十津川探検 ~瀞洞夜話~
クサギ(臭木)の虫
   今もあるか、我等幼時、クサギの木に穴を穿ちてあるカミキリの幼虫の小指住もあるのを焙りて、疳の薬として喰はせられし。この木の新芽を摘み煮て干し、大豆などと炊きて食す。
注-クサギは独特の臭いがあるため「臭木」と呼ばれるが、クマツヅラ科で8~9月頃、がくの赤色と対照的な白い花が咲き、香りも良い。果実は秋に青い実をつけるが、これも赤色のがくに対照的で美しい。春の若葉は山菜として茹でて保存される。文中のカミキリの幼虫は、一般に「クサギの虫」とよばれ、疳の虫に効くと言われた。香ばしい味のするものである。私たちの祖先が、蛋白源の一つとして虫類も食していた証が、このような形で伝承されたものと思われる。

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