物の失せしとき、中信重君(中作市の孫)の畑にある庚申石像をよく括りて、物の戻るを願ひしもの、戻れば之を解く。
また、我の家では、犬猫が帰らざるときには、その食器(ゴキ)に、「立ち別れ、いなばの山の峰にをる」と書きたる紙片を伏せて念じ、戻れば、「まつとしきかば今帰り來ん」と百人一首をものせり。
注-中納言行平の歌、正しくは次のとおりである
「立ち別れ因幡の山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰りこむ」