴の御供なしと云はれ、又精神病者は凡てこの堂裏へ籠もりしものである。ムラに狐憑の病者あれば、神官をして箱に入れてもらひ清浄化し、やがて家に戻り屋根の上に小豆飯とアブラアゲを供へて狐狸の退散と病の平癒を祈ったものである。
 之と同じく大字高瀧神社の御使ひは、狼とのことにて猪、狐の害の酷いときは、白包みの箱に入れてもらひ、帰宅して後、之を祭祀して、猪などの害を除いたと古老は我に語ってゐた。そして、覿面、猪の屍体の殘りを發見したと云ってゐた。
 西牟婁郡田辺より、この奥地へ同様に御使者を猪退治に借りに來たものらしい。これは相當古い話であらう。然し我は田辺中学へ学んだ関係と、その後雑誌(動物文学)でみたことがある。轉た今昔の感に堪へない。

瀞洞夜話へ