十津川探検 ~瀞洞夜話~
潮を呑みにゆく大友の吠声
   我が父20歳時代、川向かふの山の峯にて時折狼の遠吠へ喧しく聞こえ、人々慄然とせしと云ふ。
 大友とはこの地の方言にして、群れを為したる狼を云ふなり。果たして、孝へし如く、海辺まで潮を求めに行きたりしか不分明なり。但し、余の幼時、大人の話を聞くに、奥山の小屋にては時折(タガの)小便を嘗めに來しと云ふ。
注- ・タガ-文中にこの言葉はなかったが、分かり易くする為に入れた。
タガは、小便を溜める桶のことで、タガまたはタゴとなまった。
通称、コエタガ、コエタゴ(肥桶)と言った。桶は外に置いてあったので狼が塩分を求めてやって來たという。この類の話は多い。

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