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明治初年の頃か、當地の我伯父友吉ら同輩集ひて、陰鬱なる陸の孤島であった田戸部落、この地の青年らは盆正月の外に為し得べきいろいろの娯樂を催して遊びしものである。その内で狐狗狸(コクリさん)遊びは奇妙である。確かにできたと云ふ。
この遊びは、長さ一尺余りの細竹の三本を採り、筒中へ女の毛髪一本ずつ通し、三本を束ねて中央を紐で括り、机の上に置き、足を開かせ の如くし、上にお盆の如きを載せて人と対し、盆の上に軽く手を載せて、更に布をフンワリ掛けて無念無想、誰か一人唄を唱へて、「コクリさん、コクリさん、どうぞ出て下さい」と云ふ。下手をすると何もないが、良くゆくらすと物事の占ひもしたと云ふ。我の幼児の頃、雑誌にもあったように思ふ。また浄瑠璃台本などにもあったことを思ふと面白い。
明治時代にすら東京に娘義太夫ありて、佐藤春夫の学生時代に盛んなりしと云ふ。 |
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注- |
・文中の『良くゆくらすと………』の意味は、はっきりしない。 |
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