|
|
|
|
|
羚羊、十津川方言で云ふ「ニク」と云ふ偶蹄類の動物は非常に軽捷・敏感・安定度の高いものである。彼の行くところ、人も犬も容易に近づき難い危険な岩の場所に逃ぐ。尤も彼の住む處は凡そ岩の多い危険な山である。そして布切れなどを振れば好奇して見る。然るに皮肉にもこれが仇となり、捕獲さるることあり。一發の銃をも發っせず。つまり危険な位置に居り、人・犬の近づき得ぬを知るや、その場所(クド)を守り、動かんともせず。人は山をまわりて上方に至り、上より網を係蹄(ワナ)としてぶら下げ、首に掛ける間も不動、一端の網の部に手頃の丸木または石など括り付け人は投げ飛ばす。大抵は高所なる為に引き飛ばされて捕殺される。美しい毛皮はかくて捕らる。
彼のツメの裏を検するに、外側は鋭利なる角質をなし、内部は柔らかな硬皮膚なり。これにて岩の少しの割れ目などに掛かり立ち、優れし平衡感覚と運動神経、敏感なる筋肉を利用して驚くべき身軽さを發揮するなるべし。俗人には弘法大師よりもらひしスイダマが足の裏にありと云はれし次第なり。
ムササビは、夜間電灯などを照らし、その洞の出入り孔あたりに光至れば敵遠くあるや、然も不思議な明るさと思ふにや、首を出して入らんともせずある時、撃たるなり。ネズミにても此を見る。余,覚えあり。
狸の穴くすべ、松葉いぶしなどは我あまり開かざりき。
天箱=テンバコ 木の箱の一側の餌を引けば、背後にてコトンと戸が落つるもの。我等これにてイタチをよく捕りし。 |
|
|
|
|
|
|