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あらゆる書物を見しも煙硝のことにつき、余見る能はず。(砲、つまり大小の鉄砲についても得心のゆく文を見ることなし)特にチリ硝石や化学の幼稚なときに各列強は奈何せしぞ、輸入に堺、長崎など全國に比べて果たして充分なりしか。苟も日本全土に渉りてのことなれば、何とか自家生産が必要なり。硝石の存せざる、化学の發達せざるとき果たして如何にせしや、常に疑問とする所なり。
去りぬる日、84歳で物故せし中作市及び竹之内大叔父、北村源吉老より幽かに余聞いたることあり。昔は「御煙硝炊き」と称して特権を有した職人あり。突然□□の家屋に堂々入り來りて、床下の土をとりて去れりと云ふ。
余、思ふ。人の住まふところアンモニア生じ、亜硝酸を生ずる可能性あり。且つ、有名な渡辺華山先生の著書中、外人に聞きしところを書いてゐるが、古い家ほど火事の時よく燃える。これ硝石性あるによるなりとしてある。故に蛋白質の分解、長時間の放置を思ふとき、或いはこれら関連性なしとしない。思ひつくまま書き殘す。今は誰も考へる人なし。 |
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