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三重県一志郡羽津□の老人もいよいよ帰省することになる。正月、盆の飾り付け、餅搗き、我等母子その他移動の場合は、實によく尽くしてくれ、家内同様なりき。昔話もしてくれた。勿論、母も出來るだけの心付けを忘れざりき。彼の老人、帰國の後に一種の寂蓼感さえ子ども心にあり。危険な日の我々の迎へ、老妻の足袋縫いなど限りなし。その時、彼曰く、
余は、知らざりしが、エビス大黒を画し、笑ふ人には福來ると書して与へたるに、彼之を祭祀して今に至れりと云ひて取り出して見せる。これより家事は順調にて當時の2500円を得て帰れるのは、これによって助けられしと云ったことを、そして粗末な画と文字を見たるを覚えおれり。
但し、伊勢乞食と云ふも、只、多かりしのみにして、他国にも少なからずありやと思ふ。
石田老人は、レイシ、桃など、柿もすぐれたる□者なりき。 |
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