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老若男女幼を問はず盛装して、一堂に会し踊る。全国的なものである。この日ばかりは政治的その他の圧迫も免れ、苦労も忘れ、樂天的に踊り狂ふ。良いことであり、また昔の人の心も偲ばれる。若い男女は結婚の相手をこの間に物色して、なまめかしき一節もあり。老若一切は愉快に遊び、歌ひ踊るなり。(楢山節考の逆である。)
ある特定の人物の物語を踊り、歌にせる口説と云ふものあり。また、昔の叙情歌も踊りに現はる。
中入(酒、握り飯出ず)後、我等幼時には専らニワカ出でしものなり。つまり、寸劇で滑稽味あるものなり。また、平素は山の中で炭焼き人として暮らし、人にもの云ふも恥ずかしと云ふ者、それが突然美声をあげて、三勝半七よろしく草履を紐にて引き、飛び入りしくるなどありき。多くは昔のままの踏襲なり。故にまだまだ地方に殘る筈なり。我は當を遂に失ひ、これを究め得ざりしは殘念なり。 |
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