|
|
|
|
|
(狸は)昨今は、非常に少なく、部落の近傍には在るや無しやの状態となった。余20歳代の頃は、上地と店方の間なる山口家の柴山などにワナを作り、一夜に三匹も捕ったことがある。代金は、20円乃至40円位したもの也。尚、それより、亡父の若き頃はまだまだ多く住みて、菅屋の嫁入りの時など、肴の骨を捨てるのを拾はんとして、遂に家の裏山や庭まで來たりしと云ふ。
なお、狸の溜糞と云ふもの、一度余は確認したり。上記の山口家の柴山をば跋渉してゐた或る日の事、突然之に遭遇し、なるほど嘘に非りしと思へり。そはあまり大木のない小さな台地に一枚の畳以上の広さに排泄物が堆く広く(広くの方が當たる)散布されあり、感心せる事あり。何が故に一カ所へ來たりて排泄するか、或いは一匹か(多分同類あるベし)、暫く考へたる事あり。當地の傳説に之を見たる者、夜怖い夢を見るとの傳へあり。暗合して、その夜、凶夢を見るに及び母が、「ワリャーうなされとった」と、云ってくれた。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|