十津川探検 ~瀞洞夜話~
火の玉の話
   我聞く、この種の火の玉(エキセントモルの火、球電の話など外国でも云はれてゐるもの。はっきりしないものがあるが)、當地で聞いたところ、便所で火の玉が浮かび消えたと云ふこと。また、部落の天空を通って家の門をくぐり飛んだと云ふ話(14歳の頃、小森で聞く)。山から出た、人の死と結び屋根から出たなどいろいろある。然し、ほとんどは幻覚的(視覚ではあり得るなり)、作為によるもの少なくはない。たった一度、我18歳の頃、大渡より帰る途中、大杉の下あたり、午後4時頃、北東より西南に一直線に尾を引き、白光を放ちつつ飛ぶゆく火の玉を見た覚えがある。大きさはフットボール位か、ぼんやりして見えなかった。客観的に考へてみると、どうも隕石ではないかと思ふ。視る者の角度によりいろいろの線を引いてゐるらしい。近所に燃えないで落ちたら、必ず音がするか何かあるであらう。

瀞洞夜話へ