昔の人の話(余幼時の頃)、この近傍の山々には山蛭が居て、相當人を悩ましたものである。然るに最近(昭和32年7月15目)ほとんど見えなくなり、或る特定の田の水溜まりか、白谷の如き深山に時折發見されることありと云ふ。人が側を通ると、いきなり一斉に頭をもたげると云ふ。赤外線を感ずるか。又、昔利用した水蛭は、この山奥のものと違ふ種類と考へらる。田の水溜まりにある方が医療の意義があるのではないか。
蛭の気味悪い話は、例の観念小説の大御所である泉鏡花の『高野聖』にある。