|
|
|
|
|
今から27~8年前の頃のことである。木津呂の人、鮎を賣らんとして夜道を通行せしに、瀞山の深きあたり(入り口より2km位らし)にさしかかると、俄に怪しげなもの樹間より飛び出し、同人の顔に當たる。温かいような毛むくじゃらのもの。吃驚して之を跳ね飛ばさんとする瞬間、提灯の火は消え、いよいよ狼狽して鮎の入りし籠も一所懸命のため振りまくりたり。
後、之を云ふ。「狸に顔をなでられ、提灯の火を消され、鮎は全部とられし」と。かくて狸談はいろいろ取沙汰されて既成事實となる。而し、冷静に考へても分かることなり。これはムササビの生態、つまりコウモリの如くに飛べない空中滑走の身の情けなさ。暗号的につき當たったのであらう。ムササビも迷惑、絶対の草食性で吃驚、困ったことであらう。 |
|
|
|
|
|
|