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釣針は、古代よりあり。骨から鉄となる。而して糸もて餌をつけ、水中に下し、之を釣る。後、人は産卵期のウグイなどとるに三ツ叉・四ツ叉になしたる大きい錨形のものを□□にたらして之を引っ掛ける。銛にて鰻用、鮎用と鯉用と区別して之を突きてとる。又、網は投げ網とフリカケ網ありて、前者は群れなど見て半円に投げてとり、後者は夜静かに(投網よりはるかに大規模なり)一定の所を物色して下ろし、麦藁などに急に点火し、火を振りて魚を威し網にかからしむ。大漁のことあり。
錘を付したる釣針にて鮎の遊泳するを釣るもあり。大体之は短期である。現今の鵜よりも軽捷なる箱の一底片にガラスを付したる「水メガネ」を併用して、竹竿の先端なる鈎、つまりチョンガケ(方言)は、余7歳位のときより始まれるなり。簗は、之も昔より行われ、件の簀のゴミトリ様の三間もあるものを堰より誘導、水を魚とともに涸らしめるものにして、魚は排せらるる水の圧力により動きとれずに捕らるるなり。前には、今の川と違ひ、實に良きモリモリしたる鮎など多く捕りたるものなり。伝馬船三杯もとったこと、始末に困ったこともあり。猫も見向きもしない時を知ってゐる。
なお、普は山椒、胡桃、トコロなど煮出し、或いは灰を加へ煮るなどして川に流し(特に旱天渓流にて)、中毒せる魚をとりし「流し」などあり。
徳川時代、オランダ医薬と知識入るに從ひて巴豆(作るに大変なるもよく効く)、巴豆油(之も流すにはアルカリなどと混ず)、夕ンパン、石灰など用ひしものなり。我中学2年頃より、ちらほら青酸カリを用ゆる者あり。然し、僅かなり。
その頃、新聞を見てゐた我、宇治川にて或る男、川の中にてウナギとりあり。その態度、器具に不審を抱き、検せしに、電氣を利用しあり。然し、法令上、取り締まることなき為、そのままとの記事を見、早速、利用して見んと夏休みの時を利し、色々實験のうえ、ウナギの如き潜みあるは他愛なく飛び出し來たり。しばしして甦るをみたり。その後、忽ちの内に、その器具が賣り出されるや、1日30〆もとった話ありて、忽ち禁止のこととなれり。蓄電池または乾電池3、4直列にして感應コイルを通して高圧とせし電流を用ゆ。今もあらん。
子供の時は、小さな流れを堰き止めて魚をとらへし。平凡ながら簗と同じく南米あたりのインディアンらしく原始的な喜びを得たり。
最近は殺虫剤ゲランを使ふものあり。青酸カリは一番使用されたらしく盛んに五條方面より藥屋持ち來たり。又は缶入りを農業藥として求め使用せるなり。ダイナマイトの爆發波によるものなど危険につき不具者または生命を落とした者もある。
「ウナギ戻り」(竹製の一種のカゴ)と云ふ餌につられて無理に侵入すれば、出るが不能にして捕らへらる。之は第一の餌を鮎としてハイ、ミミズなど入れ、そのつけ方は甚だ技術的にして、上手くいけばギュウギュウ入る。
スズキ捕りの大形の戻り、大人が子供がそれぞれ目的のためハイトリ瓶(最近は合成樹脂製も現はる)に味噌、糠、土など入れて、主としてハイを捕り、餌とせり。
なお、子鮎の群れ上り來たり、幅1~2尺、長さ1町以上も來る。その時は内部へ何も入れず、その道に置けば捕れる。一升瓶を切り、利用するもあり。擬餌による毛針にて初鮎を釣る。
また、川の汚れる秋の日、このところに群れありと直感し、百足の如く針を付け、盲目的に川底を撫でて掛けるナデバリあり。その場所良ければ沢山捕るなり。この最も盛んなるは新宮市の上の日杖あたりにて、上り來る新宮人の屋形船無数なり。然しこの鮎は産卵するので、捕れた鮎は案外痩せ、色も黒黄を呈してゐる。現在もいよいよ盛んなり。
物理化学的に鮎を捕る尖端は發電所より起こるらしい。水圧管中に空氣を交ぜて放水する水車の中を通り出ると微細無数の氣泡水中に出づ。鮎の如きは忽ち窒息するなり。
このほか、「置き網」と云ひ川に網を張り置き、朝之を検するなり。大したものでなくも捕れるあり。また、亀、鯉などの予想外のものも得ることあり。
「置き釣り」は、主は強きやや太き糸の長きもの(一丁以上に及ぶあり)に枝糸を付け、釣針の先に色々の餌を付け、川底へ流し折りを見て上げ、之を得るなり。新宮方面より來りし者は非常に巧みにて1主枝糸1〆目以上も捕ることあり。
価 ウナギ 百匁 120~130円
「穴釣り」と云ふ、小川の上流の人々用ゆ。岩塊の多い、小流の岩の間隙に少しく長い針に餌を付し、細い竹の中を強い糸を以て一つ一つ岩穴に差し入るる。ウナギおれば(餌に喰ひつき)之にかかるなり。 |
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注- |
・ハイについて 一般にハイまたはハイジャコと呼称されている。食用にする人は少ない。冬季のハイは脂がのってうまいという。ハイは全国的にはオイカワと呼ばれている。十津川村ではシロバイ(雌)、アカバイ(雄)と呼ぶ人もいる。 |
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・「置き釣り」について凧糸や紡績糸と言われる糸を使用する。夕刻餌を付けて石の錘を括り、淵や岩陰、緩い流れなどに置き、早朝引き上げに行くのである。「漬け針」と言う地区もある。餌にはムツ(力ワムツ)、チチカブ(ハゼの一種)、カンタロウミミズ(シーボルトミミズ)などを使う。 |
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