十津川探検 ~瀞洞夜話~
最後の日本狼のこと
   英人某が、奈良県吉野口にて猟師の射ちたるものを買ひとりて去りしが、最終の狼なるよしなり。これは、明治36年頃か?(我生まる少し前)
 然し、余、場所ははっきり覚えずとも17、8の頃、見せ物としてこの狼を見たること、疑いなし(34年前)。痩せ型の、犬より稍々大きく、毛は茶褐色で尾は犬の如く体表一面同一の毛に非ざりき。普通の毛の中に綿毛あり、而も全体でなく、耳のあたり、胸部に著しくありたりと思ふ。故に、最後の狼は、これならんと思惟する。
(31、8、8)
注- 最後の日本狼が文中では「奈良県吉野口」となっているが、これは、旧小川村驚家口(現東吉野村驚家ロ)の誤りである。

瀞洞夜話へ