十津川探検 ~瀞洞夜話~
狼のこと
   今から凡そ40年前のこと、余の大叔父(東藤二郎)が里の畑にて働きおりしに、一頭の狼、猪を追い出し來たり、二人の間を擦過ぎして通りゆけると云ふ。これ位に狼がゐたのである。
 また、葛川西岡重馬老の報によると、或る年のこと、何故か狼の出没盛んに塀を乗り越え來たり、如何に猛き犬にても喰ひ殺せる。同人或る朝のこと、裏手に行きけるに犬の喰ひしナンバ(トウモロコシ)は何れも出しおきゐたりと云ふ。内蔵を好むにや。
注- ・里-部落のことをサトという。

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